直線翼のサイテーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/28 06:47 UTC 版)
「セスナ サイテーション」の記事における「直線翼のサイテーション」の解説
サイテーション500 (Model 500 Citation) 最初のサイテーション。1971年型式証明(FAR part25)。1960年後半、セスナ社はビジネス・ジェット機とビジネス・ターボプロップ機の市場ギャップを埋める機体の開発に取り掛かる。プロジェクト名:ファンジェット500と名付けられたそれは、ジェット機より安い価格(60万USD)、ターボプロップ機より速い巡航速度(350kt)、双発プロペラ機の技量で操縦でき、運航費や整備費が最小限の手軽なジェット機を目差しており、直線翼の機体に小型ターボファンエンジンを装備するという非常に新しい試みであった。 ファンジェット500は1969年に初飛行し、その後、風洞試験やテスト飛行によってエンジン位置の変更、垂直尾翼の拡大などの設計変更がされ、販売にあたってサイテーションという名称が付けられた。計画が発表された当時は「遅いジェット機など誰が欲しがるのか?」との見方もあったというが、発売されるや初年度から売上を伸ばし、セスナ社の新たな需要への予見が正しかったことが証明された。この陰には廉価(695,000USD)もさることながら、手軽さの演出と入念なトラブル防止策、キャンペーン活動などの販売促進努力がある。 サイテーション500は全く新しいクラスの航空機であったので、これを市場に位置づける為には大々的なキャンペーンが必要であった。アビオニクスはウエザーレーダに至るまでパッケージ化して購入時の煩雑なオプション選択をなくし、機体価格に運航スタッフの教育訓練、初年度の運航整備管理、機体・アビオニクスの保証などを全て含め購入後の運航管理までもパッケージ化し、ジェット機を初めて購入する顧客でも機体価格さえ支払えば良い体制をつくった。これは顧客にとっては手軽さというメリットがあったし、セスナ社にとっては機体の装備品と顧客の運航管理を標準化することで、行き届いたアフターサービスを安価に提供する工夫であったのだろう。また量産機が完成する前からモックアップによる全米デモを行い、量産1号機が完成するや全米各地でデモ飛行を行った。初号機の引き渡しまでに投入された販売促進費用3,500万は当時のセスナ社の資産の40%もの額であったという。 エンジンは、騒音低減のために空気取入口のコンプレッサーを取り除いたプラット・アンド・ホイットニー社製JT15D-1。上空1000ftの通過騒音は双発ピストン機と同程度に収めたので、ジェット機の進入を認めなかった空港へも着陸可能となり、短滑走路での離着陸性能と相まってサイテーションは「空港を選ばない唯一のジェット・ビジネス機」として顧客の間口を広げた。 当時のレシプロ与圧機から乗り換えた顧客にとって、操縦や整備の容易さ、余裕性能がもたらす安全性、天候に左右されにくい運航などは目覚ましく向上した点で、機体価格や運用コストを上回るメリットがあったであろう。またサイテーションの引渡しが始まった頃に起こった石油危機は、原油価格の高騰を引き起こしジェネラル・アビエーション産業に打撃を与えたが、サイテーションにとっては追い風だったようで、他のライバル機が販売低下に苦しむのを尻目に、低コスト・省燃費をセールスポイントにして引渡し開始から3年間でベストセラーとなった。 セスナ サイテーション I (Model 500 Citation I) サイテーション500の改良型。主翼スパンを延長、最大離陸重量の増加、リバーススラスト装備。1985年生産終了。 サイテーション I/SP (Model 501 Citation I/SP) 1977年。単独操縦(Single-pilot operation)を認められた世界で最初のビジネスジェット機。サイテーション500は単独操縦を前提に設計されたが、当時のビジネスジェット機の型式証明認可基準がFARパート25(旅客機と同基準)であったため、単独操縦が認められなかった。セスナ社ではサイテーションの開発当初から、FAAにこの認可基準の変更を再三にわたり申請しており、多くの試験飛行がおこなわれたのち、1977年にFAR23(コミューター機の型式証明基準)を適用する事によって単独操縦を認められた。これにより運航費の低減(パイロット給料が一人分で済む)が可能になり、サイテーションの操縦が容易なことも同時に証明された。 サイテーション II(英語版) (Model 550 Citation II) 計画公表1976年、1977年初飛行、1978年型式証明。サイテーション500の機体をストレッチ(1.2m)しキャビン拡大、手荷物室の容量も大きくなった。主翼はサイテーションIの翼断面のままスパンを延長、燃料搭載量が増えて航続距離が伸びた。エンジンをP&W社製JT15D-4に換装。離陸滑走距離は911mに短縮。運用高度限界は13,100mに上がった。サイテーションS/II(後述)の登場によって一旦生産を終えたが、後に市場の要望を受けて再度復活しS/IIと並行生産された。 サイテーション II/SP (Model 551 Citation II/SP) パイロット1名による運航(SPはSingle Pilot Operationの意)に対応したモデル。 パイロット1人で操縦可能なサイテーションII/SP、FAR23にもとづいて型式証明を取得。最大離陸重量はサイテーションIIの6,033kgに対して、5,670kgに抑えられた。昼夜間の計器飛行が可能。またFAR23は総重量5,670kg以下の航空機が対象であったが、セスナ社は制限重量を超える例外を認めるようFAAと交渉をはじめ、1984年に条件つきで適用除外が認められている。 サイテーション・ブラボー (Model 550B Citation Bravo) サイテーションIIはサイテーション S/IIへと改良されることで一旦生産を終了したが、その後新たに登場した小型のサイテーションジェット(Model 525)とサイテーションVの商品ラインナップ上のギャップを埋めるため、再度サイテーションIIを改良したサイテーション・ブラボーが登場した。 胴体関係はサイテーションIIのままであるが、出力向上した低燃費の新しいPW530Aエンジンによって離陸重量、巡航性能ともに向上している。主翼は主な構造は変わらないが、ランディングギアが大々的に改良された。サイテーションIIではサイテーションIの主翼を流用していたため、翼幅が広くなった分ランディングギアのトレッドも広くなっており、これが地上での取扱上の注意点でもあったが、全面的に刷新、トレーリングリンク式を採用しトレッドも狭められ地上での取扱を容易にした。これらにより脚自体の重量は増加したが、接地時の許容度や地上での乗り心地は大幅に向上している。アビオニクスにはPrimus 1000を装備し、より複合的なフライトマネジメントを実現した。 最後のサイテーション・ブラーボは2006年後半に生産ラインから出荷され、ほぼ10年間に亘る337機の航空機の生産を終了した。
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