第4話「掃討作戦」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 05:41 UTC 版)
「チェルノブイリ (テレビドラマ)」の記事における「第4話「掃討作戦」」の解説
原子炉爆発から数ヵ月が過ぎ、プリピャチ市周辺では、住民の避難に続き、除染作業が行われている。兵士たちは放射線除けに効き目があると信じられるウォッカをがぶ飲みし、くすねた鉛板で作った「卵のカゴ」で生殖器を覆って作業する。動物駆除チームに、若い兵士パヴェルが配属されてくる。彼は出征経験のない素人で、ライフル銃へ弾込めする手つきも覚束ない。駆除する動物の多くは避難の際に見捨てられたペットである。人気を察して集まってくるところを片端から狙い撃ちし、その後で一軒ずつ回って、屋内に隠れたものを射殺していく。パヴェルも次第に駆除にも慣れていくが、さすがに飛び込んだ廃屋内で子犬たちを見つけても手が出せない。外へ出て思わずウォッカを口にするパヴェルの耳に、代わった古参兵が撃ち続ける銃声が聞こえてくる。 モスクワ第6病院のディアトロフは、回復したものの、相変わらずホミュックへの証言を拒んでいる。ディアトロフは、自身はどうせ銃殺刑だと決めていて、真相究明に関心を示さない。そのホミュックは、モスクワ大学図書館で1976年の論文「極限状況下のRBMK炉について」を探し出す。この論文は著者が不詳で、肝心の部分が削除されていた。ただ、削除されなかった目次から、AZ-5ボタンを押すことで、却って原子炉内の核分裂反応を促進してしまう事象が論じられていたことを知る。 チェルノブイリ原発には、新たにタラカノフ少将が派遣されてくる。放射能汚染を食い止めるためには爆発した4号炉を覆う必要があるが、建屋の屋上には高濃度の放射能に汚染されたグラファイト(黒鉛)片が散らばっており、それらを片付けなければ、4号炉を覆う建造物のための工事を始められない。もっとも、重さで屋根が抜け落ちてしまうため、遠隔操作のブルドーザーは使えない。汚染度が低い箇所は、ルノホート計画で使用した月面車をブルドーザー代わりに使って、グラファイト片を屋上端から建屋下に落としていくことができる。一方、汚染度が高い箇所は、ガンマ線が電子回路を焼き切ってしまうため、月面車が使えない。アメリカを頼れないので、西ドイツからロボット「ジョーカー」を導入する。ヘリコプターで建屋屋上に「ジョーカー」を下ろし、レガソフやシチェルビナ、タラカノフがオペレーター室で見守る前でさあ作業開始という数秒後に、電子回路が焼き切れて動かなくなってしまう。シチェルビナは、連邦政府が「ソ連で核災害は起きていない」という建て前に沿って、西ドイツに対して、放射線量を実際の毎時12,000レントゲンでなく毎時2,000レントゲンと虚偽の数値を伝えて「ジョーカー」を導入したことを知り、モスクワへの電話口で激高する。現場で凄惨な光景を目の当たりにしているシチェルビナは、思わず悪態をついて受話器を壁に叩きつけ、最終的に電話機そのものを破壊した。 結局、レガソフたちは苦悩の末に「バイオロボット」、すなわち生身の人間に作業させるほかないという結論に至る。タラカノフは兵士たちにグラファイト片除去の任務を行うよう命令する。防護策を施しても2分作業すれば寿命が半減し、3分作業すれば余命数ヵ月となるような過酷な環境。そんな環境では1人あたりわずか90秒しか作業できないため、1人が2~3回、グラファイト片をスコップで投げ落とすと、もう時間切れになる。ところが、建屋屋上は大小、無数のグラファイト片で覆われている。兵士の1人は、時間切れを告げる合図を聞いて、あわてて戻る途中で、グラファイト片に足が挟まって転んでしまう。ようやく室内に戻るが、見ると長靴が破れており、「君は終わりだ」と告げられる。彼が任務を果たしたのか、それとも寿命が尽きたのか、誰にも分からない。「バイオロボット」による作業は、3828名の兵士によって、10月から翌年春まで続けられることになる。 12月になって、調査を終えたホミュックがプリピャチ市に戻ってくる。レガソフ、シチェルビナ、ホミュックの3人は盗聴の心配のない廃屋内で顔を合わせる。事故発生時の当直員に安全規則違反はあったが、爆発の原因は別にあるとの結論。その根拠となった論文「極限状況下のRBMK炉について」は、レガソフの元同僚であるヴァルコフが、1975年のレニングラード原子力発電所で起きた圧力管破損事故の後、執筆していた。RBMK原子炉は、低出力での運転を続けると不安定になり、そこでAZ-5ボタンを押すと、ホウ素で出来た制御棒が炉心に挿入されるが、制御棒先端は中性子減速作用を持つ黒鉛で作られているため、意図せず核分裂反応が促進されてしまうという欠陥を抱えている。この欠陥は通常の運転を行う限り表面化しないが、事故発生時のチェルノブイリ原子力発電所4号炉では、テストにむけて、低下する出力を維持しようと、炉心から二百本以上ある制御棒を数本残して引き抜いていた。その後、AZ-5ボタンが押下され、原子炉が爆発した。論文はRBMK原子炉の欠陥を告発するものだったが、KGBは論文を機密指定の上で隠蔽し、ヴァルコフも失職させていた。ホミュックは、間もなく行われるIAEA本部への報告で告発して、運転中の16基のRBMK原子炉の改修を政府に促さないと犠牲者が浮かばれないという意見を持つ。だが、シチェルビナは告発者とその家族に生命の危険がある以上、信念を曲げねばならないと諭す。 未亡人となったリュドミラ・イグナテンコは、独りで出産するためキエフに引っ越してくる。公園で産気づくが、出生後4時間で胎児は死ぬ。被曝の後遺症は母体でなく、胎児にあらわれる。医師と交わした幾つもの約束を破り嘘を重ねた報いに打ちひしがれ、リュドミラは生気無く佇む。
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