有東木の盆踊とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 文化 > 国指定文化財等データベース > 有東木の盆踊の意味・解説 

有東木の盆踊

名称: 有東木の盆踊
ふりがな うとうぎのぼんおどり
種別1: 民俗芸能
保護団体名: 有東木芸能保存会
指定年月日 1999.12.21(平成11.12.21)
都道府県(列記): 静岡県
市区町村(列記): 静岡市有東木
代表都道府県 静岡県
備考
解説文:  有東木の盆踊は、男性が受け持つ踊り女性が受け持つ踊り区別されていて、それぞれ太鼓伴奏に、踊り手自身歌いながら踊る。その踊りは、扇やコキリコササラ木製小さな長刀なぎなた】を持つものがあり、また踊りの輪の中に飾り灯籠頭上かざした踊り手繰り込んで踊ることがあるなど、多様な内容をもっている。
 静岡市有東木地区は、安倍【あべ】川の河口から三〇キロメートルほど上流の、左岸に注ぐ支流沿って急な山坂さかのぼった海抜五五〇メートルほどの緩やかな傾斜地で、集落後背地峠を越す山梨県に至る。この有東木の地は、稲作適した平地はないが、清流恵まれワサビ栽培発祥の地とされ、またお茶産地としても知られる
 この地の盆踊始まりは明確ではないが、安倍川上流域には、同種の盆踊伝承され、その中に一八世紀中ごろ盆踊太鼓修理した記録があるところがあり、少なくとも、その頃以前からの伝承考えられる
 有東木の盆踊は、八月十四日十五日の両日夕方六時三〇ころから地域内の東雲寺とううんじ】の境内会場行われる両日とも、まず男性男踊りから始まり、四演目ほど踊って次に女性女踊りが六演目ほど続き、また男踊りが四演目ほどあって休憩になる。その後女踊り始まり女踊り最後演目にかぶせるように、男踊り繰り込んできて、最後に男性の「長刀踊り」で終わるという構成で、両日とも夜の一二近くまで踊られる。
 現在の踊りは、男踊り一〇種、女踊り一三種の合計二三種であるが、明治から大正にかけて記録され盆踊歌詞は、合計一〇〇種以上になり、それらの中に室町時代から江戸時代初期にかけて流行した歌謡類似するものがある。
 また、踊りは、手拍子だけで踊るものや、閉じた扇を持つもの、扇を開いて持つもの、コキリコ呼ばれる二本の竹の棒の、それぞれ両端に紙の房を飾りにつけたものを互いに打ち合わせて踊るもの、ササラ呼ばれる刻み目入れた木の棒と、先を細かく割った竹の棒を打ち合わせたりすり合わせて踊るもの、小型木製長刀を持つ踊りなど、それぞれに決まっている。これらの持ち物は、踊り手自作し、また使わない踊りのときは、各自が帯の後ろ差し込んでおくことになっている踊り隊形は、長刀踊りは、互いに向かい合ったになって踊るが、他は輪になって踊りである。
 踊り伴奏は、ともに締太鼓で、男踊りは、太鼓(皮の直径五二センチメートル)を、今は踊りの輪の外に台を置いてその上に据えて打っているが、かつては二人男性太鼓支え持ち打ち手左右の手バチ持って打ちながら踊りの場を移動したとされる女踊り太鼓(皮の直径三五センチメートル)は、男踊り太鼓より一回り小型で、踊り手一人が、左肩前に縦に太鼓構え右手バチ打ちながら踊る。この盆踊では、太鼓が、歌と踊りを導く重要な役とされ、特に女踊り太鼓打ち手は「タイコンサマ」と呼ばれている。
 歌は、踊り手皆で歌うが、男性女性とも、それぞれ歌い出しを受け持つ熟練者がいて「ウタダシ(歌出し)サン」と呼ばれ、タイコンサマとともに師匠さん」と総称され、この盆踊指導者となっている。
 なお男踊りでは、ウタダシサンも踊り手として、踊りの輪の中にいるが、女踊りでは、輪の外、あるいは輪の中央立って歌と踊り導いている。
 これらの踊りには、随時一人男性が、トウロウあるいはハリガサと呼ばれる五層天守閣を木の骨組みかたどり色紙を貼り、中に明かり入れた飾り灯籠を、両手頭上かざして踊りの輪の中に繰り込み、その灯籠左右に回しながら踊ることがある。これを「中【なか】踊り」と呼んでいる。
 十五日の夜には、最後の「長刀踊り」の後で灯籠先頭に、二名男性支えた男踊り太鼓打ち手続き、さらに踊り手が行列して皆で集落の辻まで行きコキリコなどの持ち物につけた紙の房を取り外して焼いてこの年盆踊が終わる。この次第を「送り出し」と呼ぶが、かつてはさらに下の沢まで行って灯籠燃やした伝えている。
 この中踊り灯籠は、中世京都などで流行した風流【ふりゆう】の灯籠踊の姿をうかがわせ、また盆踊最後に行列をして集落の境などへ行って切り子灯籠などを燃やすのは、盆に先祖精霊迎えて、これを慰め、さらに他の霊とともに、これを送りだす形をうかがわせる
 このように有東木の盆踊は、中世から近世初期流行した歌と灯籠持った踊りなど、古風多様な風流系統踊りを、盆踊として伝承するもので、芸能変遷過程示し、また男性女性踊り決まっていることやさまざまな持ち物持って踊るなど、地域的特色を示すものとして特に重要である。

有東木の盆踊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 17:13 UTC 版)

有東木の盆踊(うとうぎのぼんおどり)は静岡県静岡市葵区の有東木に伝わる盆踊り。国指定の重要無形民俗文化財

古態を残した多様な風流系の踊りを伝承している。地区内にある東雲寺境内を会場に、毎年8月14日8月15日の両日に行われる。両日とも、男性だけの「男踊り」で始まり、次いで女性だけの「女踊り」と続き、男女交互に各種数演目ずつ踊って、最後は男性による「長刀踊り」で終了する。木と紙で作った城閣型の灯籠を頭上に掲げた男性を中心に、輪になって踊るのが基本だが、「長刀踊り」だけは互いに向かい合い、列を作って踊る。踊り手は木製の長刀など様々な採物を手に持ち、あるいは古い楽器であるコキリコやササラを打ち合ったり、すり合わせたりする。15日には灯籠を先頭に、踊りながら集落の辻まで行列し、ササラやコキリコに付けた紙房を燃やして精霊を送り出すなど古風な芸態を今に伝える。

起源については明らかでないが、同種の踊りを伝える平野地区の盆踊り太鼓に記された修理記録から、少なくとも享保7年(1722年)には今のような盆踊りが行われていたと考えられる。有東木と平野に伝わるような男女別々に踊る種類の盆踊りは、江戸時代の初期にまでその起源を遡ることが出来る。かつては合計100種を超える歌詞が伝承されていたが、現在は男踊り10種、女踊り13種を伝える。

参考文献

外部リンク



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「有東木の盆踊」の関連用語

有東木の盆踊のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



有東木の盆踊のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
文化庁文化庁
Copyright (c) 1997-2025 The Agency for Cultural Affairs, All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの有東木の盆踊 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS