暗殺
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第6章 ミュケナイ王アガメムノンは、妃クリュタイムネストラとその愛人アイギストスによって、暗殺された。妃は王に、袖口も首穴もない下着を渡し、王がこれを着ようとしている時に殺害した。そしてアイギストスが、ミュケナイ王となった。
『史記』「呉太伯世家」第1・「刺客列伝」第26 刺客専諸が、酒宴の席上、焼き魚を呉王僚にすすめる。専諸は王の前に到った時、焼き魚の腹中から匕首(あいくち)を取り出し、王を刺した。
『士師記』第3章 エフド(エホデ)が、両刃の剣を上着で隠し、モアブ王エグロンにみつぎ物を持って行く。「申し上げるべき機密がある」とエフドは言い、高殿で王と2人きりになる。エフドは剣で王の肥えた腹を刺し、高殿の戸に錠をおろして去る。
『日本書紀』〔第35代〕巻24皇極天皇4年(645)6月 三韓進調の日に蘇我入鹿を謀殺すべく計画が練られる。6月12日、帝が大極殿に出御し、倉山田麻呂が三韓の上表文を読み上げる。声が震えるので入鹿は不審に思う。中大兄らが躍り出し、剣で入鹿の頭や肩に切りつける。入鹿が驚き立ち上がるところを、佐伯子麻呂の剣が片足をはらう。
『マクベス』(シェイクスピア)第1~2幕 3人の魔女がマクベスに、「いずれは王ともなられるお方!」と呼びかけ、マクベスはその予言を現実化すべく、スコットランド王ダンカンを殺そうと考える。マクベスの心にはためらいがあり、「もしやりそこなったら?」と、弱気にもなる。しかし妻から「勇気をしぼりだすのです」と強く説得され、マクベスはダンカン王の寝室を襲って刺殺する。
*→〔凶兆〕3aの『ジュリアス・シーザー』(シェイクスピア)。
★2a.刃物をふるったり鉄槌を投げたりして暗殺を試みるが、失敗する。
『史記』「留侯世家」第25 張良は大力の士とともに秦の始皇帝をつけ狙い、始皇帝が東方に遊幸した時、重さ120斤の鉄槌で撃った。しかし誤って鉄槌を属官の乗る副車に当て、暗殺は失敗した。
『史記』「刺客列伝」第26 荊軻は毒を染ませた匕首(あいくち)を地図の中に隠し、地図を秦王(始皇帝)に献上する時、至近距離から刺そうとした。しかし秦王は身をかわし、暗殺は失敗した。後、高漸離は筑(楽器)の妙技をもって秦王に近づき、鉛を筑の中に仕込んで撃ちかかった。しかし高漸離は眼をつぶされていたため、当たらなかった。
『やみ夜』(樋口一葉) 松川蘭は、衆議院議員・波崎漂(ただよう)を恨み(*→〔車〕2)、高木直次郎に波崎暗殺を依頼する。直次郎は、波崎が演説を終えて人力車で帰宅したところを襲う。人力車を後ろへ引き倒し、波崎の首筋をねらって白刃をひらめかしたが、顔面に僅かな傷を負わることしかできなかった。直次郎はそのまま逃げて行方をくらまし、松川蘭は召使い夫婦とともに屋敷を出て消息不明となった。
*→〔人質〕3の『走れメロス』(太宰治)・〔身代わり〕9bの『史記』「刺客列伝」第26。
★2b.銃撃して暗殺しようとするが、その瞬間相手が動いたので失敗する。
『ジャッカルの日』(フォーサイス) パリ解放記念日。モンパルナス駅前広場で行われる式典最中にドゴール大統領を銃撃すべく、アパート6階から殺し屋ジャッカルが狙う。ジャッカルが引き金を引いた瞬間、大統領は退役軍人に勲章を授与してその頬に接吻するため、頭を前に傾ける。銃弾は大統領の頭の後ろ1インチの所を通過し、暗殺は失敗する。
『知りすぎていた男』(ヒッチコック) コンサート会場で、暗殺者が某国首相をねらう。音楽のクライマックスにシンバルが鳴り響く、その瞬間に狙撃すれば銃声が聞こえず、首相が倒れても暗殺と気づかれないだろうと、暗殺者は計算していた。暗殺計画を知った医師の妻ジョーは、暗殺者が銃を構えるのを見て、大声で悲鳴を上げる。首相が驚いて振り返ったため、発射された銃弾は外れて、首相は命拾いした。
★3.暗殺の未遂。
『戦争と平和』(トルストイ)第3部第3篇 モスクワに乗りこんだナポレオンを暗殺すべく、ピエールは短剣を隠し持ってアルバート広場へ向かう。しかしその時すでにナポレオンはクレムリン宮殿に入っており、暗殺は実行できなかった。ピエールは放火犯と見なされて、フランス兵たちに捕らえられる。
『皇帝ティートの慈悲』(モーツァルト) 1世紀のローマ。先帝の娘ヴィテッリアは、父から帝位を奪ったティートを恨み、彼女に思いを寄せる男セストに、ティート暗殺を命ずる。セストは宮殿に放火してティートを刺すが、それは王の衣装を着た別人だった。セストは逮捕され、ヴィテッリアは自らが皇帝暗殺を指示したことを告白する。ティートは寛容と慈悲の心でセストを赦し、ヴィテッリアを后にする。
★5.暗殺を恐れる人。
『三国志演義』第72回 曹操は常に暗殺を恐れており、左右の者に「わしはよく人を殺す夢を見るから、寝ている時には近づくな」と命じていた。ある時、昼寝中に蒲団を落としたので、近習がかけなおそうと近寄ったところ、曹操は起き上がって近習を斬り殺し、また眠った。しばらくして曹操は目を覚まし、驚いたふりをして「誰のしわざだ」と尋ねた〔*しかし部下の楊修だけは、曹操の演技を見抜いた〕。
『Z』(コスタ=ガヴラス) 軍事政権下の某国。反政府運動の指導者である議員が、広場での集会後、2人組の乗る小型トラックに襲われる。議員は、棍棒で一撃されて死ぬ。政府は「議員はトラックにはねられた」と発表し、交通事故死として処理する。実際は、憲兵隊や警察の上層部が暗殺を計画し、実行したのだった。予審判事が、裁判で真相を明らかにしようとする。しかし、証人たちが次々に病気や事故で死んでいき、事件は闇に葬られた。
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