JDAM JDAMの概要

JDAM

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/04 17:29 UTC 版)

JDAM
GBU-31 xxl.jpg
GBU-31(JDAMを装着したMk.84爆弾
種類 誘導爆弾
原開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
運用史
配備期間 1999年-
配備先 #輸出販売を参照
開発史
開発期間 1992年-
製造業者 ボーイング
値段 22,000米ドル2007年; テイルキット)
諸元 (#要目も参照)
精度 CEP:1m(SALH誘導時)[1]
CEP:5m(GPS誘導時)[2]
CEP:30m(INS誘導時)[2]

誘導方式 GPS/INS誘導(JDAM)
SALH/GPS/INS誘導(LJDAM)

JDAMシリーズの誘導装置キットを取り付けることで、無誘導の自由落下爆弾全天候型の精密誘導爆弾(スマート爆弾)に変身させることができる。INSGPS受信機が組み込まれており、2つの方式を併用した誘導装置が尾部の制御翼をコントロールして、外部からの誘導なしに設定された座標へ精度の高い着弾が行える。また、現在ではさらにセミアクティブ・レーザー・ホーミング(SALH)誘導を併用できる機種も登場している。

概要

JDAMは、単体の兵器ではなく、海軍兵器担当水兵や空軍弾薬システム専門兵が兵器を組み立てる時に取り付けられる、無誘導自由落下爆弾を向上させるための「追加」である。JDAMは、名目上の重量で500ポンド(約230kg)-2,000ポンド(約910kg)の範囲の爆弾に合うように作られている[3]。 JDAMキットは、空力制御翼面を備えた尾部セクション、ストレーキ部、尾部内に収められたINS(慣性誘導システム)とGPS(グローバル・ポジショニング・システム)による誘導制御ユニットより構成される。JDAMキットが取り付けられた爆弾には「Mark 80」や「BLU」(Bomb, Live Unit)といった命名法に代わって、GBU(Guided Bomb Unit)と云う名称コードが与えられる。つまり、このキットを取り付けられた自由落下爆弾は、精密誘導システムを備えた弾頭へと生まれ変わることになる。公表値では投下地点を中心に最大15海里(約28km)までの範囲の目標へ誘導する能力を爆弾に与える。

比較的低価格で運用上の制約もあまり無いために、今後使用される機会が多いと考えられている。この装置は、アメリカ空軍海軍の共同計画によって開発された。既にイラクアフガニスタンで使用され、米国と友好な数ヶ国へも輸出販売されている。

JDAMは従来の誘導爆弾の欠点を解消するために開発された。従来の誘導爆弾はレーザー赤外線画像により誘導されていたが、これらは地上の気象条件により運用が制約される欠点があった。そこで「投下後は外部からの誘導を必要とせずINSとGPSだけで目標地点に落下させること」が求められた結果、JDAMが開発された。 また派生型としてLJDAMが存在する。これはINSとGPSに加えてレーザー照射による誘導機能が追加されており、より精密なピンポイント攻撃や移動目標への攻撃も可能である。

JDAMは、爆弾本体を含まない追加キットであるが、この装着後は爆弾を含む全体を指してJDAMと呼ばれることが多い。

歴史

砂漠の嵐作戦初期の爆撃時には、米空軍での空対地攻撃兵器の能力不足が目立った。砂塵で覆われ、見通しの悪くなった地上では精密誘導兵器の使用が限られ、また、中高高度からの非誘導兵器の投下では命中精度がさらに悪化した。

こういった問題を解決すべく、1992年に「悪天候精密誘導弾」の研究・開発・実験・評価が開始された。最初のJDAMキットは1997年に作られ、1998年1999年に使用テストが行われた。 テストでは450基以上のJDAMが落とされ、公表された精度としては10m以下のCEPで95%を上回るシステムの信頼性を達成した[4]。 JDAMでの実験と評価では対照条件での落下を加えた「実用性実証テスト」も行われ、雲やの中でも晴れた天候と変わらず、命中精度は低下しなかった。 さらに、これらのテストには複数の同時落下による個別目標への誘導実験も含まれていた[5]

作戦での使用

JDAMがF-16の左翼下に、ライトニング2ポッドエアインテーク右下に搭載されているのが見える

JDAMとB-2 ステルス戦略爆撃機は、アライド・フォース作戦でデビューを果たした。本作戦期間内に数機のB-2は、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地から無着陸で30時間の往復飛行をこなし、合わせて650基以上のJDAMを投下した。

2002年の軍事調達ジャーナルの記事では「アライド・フォース作戦の間に…B-2は651基のJDAMを放ち96%の信頼性と計画された目標の87%に命中し…」と述べている[6]

しかし、いくらJDAMによって爆弾が精密に誘導されても、爆弾である限り正しく運用されなければ小さなミスが大きな惨事を引き起こす。

2001年12月5日B-52が1基のJDAMをアフガニスタンで落としたが、それが親米派で対ターリバーン勢力のリーダーであったハーミド・カルザイとサイド・アリム・カライ、さらに、彼らを護衛していた特殊部隊群(SOF)のすぐそばに着弾し、味方を死傷させる事故が起きた。その時、カルザイ側の男達とそれを補う米国特殊部隊による混成兵力が、ターリバーン兵の一大勢力に襲われており、ほとんど圧倒されつつあった。米特殊部隊の司令官は、ターリバーンを空から攻撃してもらおうと米空軍近接航空支援を要請した。直ちに飛来した友軍機によって1基のJDAMが投下されたが、それはターリバーンの上にではなく、アフガン政府と米軍人達の上に落とされた。

事故調査で原因が明らかとなり、特殊部隊に随伴していた空軍の統合末端攻撃統制官(JTAC)が、GPS受信機の電池を戦闘中に何度か交換したために、「規定値」である「自らの座標の表示」という状態に戻してしまった。そのことに気づかないまま、自分の座標を爆撃に来援した友軍機に伝えてしまったために起きた悲劇であった[7][8]。 初期型JDAMのアライド・フォース作戦での成功によって、500ポンドのMk.82爆弾と、1,000ポンドのMk.83爆弾へも計画が拡大され、1999年末には開発が始められた。

不朽の自由作戦イラクの自由作戦の間にいくつかの教訓を得て、海軍と空軍は移動目標へも使用するために、終末誘導用精密シーカーだけでなくGPS精度の向上も進めた。


[ヘルプ]
  1. ^ Defense Industry Daily staff (2012年3月12日). “JDAM: A GPS-INS Add-on Adds Accuracy to Airstrikes” (英語). 2012年5月10日閲覧。
  2. ^ a b アメリカ空軍. “Official Site of the U.S. Air Force - Fact Sheet (Printable) : JOINT DIRECT ATTACK MUNITION GBU- 31/32/38” (英語). 2013年1月24日閲覧。
  3. ^ JDAM continues to be warfighter's weapon of choice”. 2012年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月27日閲覧。
  4. ^ JDAM: The Kosovo Experience and DPAS, The Boeing Company, Charles H. Davis, (2000年4月19日), http://guidebook.dcma.mil/38/dpas/12DavisPres.pdf 2007年9月1日閲覧。 
  5. ^ “U.S. Air Force B-2 Bomber Drops 80 JDAMS in Historic Test” (プレスリリース), The Boeing Company, (2003年9月17日), http://www.boeing.com/defense-space/missiles/jdam/news/2003/q3/nr_030917o.html 2007年9月2日閲覧。 
  6. ^ “Acquisition Reform-Inside The Silver Bullet”, Acquisition Review Journal IX, no. 2 (Fall 2002): 312-322, (2002), http://www.dau.mil/pubs/arq/2002arq/MyersFL02.pdf 2007年9月1日閲覧。 
  7. ^ Killing Your Own: The Problem of Friendly Fire During the Afghan Campaign”. 2007年7月27日閲覧。
  8. ^ uni-bielefeld.de Why-Because analysis (p. 9).
  9. ^ Tech. Sgt. Tonya Keebaugh (2004年12月14日). “Resultant Fury successful thanks to ‘test’ Airmen” (英語). 2013年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月27日閲覧。
  10. ^ a b USAF Factsheet: JOINT DIRECT ATTACK MUNITIONS”. 2003年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月27日閲覧。
  11. ^ Dual Mode Guided Bomb”. 2007年7月27日閲覧。
  12. ^ Boeing Scores Direct Hit in Laser JDAM Moving Target Test”. 2007年7月27日閲覧。
  13. ^ 江畑謙介著 『情報と戦争』 NTT出版 2006年4月6日初版第1刷発行 ISBN 4-7571-0179-1 26頁
  14. ^ “Boeing Awarded Laser JDAM Contract” (プレスリリース), The Boeing Company, (2007年6月11日), http://www.boeing.com/defense-space/missiles/jdam/news/2007/q2/070611c_nr.html 2007年9月2日閲覧。 
  15. ^ “Boeing Completes JDAM Anti-Jamming Developmental Flight Test Program” (プレスリリース), The Boeing Company, (2007年6月18日), http://www.boeing.com/defense-space/missiles/jdam/news/2007/q2/070618a_nr.html 2007年9月2日閲覧。 
  16. ^ Boeing Press Release, September 15, 2008
  17. ^ [1], Boeing.com - Germany becomes the first international customer of LDJAM
  18. ^ http://www.finance.hq.navy.mil/fmb/06pres/proc/PANMC_Book.pdf DEPARTMENT OF THE NAVY FISCAL YEAR (FY) 2006/FY 2007 BUDGET ESTIMATES
  19. ^ boeing.com Boeing JDAM Wins Australian Competition”. 2007年7月27日閲覧。
  20. ^ First International JDAM Sale: Boeing to Integrate Weapon on Israeli Aircraft”. 2007年7月27日閲覧。
  21. ^ global security.org”. 2007年7月27日閲覧。
  22. ^ 航空ファン』 2008年12月号 P118
  23. ^ Dutch secretary of defense details plan for purchase of JDAM's”. 2007年7月27日閲覧。
  24. ^ Norway Signs Contract for Boeing JDAM”. 2007年7月27日閲覧。
  25. ^ Gates says Washington to sell smart bombs to Saudi Arabia”. 2007年7月27日閲覧。
  26. ^ FMS: Third Phase of Finnish F/A-18 MLU”. 2007年7月27日閲覧。
  27. ^ FMS: Greece - F-16C/D Munitions”. 2007年7月27日閲覧。


「JDAM」の続きの解説一覧




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

カテゴリ一覧

全て

ビジネス

業界用語

コンピュータ

電車

自動車・バイク

工学

建築・不動産

学問

文化

生活

ヘルスケア

趣味

スポーツ

生物

食品

人名

方言

辞書・百科事典

すべての辞書の索引

「JDAM」の関連用語

JDAMのお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング

画像から探す

Bf109

V-22

AAA

VTOL

M500

GBU-39

RMS

エシュロン





JDAMのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのJDAM (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2017 Weblio RSS