旧庁舎保存の要望・再開発への反対
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「東京中央郵便局」の記事における「旧庁舎保存の要望・再開発への反対」の解説
日本建築学会と日本建築家協会は、旧庁舎が戦前の優れた近代建築のひとつであり、駅前景観の重要な要素となっていることなどから、保存すべきであるとして「保存要望書」を提出している。2007年(平成19年)6月、超党派の国会議員が参加する「東京中央郵便局庁舎を国指定重要文化財とし、首都東京の顔として将来世代のために、永く保存・活用を進める国会議員の会」が同庁舎の保存を申し入れた。2008年(平成20年)5月、建築関係の専門家などによって構成される「東京中央郵便局を重要文化財にする会」による再開発計画に対する疑義が提示された。 日本郵政は、局舎の保存方法について第三者の有識者による「歴史検討委員会(委員長:伊藤滋早稲田大学特命教授)」からの報告を踏まえて、今回の再開発計画を策定したとしている(衆議院総務委員会においても明言されている)。しかし、実際には同委員会を構成する7名中、6名が全面保存を求めていたことから、同委員会の検討プロセス・報告書に所収の各委員の各論併記となっている報告書本文の内容と、報告書掲出の設計コンセプト及び日本郵政側の「委員会の報告を踏まえて」つくられたはずの現在提示されている設計案の間に重大な乖離がある。「最初から『部分保存』の結果ありき」「アリバイづくり」と指摘する声もある。 2009年(平成21年)2月26日、当時の総務大臣鳩山邦夫は衆議院総務委員会において2007年(平成19年)12月の文化庁次長による「中央郵便局は重要文化財に値するもの」との答弁を踏まえ、「重要文化財の価値を有する建物を再開発で取り壊すのは、トキを焼き鳥にして食べるようなもの」と答弁し、同再開発計画の見直しを明言した。2009年(平成21年)2月27日、鳩山総務相は閣議後の記者会見で、文化財保護の観点から、再開発計画の見直しをすることで塩谷文部科学大臣と同意見であると述べた。同年3月4日、鳩山総務相は、「東京中央郵便局を重要文化財にする会」の訪問を受け、「東京中央郵便局を重要文化財として保存する要望書」を受け取った。その席において同会会長の前野まさる東京芸術大学名誉教授は「有識者の報告を踏まえて事業を計画した」という日本郵政側の説明は事実と異なることを主張。「有識者は全面保存を求めていた。正しく踏まえれば高層ビル計画には至らなかった」と述べた。「老朽化」が建て替えの理由にされていることについて、平成8年の耐震補強工事で庁舎の構造は建築基準法の強度をほぼ満たしていることなどを説明した。これを受け、鳩山総務相は会談後に現地を抜き打ち視察。重機に削られて散らばった外壁タイルをみて「このままではどんどん壊される。一時的にせよ工事は止めるべき。日本郵政は強引」と述べた。 日本郵政の西川善文社長は、再開発を計画どおりに進めていく方針であることを、2009年(平成21年)3月3日の記者会見において述べた。しかし、同年3月9日には、日本郵政の公式見解として、旧庁舎の保存部分を拡大する方向で再開発計画の見直しがされることが発表された。これを受け、鳩山総務相は、同年3月10日の記者会見において「トキを焼き鳥にして食わないで、剥製が残るような設計変更をお願いし、再開発をしてもらう」と発言。旧庁舎の保存部分を拡大した上で再開発を進めるとする日本郵政の提案に同意した。同日、「東京中央郵便局を重要文化財にする会」は、塩谷立文部科学相と面会し、あくまでも旧庁舎の全面保存と重要文化財指定を求める内容の要望書を手渡した。この件について、森法相は、同年3月11日の法務法務委員会答弁において「経済合理性のみ追求する姿勢とか世の中というのは、余り好ましくない」と発言した。 2009年(平成21年)3月11日、日本建築学会から旧庁舎の保存を求める4度目の要望書が出された。同文中では「東京中央郵便局庁舎、大阪中央郵便局庁舎には、国指定の重要文化財の水準をはるかに超える価値がある」とされ、外観だけでなく構造を含めた保存を求めている。 既成事実のように新聞各紙に連日報じられている「保存部分の割り増しで、文化庁と妥結」であるが、都市計画決定に際し、西側街路・地下街路の形状変更がなされている(平成21年2月東京都都市計画審議会)にもかかわらず、この「妥協案」についてすら、日本郵政内で真摯に討議してこなかった経緯がいみじくも露呈したかたちである。 計画の見直しによって、旧庁舎の保存部位は(当初予定の2割から)3割に増加した。しかし、この数値では登録文化財・指定文化財の過去の実績からは外れている。 2009年(平成21年)3月11日の衆議院法務委員会での質疑では、郵便局会社の株式は日本郵政が保有―その日本郵政の株式は国が保有ということ―すなわち、財務大臣が株主の権利を行使できること、また、日本郵政株式会社の取締役は総務大臣の許可を受けなければその効力を発しない(日本郵便株式会社法)ということが、政府参考人から明らかにされた。
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