淋菌感染症とは? わかりやすく解説

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淋菌感染症

淋菌感染症は、淋菌Neisseria gonorrhoeae (gonococci)の感染による性感染症である。淋菌は弱いで、患者粘膜から離れる数時間感染性失い日光乾燥温度の変化消毒剤簡単に死滅する。したがって性交性交類似行為以外で感染することはまれである。

疫 学
淋菌感染症は世界中存在しており、最近増加している。米国の淋菌感染症はCDC報告Sexually Transmitted Disease Surveillance 1997 )によると、性感染症対策成果として1975 年以来減少続けてきたが、1996 年から減少横這いとなった。そしてその後199899 年にかけて一部地域増加転じている。我が国でも、1985 年以降エイズ啓発活動により顕著に症例数が減少していたが、最近感染症発生動向調査によると、1999 年4 月以降連続して増加傾向にある(図1)。我が国での感染者20 歳代の年齢層に最も多い。なお、報告数の中で女性の数が男性より極端に少数であることについては、女性自覚症状乏しく受診機会少ないことも要因一つ考えられる
最近疫学的研究によれば淋菌感染によりHIV感染容易になる報告されており、その意味でも重要な疾患である。

淋菌感染症
淋菌感染症

1. 淋菌感染症発生動向
b.月別定点当たり報告
a.定点からの年度別報告

図2. 男性尿道炎患者からの尿道分泌物塗抹標本グラム染色
左:淋菌貪食している白血球好中球)。胡麻のように見えるのが淋菌で、2 個対になっている
右:貪食をしていない通常の白血球

病原体
淋菌感染症は淋菌Neisseria gonorrhoeae (gonococci)の感染による性感染症である。淋菌似た髄膜炎菌Neisseria meningitidis (meningococci)があり、DNA相同性70%である。
菌種ともヒト病原性がある。ナイセリア直径0.6 ~1 μmグラム陰性双球菌で、腎臓形をした球菌それぞれくぼんだ面で接している(図2)。両菌種による感染臨床症状には著し違いがあり、淋菌尿路性器感染症髄膜炎菌上気道感染の後に中枢神経系感染症髄膜炎)をおこす。しかし、オーラルセックスによる淋菌咽頭炎髄膜炎菌による膣炎もときにみられる。したがって確実な診断のためには検体の鏡検だけでなく、培養同定検査が必要である。淋菌は弱いで、患者粘膜から離れる数時間感染性を失う。したがって性交性交類似行為以外で感染することはまれである。日光乾燥温度の変化消毒剤簡単に死滅
るので、分離培養必要な場合には検体取り扱い注意要する


臨床症状
男性主として淋菌尿道炎呈し女性子宮頚管炎呈する
男性尿道淋菌感染すると、2 ~9 日潜伏期経て通常膿性の分泌物出現し排尿時に疼痛生ずる。しかし最近では、男性の場合でも症状典型的でなく、粘液性の分泌物であったり、場合によっては無症状経過することも報告されている。
女性では男性より症状軽くて自覚されないまま経過することが多くまた、上行性に炎症波及していくことがある米国ではクラミジア感染症とともに骨盤炎症性疾患卵管不妊症子宮外妊娠慢性骨盤痛の主要な原因となっている。
その他、咽頭直腸の感染では症状自覚されないことが多く、これらの部位感染源となる。
淋菌感染症は何度も感染することがある

病原診断
前述如く淋菌死滅し易いことなどから検体取り扱い注意が必要である。死からでも検出可能な市販キットとしては酵素免疫法EIA 法)、液相ハイブリダイゼーション法PCR 法LCR 法があり、特にPCR 法LCR 法は検出感度が非常に高く分泌物と尿が検査保険適用受けている。酵素免疫法液相ハイブリダイゼーション法分泌物のみ保険適用となっている。検体採取部位採取法によっては正し結果得られないこともあるので、キット説明書に従って行うことが必要である。
耐性検査を行う場合には、分離培養による確保が必要である。分離を行う場合検体採取直ち分離培地接種することが必要である。やむをえず輸送する場合男性尿道分泌物女性頚管分泌物などはスチュアート培地用いる。市販検体輸送セットとしてカルチュレット(淋菌百日咳菌などで使用)があり、乾燥温度変化避けて保存輸送を行う。検体採取直ち培養できない場合には、この操作必須である。尿はそのまま室温にて迅速に検査室へ輸送する淋菌検体採取した日に分離培養することが原則で、長時間放置してならない培養にはNYC 培地、サイヤー・マーチン培地またはチョコレート寒天培地などを用い37 ℃で5 ~10%炭酸ガス環境下で行う。同定は、培養後にグラム染色をして形態観察オキシダーゼ反応糖分解などで決める。特に生殖器以外からの分離に対しては、菌種同定を行うことが必要である。
淋菌感染症では血清診断法は有用でない。

治療・予防
淋菌では耐性菌増えているが、その出現検出率には抗菌薬投与方法使用頻度関 している。国や地域により、治療多く使用される抗菌薬やその使用方法異なるため、耐性菌検出率異なってくる。治療として、スペクチノマイシン筋注)、セフィキシム経口)、オフロキサシン(経口)、ビブラマイシン経口)などが用いられている。セフトリアキソン静注)も有効であるが、我が国では現在保険適用はなっていない。近年ニューキノロン系対す感受性低下著しくなってきている。
予防対策としては、性的接触時にはコンドームを必ず使用することを教育するまた、患者だけでなくその接触者発見し早期診断と治療を行うことが重要である。

感染症法における取り扱い2003年10月感染症法改正に伴い更新
淋菌感染症は5類感染症定点把握疾患定められており、全国900カ所の性感染症定点より毎月報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下のいずれか検査による診断なされたもの
 ・病原体検出
  例:(男性の場合尿道性器から採取した材料からの検鏡培養蛍光抗体法など
 ・病原体抗原検出
  例:尿道性器から採取した材料からの酵素抗体法による検出など
 ・病原体遺伝子検出
  例:尿道性器から採取した材料からのPCR 法等による検出など
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清診断によって当該疾患診断されたもの





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