日本の導入状況
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「固定価格買い取り制度」の記事における「日本の導入状況」の解説
要旨 2009年11月1日、太陽光発電の余剰電力買取開始(電力会社ごとに買取単価設定) 2012年7月1日、対象を太陽光発電以外の再生可能エネルギーにも拡げ、余剰電力買取制から全量買取制に制度を変更(全国一律の回収単価) 日本では再生可能エネルギーに対する普及促進策としては電力会社による自主的な買い取り、RPS法や各自治体による助成などが用いられてきた。これにより太陽光発電では世界一の生産量や市場を有していたが、2005年に補助金が一度打ち切られてからはいずれも他国に抜かれ、国内市場も縮小していた。このため2009年1月に経産省が緊急提言に沿って補助金を復活させた。また2009年2月には環境省も再生可能エネルギーの導入に伴う費用や経済効果の試算を発表し、普及政策として固定価格買い取り制度の採用を提案した(再生可能エネルギー#日本における動きも参照)。 このうち太陽光発電については2009年2月24日、経産省より初期投資の回収年数を10年程度に短縮する助成制度の強化が発表された。当初は2010年からの実施予定であったが、経済危機対策、エネルギー政策、地球温暖化対策の観点から前倒しされ、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)2条3項に基づく「太陽光発電の余剰電力買取制度」が2009年11月1日から開始された。開始時の余剰電力の買い取り価格は1kWhあたり48円、エネファームやエコウィルなどの自家発電装置を他に併設して居る場合は39円であり、設置後10年間は同じ価格で買い取るものとされた。また後から新規に設置された設備の買い取り価格は、例えば11年度に設置した場合は42円程度というように年々引き下げられる予定であった。補助金の効果もあり、日本の太陽電池生産量は拡大を再開し、2010年度は関連産業の規模が1兆円近くまで成長すると見込まれた。 2009年末からは、全量買い取りの導入、および対象を太陽光発電以外にも拡大することが検討され、検討状況は経産省のプロジェクトチームのページで公開されてきた。こうした拡大によって再生可能エネルギーの普及促進が期待された。制度の具体的な形態については、様々な意見が見られた。例えば、従来のRPS制度や余剰電力買取制度を廃止して全量買い取り制度に一本化すべきとの意見もみられた。その一方、余剰電力買い取りにも節電意識向上などの利点があり、またこれを廃止する場合は既存導入家屋にて配線工事が必要となること等から、併用を提案する意見も見られた。電事連からは系統安定化への配慮等を求める意見が提出された。また電力を大量に使用する業界等からは、国民負担や産業競争力への配慮の要望も出された。 こうしたヒアリング等を経たのち、法案(再生可能エネルギー特別措置法案、再生可能エネルギー買い取り法案)は2011年4月5日に国会に提出され、各党による協議・修正を経て、同年8月23・26日、衆参両議院での全会一致の賛成をもって成立した。検討段階では地域経済振興や産業活性化への期待が集まる一方、電力料金の増加への不満、電力会社による受け入れ拒否の可能性に対する不安の声等も聞かれた。一方で制度の導入をにらみ、これまで対象から漏れていた再生可能エネルギー源の事業化や、新たな市場参入、関連投資の拡大等の動きも見られる。 買取価格・期間(再生可能エネルギー特別措置法の条文上での呼称は、第3条でそれぞれ「調達価格」・「調達期間」とし、両者合わせた呼称として「調達価格等」としている)は2012年の年明け早々に「調達価格等算定委員会」で決定される予定だったが 、当初、経済産業省が示した人事案について、国会で同意が得られず、委員会の開催が遅れた。委員5人のうち3人が制度の導入に慎重であることが与野党に問題視されたためである。政府は、新日本製鉄の進藤孝生副社長(のちに社長昇格、鉄鋼業界は電力多消費産業である)に代わって、植田和弘京都大学大学院教授を委員長に起用し、国会の同意を得た。調達価格等算定委員会の意見聴取では専門家が「30円台後半が適正だ」と指摘したが、太陽光事業に参入するソフトバンク社長の孫正義が「最低でも税抜き40円」と主張し、業界団体の太陽光発電協会も「税抜き42円」と主張していた。調達価格委員会は2012年4月に意見書をとりまとめ、これに基づいて2012年6月、太陽光10kW以上は税抜40円等とする買取制度の詳細が決定された。制度開始当初の買取水準は新規参入を促すことを狙いとして高めに設定され、企業や地方自治体にも動きが見られる。その一方で高めの買い取り価格に対し、村沢義久は35円でさえ確実に利益が出るのに40円ではスペインのようなバブルを生むと指摘した。決定に先立って行われたパブリックコメントでは5000件以上の意見が寄せられ、賛否両論が見られた。買い取り額は普及量の予測に基づき、定期的に見直されることが決まっている。2012年7月1日、再生可能エネルギー特別措置法が施行された。 固定価格買取制度の対象である太陽光発電の導入済み認定容量は2017年度末には家庭用で出力1012万kWに達し、産業用は3377万kWであった。制度全体では5029万kWであり太陽光が8割以上を占める。大規模水力を除いた再生可能エネルギー全体で2016年度には日本の全発電電力量の約7.7%が賄われている。
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