現代における黒髭のイメージ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 04:19 UTC 版)
We normally think about pirates as sort of blood-lusting, that they want to slash somebody to pieces. [It's probably more likely that] a pirate, just like a normal person, would probably rather not have killed someone, but pirates knew that if that person resisted them and they didn't do something about it, their reputation and thus their brand name would be impaired. So you can imagine a pirate rather reluctantly engaging in this behavior as a way of preserving that reputation. “ ” ピーター・リーソン 海賊に関する公的な見方は、現代の作家が海の卑劣な悪党としばしば描写するのとは、まったく異なる場合がある。海賊となった私掠船は、一般にイギリス政府は予備の海軍とみなしていたし、時には積極的に奨励したこともあった。遡れば、1581年に、フランシス・ドレークは、推定で1,500,000ポンド相当の略奪と共に世界一周の冒険を果たしてイギリスに戻ってきた時にエリザベス1世から騎士に叙勲されている。イギリスは戦争の危機に瀕すれば王の恩赦を定期的に出したくらいで、このため海賊に対する国民の感情はしばしば好意的ですらあったし、一部には後援者(パトロン)のような存在だと考えている者もいた。経済学者のピーター・リーソンは、無教養の野蛮な者たちという現代のイメージから遠く離れて、海賊たちは一般的には抜け目ないビジネスマンだったと考えている。ウッズ・ロジャーズによる1718年のニュープロビデンスの到着と、及び海賊共和国の終焉を期に、西インド諸島における海賊行為は減少していった。海賊たちは略奪品を売るのが困難になっていったため、その生活は苦しいものとなっていったし、さらにイギリス、フランス、スペイン間でほぼ一世紀に渡る海戦が続く中(このため船乗りたちは雇用には困らなかった)、私掠船一隻に対してイギリス帝国が商船を守るために雇った強力な船舶は数でも勝っていた。奴隷貿易の活況は西インド諸島において海賊が跋扈する状況を終わらせる一因ともなり、もはやかつてのように海賊が繁栄することはなかった。 いわゆる海賊の黄金時代の終わり以来、ティーチの功績は伝説となり、本や映画、あるいは遊園地のアトラクションにさえも影響を与えた。彼について知られていることの多くは、1724年にイギリスで出版されたキャプテン・チャールズ・ジョンソンの『海賊史』を典拠としている。この時代の海賊に関する権威を持ち、アン・ボニーやメアリ・リードのような人物に関するジョンソンの説明は、何年にも渡って、これらを調べる者の必読書とされてきた。『海賊史』は人気を博し、すぐに2版が出版されるなどしたが、著述家のアンガス・コンスタムは、ジョンソンの黒髭の説明は「もっとセンセーショナルにするために、多少誇張されている」と疑問を呈している。ただ、それでも『海賊史』は一般には信頼できる史料と考えられている。ジョンソンは偽名の可能性があるが、彼の説明は私信あるいは公文書に基づいて裏付けられているため、リーは彼の正体が誰であろうと公文書を閲覧する何らかの権限はあったはずだと指摘している。ジョンソンの正体について、コンスタムは推測として、イギリスの劇作家チャールズ・ジョンソン、イギリスの発行人チャールズ・リヴィントン、あるいは作家ダニエル・デフォーの可能性を挙げている。著述家のジョージ・ウッドベリーは、1951年の著作 『The Great Days of Piracy』の中で、ジョンソンは「明らかな偽名」であり、「彼が海賊だったと疑われることは避けられない」と指摘している。 その悪名の高さに反して、ティーチは最も成功した海賊ではない。ヘンリー・エイヴリーは資産家として海賊から足を洗うことができたし、バーソロミュー・ロバーツは、ティーチに対し推定5倍の略奪品を得ている。長い間、トレジャーハンターたちは、金銀財宝を求めて、黒髭が財宝を隠したという噂のある場所を探し続けたが、アメリカ東海岸に沿って探検された多くの場所で見つかったものは、これまで黒髭と関係はない。いくつかの物語には、彼らが戦利品の隠し場所で捕虜を殺害したことが示唆されている。ティーチの場合も例外なくこの手の逸話が存在するが、それに基づいて財宝が見つかったという例外もない。海賊の隠し財宝というものは、それを裏付ける証拠すら存在しない現代の作り話と考えられている。入手可能な記録には『宝島』のようなフィクションを除いて、財宝を隠すことが一般的だったことを示すものは何もない。こうしたことが事実であれば、戦利品を貯め込むことができた裕福な者がいたことを意味するが、これは戦利品は仲間内で公平に分配するという海賊船の指揮構造を無視している。財宝を隠したことが知られている唯一の海賊はウィリアム・キッドである。これまでにティーチから回収された唯一の財宝は、1996年に発見されたアン女王の復讐号とみられる船の残骸から回収されたものだけである。2009年の時点で、25万点の遺物が回収された。このセレクションはノースカロライナ海洋博物館で一般公開されている。 ティーチの亡霊について様々な迷信がある。海上に原因不明の光が見える時、これはしばしば「ティーチの灯(Teach's light)」と呼ばれ、かの悪名高き海賊は、あの世で友人や悪魔から自分だと認識されてもらえないために、頭を探して彷徨っているという。また、ノースカロライナに伝わる話として、ティーチの頭蓋骨は銀の杯の素材に用いられたのだと、1930年代のある夜に酔っ払った地元の裁判官が言っていたという。 黒髭の名前は、チャールストンの「黒髭の入り江(Blackbeard's Cove)」のように多くの地元の観光名所に使用されている。 彼の名前やキャラクターもまた文学でよく題材となっている。例えばMatilda Douglasの1835年のフィクション作品『Blackbeard: A page from the colonial history of Philadelphia(黒髭:フィラデルフィア植民地史の一ページ)』は、この通り主題に使われている。漫画では『ONE PIECE』に登場する海賊、マーシャル・D・ティーチ(黒ひげ)のモデルである他、エドワード・ニューゲート、サッチも黒髭から名前がとられている。 彼の人生を主題とした映像作品には『Blackbeard the Pirate』(1952)、『Blackbeard's Ghost』(1968)、『カリブの海賊王』(2005)、そして2006年のHallmark Channel製作のミニシリーズ『Blackbeard』がある。2003年の映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』では、主人公ジャック・スパロウは、『海賊史』の黒髭と類似点が多い。黒髭は最近の2つのテレビシリーズでも中心人物として描かれている。2014年の『Crossbones』ではジョン・マルコヴィッチが演じ、2016年から2017年にかけて『Black Sails/ブラック・セイルズ』のシーズン3と4においてイギリスの俳優レイ・スティーブンソンが演じた。また『海賊になった貴族』(2022年-)ではタイカ・ワイティティが演じている。
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