ミュージシャン側の主張と問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 17:50 UTC 版)
「コピーコントロールCD」の記事における「ミュージシャン側の主張と問題点」の解説
音楽業界全体という枠組みで見た場合、導入以前からCCCDについて反対・疑問視の意思を見せていた者は決して多数派とは言い難く、多くはCCCDが抱える諸問題について実際に導入されるまで比較的無頓着で技術的な知識に乏しい者では「CDがコピーできなくなる」というメリットの一点だけを見て気楽に賛成していた者も少なくなかった。実際に、SMEがCCCDを導入した際に導入前の段階でこれを疑問視し会社まで説明を聞きに来たのは、SME系レーベルに当時所属の数多くの歌手・ミュージシャンの中でもわずかに浅倉大介、奥田民生、ASIAN KUNG-FU GENERATIONだけである。 CCCD導入の対象とされた歌手・ミュージシャンたちの多くは、CCCDについて必要な情報を与えられても、それを正しく理解できていなかった。CCCDの持つ技術的な問題点を一般ファンに明確に説明できたミュージシャンも、音楽業界を見渡しても浅倉大介などの音楽のデジタル技術に造詣が深く、この種の専門的な技術情報の収集・分析ができる知識を持った一部の人物に限定されていた。 CCCD導入当初からアーティスト側にもCCCDに対して批判的な者は見られ、CCCD非導入レーベルから音楽CDを販売している者もいる。アーティスト側だけでなく、CCCDをリリースしているレコード会社のスタッフにも批判的な者が少なくなかった。 クイーンの『ジュエルズ』のCCCD発売に際し、あるファンからの電子メールで、ブライアン・メイがCCCD版の存在を知り、激怒したという。これを受けてか、次作『ジュエルズII』は通常のCD-DAで発売されている。 矢井田瞳は、2004年(平成16年)7月に発売されたベスト・アルバムではCCCDで発売されたが、自身のウェブサイトでのブログでベスト・アルバム後に発売されたシングルがCCCDではないことに喜んでいる記述があり、本人はCCCDに対して抵抗感を抱いていたことが窺える。彼女の作品でCCCDなのは、このベスト・アルバムのみに止まっている。 陰陽座は、CCCD導入にあまり乗り気ではなかったが、所属レコード会社のキングレコードの要請を受けてアルバムのCCCD化を一旦許可し、その上で売り上げ促進の効果が見られなければ、即CCCDを廃止してCD-DAで改めて発売するという契約で、購入者のCCCDに対する観点からCCCD排除を訴えた[要出典]。そして、実際にCCCDでアルバムが発売されたものの、CCCDによる売れ行きの上昇効果はないに等しく、契約通りCCCDを廃止、直後にCD-DAで再販売した。キングレコードが発売したCCCDはこの1タイトルのみで、これ以降のアーティスト作品にはCCCDを導入していない。 佐野元春は、当時所属していたエピックレコードジャパンの姿勢に疑念を抱き、独立してプライベート・レーベルを立ち上げた。 山下達郎は、ラジオ番組「山下達郎のサンデー・ソングブック」にて、「次作はCCCDを導入するのか?」というリスナーの問いに対し、ユーモアを込めて「一言で言うと「山下達郎がそんなことをするはずがない(笑)」」「音質を劣化させるいかなる要素も排除したい」と回答しており、CCCDでのリリースを強く否定した。その発言通り、所属レコード会社のワーナーミュージック・ジャパンが一部作品にCCCDを導入していた時期でも、音質悪化を理由に山下の作品では一切導入されていない。 音楽プロデューサーの宇多田照實はCCCDに疑問を持っており、娘・宇多田ヒカルのデビュー当時の所属音楽レーベルであった東芝EMI(当時)に対してCCCDでの販売を一貫して拒絶したため、東芝EMI所属時に発売された娘のシングル・アルバム作品は全てCD-DAでリリースされ、音質が悪化するCCCDでの販売は一切なかった。 音楽プロデューサーの佐久間正英は、同ソースのCD-DAとCCCDを聴き比べ「CCCDの音質劣化とCCCDの方が再生の読み出しが遅いことが明らかである」と指摘し、自分がプロデュースするバンドのCDはなるべくCCCDではなくCD-DAで発売するよう努力すると発表した。しかしGLAYの「BEAUTIFUL DREAMER/STREET LIFE」はCCCDで発売され、ほかにも175R等、CCCDで発売されるアーティストもいた。 一方で、著作権保護を理由にCCCDを容認したミュージシャンもいた。しかし、これがいざ自らのCDがCCCDになってから音質の悪さに気付いて、あるいはファンからCCCDの抱える諸問題について手厳しい批判を受けて、ようやく問題視するようになったという者もまた数多かった。 山下の活動初期の盟友だった吉田美奈子は、当初「生活のためにはCCCDが必要」と推進する立場を取り、「音質ではなく音楽を聴いて欲しい」と音質が劣化しても止むを得ないという旨を公然と発言していたが、結局方針を転換した。 すぎやまこういちは、「CDの著作権を保護するためには少しの欠点は我慢しても容認すべき」として、CCCDを認める立場を取ってきた。CDプレーヤーを破壊することがあることなどが発覚してからは普及を諦めるが、「一刻も早くCCCDに代わる新技術の登場が待たれる」と発言し、新しいコピーガード技術の早期の確立が望ましいという考えを示した。また、「現在は音楽のコピーし放題が許される状態。法改正も視野に入れて考える問題でもある」と、音楽の複製を法規制するべきとの考えも示している。 コンピュータやテレビゲーム機の光学ドライブで再生される機会も多分に考慮する必要があるゲームソフト関連のコンテンツの取り扱いも、CCCDの導入においてはまたネックとなった。例えば、エイベックスにおいては、テレビゲーム『サクラ大戦』シリーズ関連の音楽CDについて、原作権を持つ広井王子が「テレビゲーム関連の音楽CDがテレビゲーム機のドライブで再生できなくなることは本末転倒」という旨の批判発言をし、CCCDを強要される事態になれば原盤権をエイベックスから引き上げると表明していた[要出典]影響か、他作品でのCCCD導入後も例外的に導入できないという状況が見られていた。
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