日本における離婚、連れ去り、面会交流
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「日本における国際的な子の連れ去り」の記事における「日本における離婚、連れ去り、面会交流」の解説
国立人口社会保障研究所のデータによれば、1970年には離婚で母親が単独親権を得る例は約50%に過ぎなかったが、2004年には約80%で母親が子どもの親権を獲得している。類して、米国では、父親が単独あるいは共同親権を獲得するケースは全体の約26%、母親または父親以外の誰かが親権を獲得するケースは全体の74%となっている。 フランスや米国などの一部の国では、子どもがいる夫婦の離婚の場合、両親の共同養育が法律で定められているが、日本の法律ではこのような取り決めはない。日本で多くの子の拉致事件を処理してきたジェレミー・D・モーリー弁護士によれば、離婚後の子どもの親権を両親それぞれが維持するという考え方は、日本人の文化や歴史にはないため、日本法にそのような思想はほぼ皆無である。日本では結婚が合法的に解消されると、一方の親にのみ親権と親権が与えられ、分離された「非監護親」は肉親であるにも関わらず子どもから完全に分離される。日米法制度研究の専門家である田瀬隆雄氏の研究によれば、親権を保持する親と親権を保持しない親権親の違いに関する考え方は、米国においては非親権者も法的には親だが、日本においてはそうとは認識されず、日米二つの文化の間で考え方は根底的に異なっている。田瀬によれば、離婚後に父親に子どもの親権が認められていた時代、離婚の1年後に父親が再婚すれば、実母に何の通知もされないまま養子縁組が認められ、実母が実子を取り戻そうとしても血縁関係は重視されることなく、ほぼ確実に敗訴した。さらに、日本では、非親権者に何らかの親としての権利を認める事は、将来の紛争の原因となり子の福祉に害を及ぼすとして、肉親と子の間の親子関係の永久的な断絶が望ましいものと考えられてきた。ジャパンタイムズによれば、日本の法曹専門家は共同親権が子の福祉に与える影響について、きわめて懐疑的である。理由は単に、子どもが両親の間を行き来する事は子の生活に多忙をもたらすためである。 これまで日本では、離婚後に非監護親が子どもの支援のために養育費を払う事はほとんどなく、子どもと面会することもなかった。面会交流などに関する日本の家庭裁判所の判決は強制力が伴わない。その強制力の欠如が根本原因の一つとなり、裁判所は離婚する夫婦の仲裁において、面会交流調停による双方の同意をきわめて重視してきた。面会交流調停が破綻した場合、裁判所は制度的には介入が可能であり、民法第819条の規定により親権者決定の権限を有しているが、日本の法制度ではプライマリカストディアンまたは養育者は「継続性の原則」によって決定されることが一般的であり、日本での調停開始時点で子どもと物理的に同居している親、言い換えれば、元々の居住国から子どもを連れ去った拉致親がこの原則によって親権者に決定される可能性が非常に高い。同志社大学法学部のコリン・P・A・ジョーンズ教授によれば、日本の法律では子どもの権利が認知されていないと指摘し、非監護親と子どもの面会交流が、監護親の権利か非監護親の権利か、あるいは子ども自身の権利かについて学問的な議論が、日本においては21世紀になってもいまだに継続していると指摘している。実際、日本の最高裁判所は2000年、面会交流は親・子どちらの権利でもないと主張している。 したがって、日本においては面会交流の審判の結果が出たとしても、実際の面会交流は親権者(婚姻中の別居の場合は監護親)の協力の下においてのみ実現可能であり、強制力はない。米国国務省はこれについて、「日本の家庭裁判所の判決の遵守は本質的に任意であり、両親の合意がない限り、いかなる判決も実行不能になる」と述べている。結果として、法的強制力によって面会交流(または子の監護や扶養)を実現しようとすることは、日本においては不可能である。ニューヨーク市で国際家事を専門とするジェレミー・D・モレー弁護士によれば、 親権者(通常は母親)が面会に協力することを拒否した場合、他の親(通常は父親)はしばしば子どもへの養育費の支弁を拒否する。 日本の離婚制度についてきわめて弁護的にみるとすれば、それは離婚後に当事者が自発的にお互いを思いやって行動できるように、「きれいな状態」を保持できるようにしている。しかしこのように寛大な解釈は、経済力を持つ配偶者(通常は夫)が資産の大部分を保有し、子どもへの養育支援をほとんど提供しないことを認めてきた過去や、養育費の支払いについて審判の結果強制的に徴収されがちな一方で、母親の親権や面会拒否が頑強に守られるケースを考えれば、一種の論理的な破綻を生じているといえる。 ハーグ条約批准国82か国の間でも、親権に関する取扱は国によって異なる。日本においては、戦後行動成長期に母親が通常単独または主たる監護権を得る形が一般化したが、その間に他の先進国では、共同養育および共同親権に移行する機運が高まっていった。親権者決定は、日本のように単独親権の国でも共同親権の国々でも、何らかの法的問題となることがある。共同親権を導入しているイギリスでも、父親の権利団体は、児童扶助法の改正や、両親の児童扶養、育児への参加、子どもとの面会交流、裁判所命令の執行力の強化を主張している。
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