民生面、政治的動向
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 05:23 UTC 版)
「普天間基地移設問題」の記事における「民生面、政治的動向」の解説
グアムには太平洋戦争前より基地が建設されていたが、ブッシュ政権が世界規模での米軍再編を計画するまではそれほど大きな兵力が配置されていた訳ではなかった。グアムの基幹産業は観光であり、その8割を日本からの旅行客が占めていたものの、2000年代に入ると主に世界レベルの外的要因が後を絶たず、低落傾向に歯止めがかかっていない。在ハガッニャ総領事館が海兵移転に触れた際に挙げた要素を列挙すると次のようになる。 中国、東南アジア等の新しい観光地が脚光を浴びていること、 長期燃料代の高騰 インフルエンザ 金融不況 そのため、基地拡張と部隊及びその家族の移駐は経済活性化の起爆剤になると産業界には認識されている。 2006年、ロードマップで第3海兵遠征軍司令部、後方部隊などの移転が決まるのと前後して、グアム準州の上層は歓迎の意向を示した。準州副知事のカレオ・モイランは2006年5月下旬に来沖した際宜野湾市を訪問し、後に全面移転説を唱えることになる市長の伊波とも会談している。 なお、モイランの日本訪問に先だち、下地幹郎は2006年5月上旬にグアムを訪問し、「グアム - 沖縄間の直行便(航空路線)の開設」や「沖縄からの技術力と労働力の供給」を提案している。その関係からモイランは日本訪問時に下地とも会談しているが、この時の下地の報告ではグアム労働者は8万人となっていた。下地は一連の活動の動機として「沖縄県内の企業が県外で活躍し、外向きの沖縄経済をつくるスタートになる」との意図を明らかにしている。 2006年5月にはグアム米国商工会議所会頭マイケル・ベニートが来沖して沖縄の基地産業を参考とするため視察を行った。読売新聞は同年の沖縄知事選中に来沖したベニートの「我々の世論調査ではグアム住民の86%が沖縄海兵隊のグアム移転に賛成している。インフラ整備など受け入れ準備を急ぎたい」と言うコメントを報じている。グアム内の民間企業にも移転による経済活動の増加を見越した動きが見られた。 2007年5月10日にはPIRのニュースとしてグアム準州政府が基地建設にミクロネシア人労働者を求めていると報じられた。グアムでは建設労働者の人材に乏しく、中国大陸、台湾、フィリピンなどに労働力供給を依存していたが、国務省がグアムと近隣にあり、アメリカと自由連合関係を有している、パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦の人々を活用すべきであると認識していた事も背景としてあったと言う。2007年9月には準州知事のフェリクス・ペレス・カマチョが準州政府関係者を連れて訪日し、外務副大臣の小野寺と会談している。 2009年3月31日には沖縄県建設産業団体連合会の会長呉屋守将らが記者会見し、在沖海兵隊のグアム移転に伴う整備事業への県内企業参入を目指し、新組織を立ち上げると発表している。目標は日本政府負担約6000億円のうち、600億円(約10%)程度の工事受注であった。組織設立後は現地の住宅・インフラ整備の実施主体となるSPE(特定目的事業体)への参入を図ると言う。 2009年4月下旬には「グアム産業フォーラム」が開催され、同フォーラムのウェブサイトによれば、予定のスペースに収まりきらないほどの盛況を博したと言う。 アメリカ海軍は2009年11月グアムの基地建設に関する環境影響評価書を公表した。これに対して、環境保護局(EPA)は2010年2月、上下水道などの社会資本の未整備に対応するように環境悪化への対応を求める意見書を国防総省に送っている。 また、2009年11月にはOEA(Office of Economic Adjustment, Department of Defense 国防総省経済調整局)がグアム移転に絡めて行った地域分析を公表している。 政治的な面において、友好的な姿勢が修正されたのは日本で政権交代があってからであった。カマチョは2009年12月、防衛相の北沢の訪問に合わせて、普天間の全機能を受け入れる能力はないとの見解を表明した。また翌2010年1月には、海軍長官のレイモンド・メイバスに対して現行計画についても期間を延長するように求めた。インフラの能力が追いつかないこと、基地建設のための労働者を含め、一時的に島の人口(当時約17万)が数万人増加することが主要な懸念材料であるという。 カマチョは共和党系であったが、移転延長論についてはグアム選出の下院準議員ボーダロ(民主党)も同様の見解を示している。 アメリカ本国政府は2010年3月に同年度の移転経費予算を執行を決めたが、赤旗は批判記事の中でロバート・ヘール国防次官(財務担当)が「米側が予算を渋れば、日本が米側の姿勢を疑うとして、「日本に誤ったメッセージを送らないために、予算が必要だ」と述べたと報じている。
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