レモンバーム
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/20 01:40 UTC 版)
| レモンバーム | |||||||||||||||||||||
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レモンバーム
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| 分類 | |||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||
| Melissa officinalis L. (1753)[1] |
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| 和名 | |||||||||||||||||||||
| コウスイハッカ | |||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||
| Lemon balm |
レモンバーム(英語:Lemon balm、メリッサ、学名:Melissa officinalis)は、シソ科の多年生のハーブ。南ヨーロッパ原産[2]。和名はコウスイハッカ(香水薄荷)[3]、セイヨウヤマハッカ(西洋山薄荷)[2]、コウスイヤマハッカ(香水山薄荷)[2]、メリッサソウ[1]。食べ物や飲料の香り付けや、ハーブとして医療に利用されてきた。
特徴
葉の形はミントにも似ており、シトラールなどの製油成分を含み、レモンを思わせる香りを持つ[3]。夏の終わりに、1センチメートルに満たない4 - 12輪の、蜜を持った淡い黄色やピンク、白色の花をつける[4]。繁殖力が非常に強く、かつては人間より長生きすると考えられていた[5]。
冬は雪の下でも枯れずに越冬することができる[6]。
栽培方法
建物の間や年中太陽の当たらない湿った場所を浅く耕しておき、種を撒いた後に水をかける。種まきの適期は、3 - 5月か9 - 10月頃で、発芽適温はおよそ20℃。発芽までは10 - 14日ほどかかる[7]。荒地でもよく育つので、手が掛からない。
春の芽吹き後、摘芯を繰り返しながら栽培すると、枝分かれして茎数の多いしっかりとした苗に育つ。また、定期的に株を全体的に切り戻しておくと、そこから枝分かれして新しい葉が出てくるので、シーズン中にたくさんの葉を収穫することができる。切り戻しは梅雨や猛暑の間の株の蒸れ対策にもなる。毎年種を周囲に零すので、一度撒いたら毎年どんどん増える。
歴史
古代ギリシアではレモンバームを蜜源植物として珍重していた。ギリシア語でメリッサ(Melissa、メリッタとも呼ばれる)は蜜蜂を意味し、メリッサという名はこれに由来する。ギリシア神話ではメリッセウス(メリッサが語源[8])の娘メリッサが、蜂蜜を与えて幼いゼウスを育てたといわれる[9]。その後、アラブ人によって、強胃、強心、強壮作用のもった薬草であることが伝えられた[10]。ペダニウス・ディオスコリデスの「薬物誌」にサソリや毒グモの解毒剤として有効などと書かれている。
利用
ハーブとして葉が利用される。主な旬は4 - 11月とされ、しおれていない新鮮なものは香りが強い[3]。香りのもととなっている精油成分は、シトラール、シトロネラール、オイゲノールアセテートなどで、不眠症の改善や抗うつ効果が期待されている[3]。
カルメル水
1379年、スイスのドゥヴリエのカルメル修道会の修道女により作られた。レモンバームとアンジェリカ(セイヨウトウキ)をさまざまな香辛料と一緒に混ぜ、アルコールに浸して抽出したもの。万能薬、不老長寿の薬として1611年に商品化され、現在も作られ続けている[4]。
料理
成長が盛んな頃に葉を摘み採り、乾燥させたものがハーブティーやポプリなどに用いられる。生葉もその都度摘み採り、ハーブティーにして香りをストレートに楽しむ使い方や、サラダ、魚介料理、鳥肉料理のソースに刻んで加えたり、アイスクリームなどの菓子に添えたりする[3]。ミネラルウォーターなどの飲料水の風味付けにも使われる。
マヨネーズやホワイトソースに生葉を刻んで加えて作ったソースは、魚や鶏肉料理の生臭みをカバーする効果がある[3]。ハーブティーにするときは、さらに風味をよくするためにミントやレモングラスを一緒に混ぜて使われることもある[3]。
薬効
ハーブは古くから治療に用いられ、ハート形の葉の形から、心臓および感情に関連付けて利用された(伝統的に、植物の形から効能が推察されることがあった)。記憶力を高める効果があると伝えられ、サプリメントで気分と記憶力が改善することがわかっている[11]。昔からハーブティーとしても広く飲まれ、発汗作用があり、慢性の気管支炎や熱、頭痛、風邪の初期症状に効くと言われた[2][5]。また、老衰の予防にも優れているという逸話も残っている。入浴剤としても使用され、肌をなめらかにする効果やリラックス効果もあるとされている[2][12] 。鎮静効果、鎮痛効果があるとされ、ドイツで神経性不眠症および消化器系に対し有効性が認められている[13]。
精油
水蒸気蒸留により花と葉から抽出される。原料の花や葉は安価だが(繁殖力が旺盛で育ちやすいため)、採油率が極端に低いので精油は非常に高価である。
このため製品としての精油にはレモングラス、レモンバーベナ、レモンなどの精油がブレンドされることがある。純正の精油は「メリッサ・トゥルー(真正メリッサ)」、他の精油をブレンドした製品は「メリッサ・ブレンド」と区別される。ただし後者が前者と偽って販売される例も少なくない。また合成品も多く市場に出回っており、イギリスでは当局による規定もない。
このような製品が市場に出回ることで、アロマテラピーの利用には潜在的な危険が生じる[11]。また精油の効能の研究はほぼ手つかずであり科学的に証明された例はほとんどないにもかかわらず[11]、アロマテラピーでは精油には抗うつ、鎮静、血圧降下、抗菌、抗ウイルス作用があり、子宮を強壮する作用も持つとされている[14]。
画像
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花にとまるマルハナバチ
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花穂
脚注
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Melissa officinalis L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年2月11日閲覧。
- ^ a b c d e 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 177.
- ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 261.
- ^ a b “レモンバームとは?”. インナーケアコラム. 大正製薬製品情報サイト. 2025年2月11日閲覧。
- ^ a b レスリー・ブレムネス 編 『ハーブ事典』 樋口あやこ 訳、文化出版社、1999年[要ページ番号]
- ^ “すくすくみどり No.29”. 公益財団法人札幌市公園緑化協会. p. 14. 2025年7月21日閲覧。
- ^ “レモンバームの育て方|種からの栽培や挿し木の方法、効能や使い方も紹介”. となりのカインズさん. Magazine.Cainz.com (2022年5月29日). 2025年2月11日閲覧。
- ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』中島健訳(新装版)、青土社、1991年8月、29頁。ISBN 978-4-7917-5144-0。
- ^ 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年、117頁。
- ^ 永岡治 著『クレオパトラも愛したハーブの物語 魅惑の香草と人間の5000年』PHP研究所、1988年、p206-207。
- ^ a b c マリア・リス・バルチン 著 『アロマセラピーサイエンス』 田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年[要ページ番号]
- ^ 基本ハーブの事典 東京堂出版 北野佐久子 2005年 p229
- ^ “レモンバーム”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2021年1月3日閲覧。
- ^ 『アロマテラピー・バイブル』 塩屋紹子 監修 成美堂出版 2009年 p57
参考文献
- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、177頁。 ISBN 978-4-415-30997-2。
- 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、261頁。 ISBN 978-4-07-273608-1。
関連項目
外部リンク
- オーガニックハーブを訪ねる旅へ|フランスの庭から - FRENCH GARDENS
- メリッサ、コウスイハッカ、セイヨウヤマハッカ、レモンバーム - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)
- レモンバームの育て方・栽培方法 - LOVEGREEN(ラブグリーン)
- レモンーバームとは|育て方がわかる植物図鑑 - みんなの趣味の園芸(NHK出版)
- Lemon balmのページへのリンク