沸点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/11 03:00 UTC 版)
蒸気圧曲線と沸点
温度一定の条件下で、液体とその蒸気が気液平衡にあるときの蒸気の分圧を、その温度における飽和蒸気圧という[注 5]。飽和蒸気圧を温度の関数として表した曲線を蒸気圧曲線という。蒸気圧曲線のグラフから、ある外圧の下での沸点を読み取ることができる。例えば、外圧が 70 kPa (700 hPa) のときの水の沸点が知りたいなら、グラフの圧力 70 kPa に水平線を引き、この直線が水の蒸気圧曲線にぶつかるところで垂線を引くと温度が 90 ℃ と読み取れる。よって、外圧が 70 kPa のときの水の沸点は 90 ℃ である。
純物質の液体であれば温度が高くなると飽和蒸気圧も高くなる[注 6]ので、温度を横軸としたときの蒸気圧曲線は右上がりの曲線となる。そのため、外圧が高くなると沸点は上がり、低くなると沸点は下がる。例えば、調理用の圧力鍋を使うと外圧[注 7]を 2 気圧程度にできる。このとき、鍋に入れた水の沸点は 120 ℃ 程度まで上昇する。また、高地などの気圧が低いところでは、水が 100 ℃ より低い温度で沸騰することが知られている。標高が 1000 m 高くなるにつれて気圧は約 100 hPa 下降するので、標高 3000 m の山の上での沸点は 90 ℃ となることが水の蒸気圧曲線から分かる。
温度が高くなるほど飽和蒸気圧が高くなるといっても、温度上昇とともに蒸気圧曲線が際限なく伸びていくわけではない。純物質の蒸気圧曲線には終わりの点がある。この点を臨界点という。つまり飽和蒸気圧には上限がある。この上限の圧力を臨界圧力といい、飽和蒸気圧が臨界圧力に達したときの温度を臨界温度という。臨界圧力より高い外圧に対しては、沸点は存在しない。よって臨界圧力より高い圧力の下では、液体は決して沸騰しない。臨界圧力より高い圧力の下で液体を加熱し続けると、相転移することなく、超臨界流体と呼ばれる状態になる。
注釈
- ^ 液体の表面にかかる圧力のこと。
- ^ 100.00 ℃ではない。水の性質#物理的性質を参照。
- ^ 炭酸飲料を開栓してグラスに注ぐと、気泡が発生する。この現象も気化の一種であるが、気泡の主成分は溶質が気化したもの(二酸化炭素)であり溶媒の蒸気(水蒸気)はわずかしか含まれないため、通常は沸騰とは言わない。
- ^ 過加熱ともいう。
- ^ 平衡蒸気圧ともいう。飽和蒸気圧は単に蒸気圧と呼ばれることが多いが、液体と気液平衡になっていないときの蒸気の分圧を指して蒸気圧ということもある。コトバンク『蒸気圧』
- ^ 熱力学的には、クラウジウス・クラペイロンの式で説明できる。
- ^ 鍋の外の圧力ではなく、鍋に入れた液体の表面にかかる圧力である。
- ^ 気体になりにくい物質のこと。
- ^ 気体になりやすい物質のこと。
- ^ 気化した蒸気を逃さず凝縮させて元の液体に戻すなら温度は一定に保たれる(還流)。
- ^ 気液平衡にある液相の組成を表す線なので液相線という。
- ^ 気液平衡にある気相の組成を表す線なので気相線という。
出典
- ^ a b c アトキンス第8版 p. 122.
- ^ 特記ない限り本文中の沸点は次のサイトに依る: “Thermophysical Properties of Fluid Systems”. NIST. 2016年9月30日閲覧。
- ^ 竹内 (1996) p. 117.
- ^ 理科年表では約99.974 ℃としている。理科年表、平成26年版、p.397注)、丸善出版、2013年11月30日発行。
- ^ デジタル大辞泉『沸点』
- ^ 甲藤 (2005) p.16.
- ^ a b Clarke and Glew (1985) p. 523, TABLE 18 B.
- ^ バーロー第5版 p. 421.
- ^ a b 「共沸」『岩波理化学辞典』、第5版CD-ROM版、岩波書店、1999年。
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