タイトルとパッケージング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/16 17:46 UTC 版)
「アガルタ (アルバム)」の記事における「タイトルとパッケージング」の解説
『アガルタ』のタイトルは、地下のユートピア都市を引き合いにCBS・ソニーによって提案された。この街の伝説は、地球空洞説についてのさまざまな東洋版の中の一つで、もともと古代の上位文化が地表に存在していたが、何らかの政治的あるいは地質学的危機のために地下へ逃れることを強いられたと唱えていた。神話はこの都市を神の力の源として描写し、その住民が大変動の出来事ののち、物質主義と破壊的テクノロジーから地球を救う、非常に精神的で高度な存在と主張した。エチオピア(古代エティオピア(英語版))の支配者によって統治された土地として、19世紀のフランス人思想家ルイ・ジャコリオ(英語版)によって最初に考案され、のちにアレクサンドル・サン=ティーヴ・ダルヴェードル(英語版)はそれを、「天空の単一な光彩と音による放射で、人種すべての目に見える区別をかき消し、視覚と聴覚の通常概念から一意に取り除く」と表現した。 アルバムのアートワークは日本のアーティスト、横尾忠則によってデザインされたもので、彼はフェスティバルホールのコンサートの1年前に、アガルタとシャンバラの神話的王国をテーマとしたシルクスクリーン版画を制作していた。彼によるカルロス・サンタナの1974年のアルバム『ロータスの伝説』のアートワークは、そのようなテーマを扱っていた。1970年代の初め、横尾は日本での人気の高まりから距離を置いて米国へ移り、そこで彼の作品のより多くを出版することができた。日本への帰国後、彼の作品を目にしたデイヴィスから『アガルタ』のレコードのカバー製作を求める電話を受けた。カバーをデザインするにあたり、横尾はコンサートの準備テープを聴いて瞑想し、レイモンド・バーナード(英語版)の1969年に出版された『地球空洞説』を読んで熟考した。バーナードは地球の中心にある巨大な洞窟に街が存在している、と書いていたが、「アガルタはアトランティスのように海の下に沈んでいるか、失われた街エルドラドのようにジャングルに隠されてさえいるかもしれない」と考えた、と横尾は言った。彼はまた、ほかの東洋の地下神話や、アフロフューチャリズムの要素をデザインに取り入れた。結局アルバムのパッケージを目にした批評家は、代わりに当時人気の幻覚剤にインスパイアされたと考えた。 フロントカバーは摩天楼の巨大な景色と、アガルタの力の表現として都市景観から立ち上がる赤く強烈な太陽の光のような炎で先進文明を描いた。横尾は以前の作品と同様のコラージュ、エアブラシ、絵画のテクニックに加え、タヒチやニューヨークへの旅行で集めた絵はがきを組み合わせて使用した。フロントカバーの街並みは、彼の絵はがきの1枚から取られた。バックカバーは、水に沈み珊瑚礁にはめ込まれた都市と、都市から上がって漂うダイバー、魚、イカを表現した。グラフィックデザイナーのストーム・ソーガソンとオーブリー・パウエルによれば、横尾はアガルタとアトランティスの関係を示唆するためにクラゲ、珊瑚礁、鮮やかな色の魚の群れを描いた。バックカバーのイラストの前景は爬虫類の生き物が描かれていた。文化研究の研究者ダグマー・バックウォルド(Dagmar Buchwald)はこのイメージを、本土が大洪水によって破壊されたのち、地表下へ逃れることを強いられた高度な文明が存在したという、地球の先史時代の神話の大陸レムリアについての同様のアイデアの引喩と解釈した。 バックカバーには、アガルタの上方からのスポットライトの中を上昇、下降いずれかを行なうUFOも表現された。アルバム内側のパッケージには、街の入り口と秘密のトンネルを守るアガルタ・スーパーマンなる翼のある超人のイメージが描かれていた。オリジナルLPの見開きスリーブの記載は、UFOとアガルタ・スーパーマンとの関係を説明した。「歴史上のさまざまな時代のあいだ、アガルタのスーパーマンは平和に共存することや、戦争、大災害や破壊から我々を救う方法を人類に教えるために地表にやって来た。広島爆撃直後の、いくつかの空飛ぶ円盤の明白な目撃例は、ある訪問を意味するかもしれない」。 『アガルタ』の1976年の北米リリースはアートワークが異なっており、デイヴィスの米国レーベル、コロムビア・レコードのアートディレクター、ジョン・バーグ(英語版)によってデザインされた。そのライナーノーツの記載は、レコードを可能な限り大きな音量で聴くことを求めており、また、デイヴィスには編曲がクレジットされていた。リリース後、マセロはコロムビアの経理部門から、編曲につき2,500ドルの報酬を受け取るデイヴィスについて苦情を受けた。その主張によれば、音楽のどれもが編曲されているようには聞こえないというのだった。
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