『怪獣大戦争』のX星人
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本作品でのX星は、木星の13番目の衛星と設定されている。「X星」の名は地球の天文学者が暫定的に命名したもので、星に住む宇宙人もそのことを知っており、星の調査にやって来た主人公2人に向けて「我々は、君たちの言う『X星人』だ」と名乗ったことから、「X星人」と呼ばれるようになる。 X星の岩山と砂の荒涼とした地表の下に、高度な文明の地底都市を築いて住んでいる。種族はヒューマノイドで、顔以外の全身にまとった灰色のタイツの上半身に大きな襟の立った黒いベスト状の衣装を着込み、両手には黒い手袋を着け、両足には黒いブーツを履いている。男性は細いゴーグルで目を隠しており、女性はすべて同じ顔である。あらゆる物を番号で呼び、行動はすべて電子計算機(コンピューター)の計算に従って決定され、ただ1人の統制官によって統率されている。恋愛も結婚も、計算機の指示以外の行動は許されない。宇宙航行技術においては、「光速に近づくことが目標」という信条を持っている。X星では化学合成でなければ生存に必要な水分が得られないため、水の豊富な地球を狙う。秘密裏に先遣隊を放って設立したダミー会社「世界教育社」を隠れ蓑にし、とある湖の湖畔に立つ別荘を秘密基地としている。基地では、24時間表記のアナログ時計を使う。ある特定の不協和音(高周波)が弱点で、これを浴びると活動に著しい支障をきたす。 X星調査のために派遣された宇宙飛行士の富士一夫とグレンの前に姿を現し、統制官はX星を荒らし回る「怪物0(ゼロ)」(キングギドラ)に対抗するため、癌の特効薬のデータと引き換えに「怪物01(ゼロワン)」(ゴジラ)と「怪物02(ゼロツー)」(ラドン)を貸してほしいと申し出てゴジラとラドンをX星へ連行し、キングギドラと戦わせて撃退するが、キングギドラの襲来はX星人のコントロール装置による自作自演であり、真の目的はゴジラとラドンにもコントロール装置を取り付け、3頭を地球侵略用に使役することであった。まもなく地球へ宣戦布告すると、3頭を地球へ送り込んで破壊活動を展開し、地球人に降伏を要求する。一方、鳥居哲夫が作った防犯ブザー「レディガード」が偶然X星人の苦手な音を出す仕様だったため、それを事前に察知して「世界教育社」で買い取って始末しようとしたところ、女性工作員の1人・波川に裏切られたために射殺するが、彼女の遺書やレディガードの秘密に気付いた哲男とグレンを取り逃がしたことから、弱点と基地の場所が地球側に露呈する。その後、Aサイクル光線車によって3頭のコントロールを解除され、基地は高周波攻撃を受ける。完全に攻撃手段を失った統制官は「未来へ向かって脱出する」と言い遺して円盤もろとも自爆し、基地も爆発する。 統制官 X星人の司令官。電子計算機に従い、部下への指令を下す。土屋嘉男は統制官を演じるにあたり、独特の手振りを伴った「X星語」を考案して芝居に採り入れており、芥川龍之介の小説『河童』に出てくる「河童語」をアレンジしたと本作品DVDでコメントしている[要文献特定詳細情報]。この「宇宙演技」(土屋による表現)は、共演のニック・アダムスにも好評だったという。 波川(なみかわ) 世界教育社の社員として地球に潜入していたX星人の女性。X星人の弱点となるレディガードを鳥居から買い取る。 監視のために宇宙局局員のグレンに接近した結果、計算外の愛に目覚める。最後は裏切り者として処刑されるが、グレンに遺したメモがX星人打倒の鍵となる。スチールでは銃を構えているが、劇中では使用していない。 世界教育社社長 世界教育社を隠れ蓑に地球植民地化の準備を進めていた挺身隊隊長。波川を裏切り者として処刑し、グレンと鳥居を監禁する。 Aサイクル光線車の高周波を受けた後、自衛隊戦車部隊の砲撃で死亡する。 演:土屋嘉男(統制官)、水野久美(女性)、田武謙三(世界教育社社長)、伊吹徹(世界教育社社員)、宇野晃司(世界教育社社員)、勝部義夫、川村郁夫、河辺昌義、砂川繁視、鈴木和夫、由起卓也、若松明(世界教育社社員)、古谷敏 計算機に頼った有り様は、行き過ぎた科学文明への風刺とされる。一方、『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』のような問題意識は薄いとされ、書籍『東宝特撮映画全史』では「宇宙人の姿をしたギャング団」と評している。 脚本第1稿では、ゴジラとラドンをX星へ輸送する途中で流星群によってロケットが故障し、富士やグレンとともに統制官が修理を行うという場面が存在した。 衣裳のゴーグルは、当時の玩具を改造したもの。波川役の水野によれば、衣裳は伸縮しない素材で作られていたため、動きづらかったことを証言している。水野の衣裳合わせでは、照れ屋で普段は女優と話をしない円谷英二も様子を伺いに来たという。 銃のプロップのいくつかは、『怪獣総進撃』のコントロールセンター職員が持つ銃に改造された。また、『メカゴジラの逆襲』でブラックホール第3惑星人が用いる銃のグリップは、X星人の銃の型から作られた。 DVDの特典映像である8mm+ソノシート「ゴジラ宇宙へ行く!」では、本編とは逆に友好的な宇宙人として描かれている(映像は本作品の流用)。
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