解説と問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 07:08 UTC 版)
裁判例 単なる債権取り立て行為→非弁行為に該当(大津地裁平成21年判決など) 自動交通事故における自賠法に基づく保険金支払い請求支払請求、任意保険契約に基づく保険会社との間の損害賠償金の示談交渉、その取りまとめ行為→弁護士法違反(非弁行為)・組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等の仮装)の両容疑で有罪(大阪地裁平成19年9月13日 刑事事件 有罪 懲役1年10月(実刑)及び罰金200万円。なお、同裁判例では『「法律事件」に関して「法律事務」をしたこと』(1重カギ括弧は原文ママ)の定義として、「法律上の効果を発生,変更する事項を処理すること」としている。) 不動産の占有者との間で明渡しに関する交渉→非弁行為に該当(東京高裁平成19年4月26日 民事事件 公序良俗違反により報酬約束が無効) 非公開株式の売却あっせん、株式売却条件交渉、株主総会への出席→非弁行為に該当(広島地裁平成18年6月1日、民事事件 報酬約束無効。なお、同裁判例では「争いや疑義が生じ得る」事務処理をもって「法律事件」としており、現実に争いが生じている場合のみ成らず争いが生じる可能性がある場合をも「法律事件」に包含させている。) 相続人に代わり、相続人間での紛議の解決、土地占有者との賃貸借契約の解消や明渡をめぐる交渉、不動産の処分、相続税及び譲渡所得税その他の税の納税に関する事務等等→非弁行為に該当(東京高裁 平成12年6月8日 民事事件 公序良俗違反により報酬約束無効) なお、裁判例の理解の仕方として、必要説を採りつつも紛争の熟度について訴訟よりも低い段階(示談交渉、和解交渉、建物明渡し交渉などの時点)で「事件性」が充足したとの見解をとるものとも解釈し得る。 もっとも、このように解した場合には、当事者による交渉ないし提案を相手方が拒否した時点で直ちに紛争が認められることとなるので、結局、「事件」の射程は不要説の場合とほとんど等しくなるが、もともと交渉の相手方は裁判外であれば、当事者や代理人弁護士との交渉に応じる義務は存在しない。交渉を拒否した相手方に対し、なおも執拗に交渉を迫る場合、業務妨害・強要にあたることもある。 いずれにせよ、訴訟と同程度の紛争性でなければ「事件性」がない(必要説中の狭義説)とする裁判例はほぼない。 団体および行政庁 日弁連は後者の事件性不要説を基本的に支持している(日弁連調査室[要文献特定詳細情報])。 もっとも、非弁行為を取り締まる各弁護士会の非弁取締委員会では、刑罰法規適用の謙抑性を考慮し、事案全体の評価の中に事件性の濃淡を考慮要素に加えて非弁行為を調査し措置をとる運用をしていると解されている。 法務省、総務省(それぞれ弁護士法・司法書士法、行政書士法の所管官庁)、検察庁等の実務では事件性を考慮した運用なされていると解される。もっとも、行政実務の実際については、事件性の要件ではなく報酬獲得目的を厳格に解して運用しているとも考えられ、事件性の必要不要についての各省庁の見解は必ずしも明らかではない。 なお、サービサー法の立法趣旨から、法務省は事件性不要説をとっているといると主張する者もいる。通常は事件性がないと考えられている単なる債権回収業務について、当該業務が弁護士法違反であることを前提にした上で、弁護士法の特例として制定されているからである。ただし、一般的には弁護士法第73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)があり、何人も譲受債権の回収を業とすると弁護士法違反となるため、弁護士法の特例として制定されているに過ぎないと考えられている。 様々な事例についての検討 交通事故事例 交通事故における被害者の依頼を受け非弁護士が過失割合の認定や賠償額の交渉した場合には、過失割合の認定には専門的な判断を要し弁護士法上の鑑定にあたるため、弁護士法違反となる(不要説)。 もっとも、加害者が事故責任を自認している場合には紛争が成熟しているとはいえず、過失割合の認定は事実認定の問題、賠償額の交渉は単なる金銭交渉であると解する余地がある(必要説)。 なお、必要説を前提としても、加害者が事故責任を否認している事例や賠償交渉において加害者が被害者の交渉提案の内容を拒絶した事例においては、事件性が認められ、非弁行為の対象となる。 交渉事務 内容証明郵便の代理作成・発送については、原則として非弁行為の対象となる。 この結論は、不要説を採れば当然であり、必要説を採った場合においても、内容証明郵便を作成する場合には、通常、支払遅延等の紛争があるからである。 なお、相手方が直ちに任意に弁済する意思を表明している場合には、内容証明郵便や口頭で貸金返済請求を行うときは事件性がなく、非弁行為該当性が認められない(必要説を採用した場合)。 もっとも、このような場合には、通常、内容証明郵便が送られることはない。 また、事故責任を自認し損害賠償の意思を加害者が表明していたとしても、損害賠償額についての対立がある場合において、その和解内容について示談交渉を代理するのは非弁行為となる(必要説を採用した場合)。 なお、当事者が示談交渉をするに際し、依頼者の主張を法的に整序する限りで代理作成する行為は意思代理に当たらず非弁行為とはならないとする見解や、発送については、本人の氏名で発送せず、代理人の氏名で発送した場合には非弁活動に該当するという見解もある。 遺産分割協議時においても、特定の相続人がした当初の提案が関係相続人全員に直ちに受け入れられる例外的場合を除き、多くの場合、交渉ないし折衝が必要であり紛争性が認められる(平成5年東京高判)。 従ってたとえ必要説を前提としたとしても、折衝行為が非弁行為となることは勿論、他の相続人に対して分割方法や相続に関する法令や裁判例の説明をする行為であっても、法律相談として非弁行為となる余地がある。 弁護士へのアクセスの確保について 非弁行為の跋扈の原因として、弁護士へのアクセスが乏しいことがまま言われる。 もっとも、現在では、弁護士会がその費用の一部を負担し、法テラスや民事法律扶助制度などが整備され、地理的アクセスについても、現在、各都道府県に1カ所以上これら事務所が設置されており、公共交通機関等を利用してのアクセスが容易となっている。
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