日本における除菌療法の実態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 04:22 UTC 版)
「ヘリコバクター・ピロリ」の記事における「日本における除菌療法の実態」の解説
日本で認可されている医療保険の対象となっている除菌療法は、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)またはプロトンポンプ阻害薬 (PPI) と抗生物質2剤(アモキシシリン (AMPC) + クラリスロマイシン (CAM))を組み合わせた「(P-CAB or PPI) + AMPC + CAM」の3剤併用療法で、3剤を7日間服用する。当初は、プロトンポンプ阻害薬としてランソプラゾールのみが指定。オメプラゾールとラベプラゾール、ボノプラザンも順次保険診療の対象となった。 この方法による除菌の成功率は80%程度とされてきたが、近年クラリスロマイシン薬剤耐性菌株が増え、除菌率が70%程度まで低下との報告もある。ボノプラザン併用療法では、胃内pHをより高く維持できるため、一次除菌 92.6%, 二次除菌 98.0%と既存PPIに比べ高率に除菌できた。クラリスロマイシン耐性菌株に対しては、ヨーグルトを併用し除菌の成功率が向上したとの報告がある。クラリスロマイシンは呼吸器感染症の治療に用いられることから、小児の薬剤耐性菌保有も見られる。 前述の一次除菌療法にて除菌が失敗した場合、クラリスロマイシンをメトロニダゾール (MNZ) に変更し「(P-CAB or PPI) + AMPC + MNZ」の3剤併用療法による二次除菌療法まで保険適応となっている。 一次除菌と二次除菌の間の期間については、一次除菌と二次除菌の期間の違いによる除菌成功率の差異の報告はないため、早く二次除菌を行おうとして一次除菌の結果判定を急ぐと、偽陰性や偽陽性が多くなり、不成功者を成功者と、成功者を不成功者などと判断してしまう恐れがある。除菌終了から1年以上経過した検査で陰性であったものが数年後に陽性になった場合は再感染を検討するが、再感染は稀であるため、基本的に除菌不成功者として二次除菌を行う。 また、二次除菌療法でも除菌が失敗した場合、三次除菌療法がいくつか提唱されている。「(P-CAB or PPI) + AMPC + MNZ」の倍量投与・倍期間投与等や、またシタフロキサシン (STFX)、レボフロキサシン (LVFX) 等を組み合わせた「(P-CAB or PPI) + AMPC + STFX」「(P-CAB or PPI) + AMPC + LVFX」の3剤併用療法等が行われたりするが、これらは保険診療の適応にはならない。 一方で、小児に対する治療は、除菌後の再感染のリスクを考慮して除菌対象年齢を5歳以上としている。しかし、蛋白漏出性胃症や消化性潰瘍を反復するなど除菌治療が必要と判断された場合では5歳未満でも除菌治療が行われている。ただし、除菌治療に関する添付文書では「小児等への投与:小児等に対する安全性は確立されていない(使用経験が少ない)」となっており、治療が必要な場合には保護者に充分な説明を行い同意を得る必要がある。原則として年齢上限は定められていない。 新しい除菌療法としてCPY2C19遺伝子多型検査に基づく、テーラーメイドのヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法が開発された。
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