シン‐クライアント【thin client】
シンクライアント

システム的には「ネット上に保存されたデータなどにアクセスして様々な作業をこなす」クラウド・コンピューティングというサービスに似ています。クラウドの場合は一般のパソコンやスマートフォンなどの端末でサーバにアクセスしますが、シンクライアントでは前述のように機能を絞った専用の端末を使うことが多いようです。また、サーバ側をクラウド、端末をシンクライアントとする見方もあります。ただ、いずれも本格的なサービスが始まったばかりで、きちんとした定義がなされているわけではありません。
日本でも新型インフルエンザが流行期に入り、従業員の自宅待機などにより業務が停滞するのを防ぐ手段として注目を集め、NECや日立、富士通、NTTコミュニケーションズなど情報通信業界からシンクライアント専用端末・ミドルウェアなど各種サービスの発売が相次いでいます。
世の中でシンクライアントという用語が使われ始めたのは1996年のことです。オラクル社がNC(ネットワーク・コンピューター)という呼称で新しい端末のコンセプトモデルを発表したことが端緒になりました。当時のパソコンは機能が豊富で今より高価でしたから、その対抗製品として専用端末は最小限の機能に絞り込み、低価格を前面に打ち出すことで普及を図りました。ところが専用端末の発表と相前後してパソコンの価格が急落、「安さ」のメリットは相対的に薄れてしまいました。
しかし2004年頃から個人情報の流出や不正使用が多発するようになり、多くの社員が使用するパソコンに顧客データなど重要情報が保存されている状態はセキュリティ対策の面から望ましくないとの考え方が広がり始めました。こうして端末に最小限の情報しか持たせないシンクライアントが再び脚光を浴びるようになります。
今年は新型インフルエンザの流行により、新たな追い風が吹き始めました。企業は社内感染の拡大を防止するため、感染した従業員や感染した家族を持つ従業員を自宅療養や自宅待機させなければなりませんが、事前に対策を講じておかないと業務が停滞したり、設計部門の責任者などが自宅待機を余儀なくされた場合などは業務が停止したりする恐れがあります。シンクライアントは万が一、従業員が出社できない状態になっても、自宅にいながら、あたかも職場にいるような作業環境を実現でき、不測の事態に対処することを可能にします。
自宅療養の期間は、感染が判明してから7日間もしくは解熱後2日間というところが多いようです。ただ企業のなかには従業員本人だけでなく、その家族が感染した場合も従業員に自宅待機を求めているところが少なくありません。家族が次々と感染するケースでは、長期にわたり自宅待機を余儀なくされます。
シンクライアントが威力を発揮するのは、新型インフルエンザが弱毒性から強毒性に変異した時でしょう。国内外でタミフルに耐性を持ったウィルスの存在が確認されています。企業は従業員が長期にわたり自宅待機する事態を想定して対策を講じておく必要があります。新型インフルエンザの流行を受け、緊急時事業継続計画(BCP)を策定する企業が増えていますが、シンクライアントは強力な後ろ盾になりそうです。
ただし、シンクライアントを有効活用するには、企業が従業員に在宅勤務を命じてもよい条件を、労務規定などで、ある程度、ルール化しておくべきでしょう。シンクライアントの作業環境が整備されているからといって、上司が病気休暇や特別休暇をとっている部下に在宅勤務をさせることは法令順守の面から好ましくありませんし、職場の士気を下げてしまうかもしれません。自宅待機と対応を分けて考える必要がありそうです。
(掲載日:2009/10/25)
シンクライアント
シンクライアントとは、ネットワークにおける端末のうち、クライアント自身がハードディスクを持たず、アプリケーションソフトもサーバー側で起動するため、最低限の入出力装置しか持っていないような端末のことである。または、そのような端末とサーバーで構成されたネットワーク構成を指すこともある。
シンクライアントは企業などにおいて導入される。データを各クライアントに分散させず、サーバーで一元管理するため、情報漏洩の阻止・抑止が図れるという利点がある。また、データやアプリケーションを手元に持たないため、クライアントのメンテナンスコストの軽減を図れるというメリットもある。
シンクライアントの実現方法としては、画面転送方式と、ネットワークブート方式の2種類に大別することができる。さらに、画面転送方式にはサーバーベース方式、ブレードPC方式、仮想PC方式などがある。これらの方式は、アプリケーションの共有の仕方や、サーバーとクライアント間で転送される情報の内容などがそれぞれ違なる。
シンクライアント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/05 21:52 UTC 版)
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シンクライアント(英: thin client)とは、ユーザーが使うクライアント端末に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバ側に集中させたシステムアーキテクチャ全般のことをいう[注 1]。
または、そのようなシステムアーキテクチャで使われるように機能を絞り込んだ専用のクライアント端末のことをいう場合もある[注 2]。狭義のシンクライアントにおいて、クライアント側にWindows、UNIX、Androidなどの一般的なGUI OSを使わないケースをゼロクライアント(英: zero client)と呼ぶこともある。ビデオゲームでの同様の技術はクラウドゲームと呼ばれている。
デスクトップ仮想化という用語がアーキテクチャとしてのシンクライアントの意味として使われる場合も有る[注 3]。
語源
シンクライアントの「シン(thin)」とは、すなわち「薄い」「少ない」という意味で、クライアント端末がサーバに接続するための最小限のネットワーク機能、およびユーザーが入出力を行うためのGUIを装備していれば良いことを示している。シンクライアントとは逆の意味を持つ用語としては、「ファットクライアント(fat client)」または「シッククライアント(thick client)」がある。
「リッチクライアント」と対比される「シンクライアント」
「リッチクライアント」という用語の説明の際によく持ち出される「シンクライアント」は、本項目で説明するものとは別のものである。これは、Web3層システムにおいてクライアントサイドスクリプトなどを利用しないWWWブラウザなどを指す用語である。以下はリッチクライアントの説明の際に使われる場合の各用語の解説である。
- ファットクライアント
- Web3層以前の2or3層C/SシステムにおけるVBプログラムなど。
- リッチクライアント
- AjaxやFlashプラグインを利用したクライアントサイド技術を利用したWWWブラウザなど。
- シンクライアント
- サーバサイドプログラムのみを利用し、クライアントサイドプログラムを利用しない場合のWWWブラウザ。
現在までの歴史
黎明期
シンクライアントの歴史を考える場合、どの時代の何を起源とするかは、議論の余地のあるところである。古くは、大型汎用コンピュータと共に使われていたダム端末に起源を求める説もあれば、X Window SystemのX端末を起源とする説もある。確かにこれらは上述の定義からするとシンクライアントそのものではあるものの、これらがシンクライアントと呼ばれることはほとんどない。
世の中で「シンクライアント」という用語が使われ始めたのは、1996年のことである。きっかけとなったのはオラクルで、「NC(Network Computer)」という呼称を用いて新しい端末のコンセプトモデルを打ち出した。さらに数か月後にはサン・マイクロシステムズから「Java Station」という呼称で、同様のコンセプトモデルが発表された。
これらのコンセプトモデルは、最小限の機能のみを持たせた端末と、それを使うためのシステムアーキテクチャを打ち出しており、まさにシンクライアントそのものであった。これらが最も注目を浴びた理由は、当時機能豊富だが高価だったWindowsパソコンに対抗して、低価格を前面に出していたことだといえる。同時に、当時大型の筐体が一般的だったパソコンに比べ、これらコンセプトモデルは非常にコンパクトでデザイン的にも斬新なものであり、見た目の派手さにおいても大きな話題を集めた。
当時のシンクライアントは、「(端末の)価格」と、「(端末の)見た目のデザイン」で注目を浴びており、「端末を使うためのシステムアーキテクチャ」には注目が集まらなかった。
マイクロソフトの参入
オラクルのNetwork Computer、サン・マイクロシステムズのJavaStation、これら2つのコンセプトモデルの先進性・話題性に脅威を感じたマイクロソフトは、狭義のシンクライアント(端末)として、Windows CEをベースとした「Windows Based Terminal(WBT)」を発表し、同時に広義のシンクライアント(システムアーキテクチャ)として、Windows NT Server 4.0 Terminal Server Edition(NT4.0 TSE)を発表した。NT4.0 TSEは、すでにWindowsベースのマルチユーザ&リモート操作を実現していたシトリックス・システムズのCitrix WinFrameの技術をライセンス供与されたものである。NT4.0 TSEは、すでに発売されていたWindows NT Server4.0とは別製品としての発売であったが、Windows 2000 Server 以降では広義のシンクライアント用としてマルチユーザ&リモート操作を実現する「ターミナル サービス」の機能が標準で搭載されるようになっている。なお、これのシングルユーザ版がWindows XP[注 4]およびWindows Vista[注 5]に標準搭載された「リモートデスクトップ」である。
マイクロソフトのWBT発表の頃から、先に出ていたNetwork ComputerやJava Stationも含めた、これらの端末もしくはシステムアーキテクチャの総称として「シンクライアント」の用語が頻繁に用いられるようになった。
地道な普及
デビュー時には大きな注目を浴びたシンクライアントであるが、狭義のシンクライアント(専用端末)の観点で見ると、十分に普及したとは言いがたい。これは、NCをはじめ当時のシンクライアントが「高価なパソコンに低価格で対抗するもの」と位置づけられていたが、シンクライアント発表と相前後してパソコンの価格が急落し、シンクライアントの価格メリットが相対的に薄れてしまったことによる。
一方で広義のシンクライアントの観点で見ると、端末自体は既存のファットクライアントを使いながら、サーバ側に処理を集約するシステムアーキテクチャは確実に普及を進めてきた。この代表例が、マイクロソフトの Windows 2000 Server、Windows Server 2003に実装されているターミナル サービスと、ターミナル サービスを機能拡張するシトリックス・システムズのMetaFrame (Citrix Presentation Server)である。
セキュリティ対策として再注目
上述したとおり、デビュー後しばらくは普及しなかった狭義のシンクライアントであるが、2004年頃から「低価格」とは全く別の利点に注目が集まるようになった。それはセキュリティ面での利点である。この頃から、企業内で管理している個人情報などが外部に流出する事件が発生し、これの対策に企業は取り組むようになってきた。多数の社員が使うパソコンに重要情報が保存されている現状では、セキュリティ対策が困難である一方で、狭義のシンクライアントの端末側にデータを持てない特性が、情報漏洩対策に効果的であるとして注目を集めるようになったのである。
日本においてシンクライアントへの注目が一気に高まったのは、2005年1月3日の日本経済新聞の一面トップ記事において「日立製作所がパソコン利用を全廃する」との見出しが出されたことによる[1]。記事中では、セキュリティ対策のために、データが保存できない新型端末[注 6]に徐々に移行し、最終的にパソコンの利用を全廃していくと紹介されている。それまでシンクライアントは、企業情報システムに関心のある一部の人達の中で話題になるのみであったが、この記事をきっかけにして広く一般にも知られるところとなった。その後、朝日新聞のような一般紙や、NHKのニュースでも紹介された。
実装方式
シンクライアントには様々な実装方式があり、また、新たな実装方式が次々と考案されている。シンクライアント自体の歴史も浅く、呼び方も統一されているとはいえないが、以下では代表的なシンクライアントの実装方式について説明する。なお、ここでいう「実装方式」とは、広義のシンクライアント、すなわちシステムアーキテクチャの方式のことである。
なお、サーバベース方式、ブレードPC方式、仮想PC方式の3つを併せて「画面転送方式」と呼ばれることもある。
ネットワークブート方式
サーバ側にOSイメージをおいておき、端末起動時にはPXEを用いてネットワーク経由でOSをブートする方式。実際のアプリケーションの処理は端末側で行う。一般的には、LinuxやmacOS(NetBoot)などの、UNIX / Unix系OSが使われることが多い。Ardenceやe-tools社のLanPC2、ネットブート社のVHD Proは、数少ないWindowsをベースとしたネットワークブート方式のシステムである。
画面転送方式と異なり、アプリケーションの処理を端末側で行うため、アプリケーションの互換性の問題が出にくいことが最大の利点である。その一方で、端末起動時にアプリケーションを含めたOSイメージ全体がネットワークを流れるため、ネットワークへの負荷の大きさが問題となることが多い。また、端末上のアプリケーションで作成したデータは、通常のファイル転送によってネットワークファイルサーバに保存されるため、その面でのセキュリティ対策も必要となる。
サーバベース方式
アプリケーションの実行など全ての処理をサーバ上で行い、端末側は遠隔操作端末としての役割のみを担う方式。サーバから端末には画面情報が転送され、端末からサーバへはキーボードやマウスの入力情報が転送される。シンクライアントの実装方式としては最も普及した方式である。マイクロソフトの Windows 2000 Server、Windows Server 2003に実装されているターミナル サービス、シトリックス・システムズのMetaFrame(Citrix Presentation Server)、サン・マイクロシステムズのSun Ray、Secure Global Desktop(旧Trantella製品)、Elusiva, Propalmsの Propalms TSE、Graphonの Go-Global、2xの 2X ApplicationServer などの製品がある。1台のサーバに複数のユーザーが同時ログオンして使用する(マルチユーザー)ために、マルチユーザー対応されていない Windows アプリケーションの互換性や印刷、ライセンス面での整理が課題とされていた。近年はマルチユーザーに対応したアプリケーションやプリンタドライバがリリースされている為技術的な課題は解消されつつあるが、ライセンス面での整理はあまり進んでいない。なお、一部のプロダクトではマルチユーザーに対応していない Windows アプリケーションも、CPU やメモリ空間、ファイルシステムやレジストリ空間、IPアドレスまでユーザー毎に仮想独立化する技術を利用し、サーバベース方式で動作させることが可能となっている。
ブレードPC方式
サーバベース方式でのサーバと端末の通信方式はそのままに、サーバではなく、たくさんのPCブレード[注 7]を並べた方式。PCブレード上ではWindows XPなどのクライアントOSを動作させる。サーバベース方式で課題となっていたWindowsアプリケーションの互換性の課題を改善することを目的に考案された。一方で専用のハードウェア(PCブレード)に依存するため、今までのPC分ですんでいたコストが、比較的高価なブレードサーバと端末になるため、全体の価格が高くなりがちなこと、特定メーカーの特定ハードウェアに依存してしまうこと、個々のクライアントOSの管理が煩雑なことなどから[注 8]、あまり普及はすすんでいない[要出典]。
仮想PC方式
サーバベース方式における機能集約とマルチユーザの得失と、ブレードPC方式のシングルユーザーと機能重複の得失の組み合わせと看做せる、後発の仕組み。高性能サーバ上でVMwareやXenなどのハイパーバイザを使用して仮想マシンを多数実行することにより、機能集約を実現する。ユーザーは個々の仮想マシンに接続してシングルユーザーのクライアントOSを使用する。
当初はサーバやネットワークの性能の制約から性能と価格を均衡させることが困難で費用の高騰もしくは性能不足でクライアントPCと比較に足る水準たり得なかった。また、クライアントPCでは個々のユーザーに転嫁されていたクライアントOS管理の煩雑化が表面化してきた。 これらについては、サーバやネットワーク性能の向上により、さらには、ハイパーバイザベンダーによるクライアント管理手段の提供により、大手企業から利用が進みつつある。
仮想化の課題とネットワークストレージの活用
シンクライアント環境において、仮想化技術を用いてコスト削減を検討するユーザが増えてきている。実際、仮想サーバ環境の進展は、物理サーバの台数削減という効果をもたらしてきている。
一方、ストレージ環境については、サーバの立ち上げが非常に簡単になった一方で、ストレージ領域を用意する手間や運用管理が複雑になるなどのデメリットが生じてきている。実際、多くの共有ストレージに発生するムダな空き容量の問題は解決されないままである。しかし、近年、主要なストレージベンダー(EMC、Netapp、ヒューレット・パッカード)を中心に仮想技術を駆使したネットワークストレージを展開し、これらの問題解決に取り組んでいる。
脚注
注釈
- ^ "広義のシンクライアント
- ^ 狭義のシンクライアント
- ^ デスクトップ仮想化はシンクライアントを実現する為の手段の一つ。
- ^ サーバになれるのはProfessional版のみ
- ^ サーバになれるのはBusiness・Enterprise・Ultimate版のみ
- ^ 狭義のシンクライアントのこと
- ^ CPUやメモリ、各種コントローラを実装した基板。パソコンのマザーボードと同様な形状のコンピュータ
- ^ 例えばウィルス対策やセキュリティパッチなどはクライアントOS毎に必要
出典
- ^ 日立によるコメント ◆「日立、パソコン利用全廃」記事に関しまして◆
関連項目
- 端末サーバ
- クラウドゲーム - シンクライアントの技術を使ったゲーム配信。
- 電気通信大学 - 教育用計算機としてシンクライアント(IED)が導入されている
- コンピュータネットワーク - 仮想デスクトップ用に高機能なネットワークストレージを活用することが一般的である。
- ネットアップ
- ヒューレット・パッカード
- EMC
シンクライアント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/29 01:41 UTC 版)
端末内部には情報が存在しないのだから端末内部の情報が漏洩することはない。しかし、パスワードが脆弱なら攻撃者はサーバ上でアクセス可能な情報をすべて持ち去ることができてしまう。
※この「シンクライアント」の解説は、「パスワード問題」の解説の一部です。
「シンクライアント」を含む「パスワード問題」の記事については、「パスワード問題」の概要を参照ください。
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