政治・権力とは? わかりやすく解説

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せいじ‐けんりょく〔セイヂ‐〕【政治権力】

読み方:せいじけんりょく

政治的目的実現するため、あるいはそれを阻止するために用いられる影響力物理的心理的集団的方法手段用いられる合法的政治権力の典型国家権力


権力

(政治・権力 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/05 19:07 UTC 版)

権力(けんりょく、英語: power[1], authority[1]ドイツ語: Macht)とは、ある主体が自己の意思に沿って他人または他集団に対し、行動を強制する能力である[2]。「権威」と重複する場合も多いとされる[3]

概要

権力という概念は、17世紀力学の発展を背景として生み出された。すなわち、物体はその位置エネルギー運動エネルギーから力学的エネルギーを生じさせる。これと同様に、何らかの「権力手段」、「基礎価値」を保持することによって、ある者が他者をその意に反してでも行動させうる、特別な「力」を保有している、という理解が生まれた。こうした権力観を「実体的権力観」という[4]

権力は社会のあらゆる場面で成立する余地がある。一般に政治的な場面で用いられる権力(政治権力)とは、一定の範囲の住民すべてに及ぶ強制力を有し、それを服従させるようにまで至った権力のことを指す。

通常は「政治権力」といえば、国家権力を指すのが通例である。国家の制定権、警察軍隊政府官僚集団を独占的に保有することにより、実効的な統治権を確保する。

なお、物理的強制力を伴う政治権力を保持するだけでは、政治的正当性を確保するまでには至らず、安定的な支配を維持することは難しい(権威の欠如)。政治的正当性を確保するためには、政治権力・国家権力が被治者から支配に対する自発的な同意・服従を調達する必要がある。

研究史

近代的な概念としての権力の研究の端緒としてニッコロ・マキアヴェッリデイヴィッド・ヒュームの古典的な研究を挙げることができる。15世紀にマキアヴェッリは統治に不可欠な要素は軍備法律であると論じた。特に独立した国家を統治するための常備軍の設置の重要性を主張している。この組織的暴力によって統治者の権力を基礎付けるマキアヴェッリの現実主義と呼ばれる政治思想は権力の研究における理論的基礎として確立された。このような現実主義的な見方をヒュームは発展させた。ヒュームは軍事的征服植民地化などあらゆる政治変動において暴力が見出されることを指摘し、権力を研究することによって、従来の道徳的な政治理論に対して実証主義的な政治理論を構築することを主張した。そしてヒュームは論文「政治を科学に高めるために」(1742年)の中で権力が表現される統治の形態に着目し、要因として人間の性格や気質を排除しながら、より厳密な科学的方法で政治を研究することを論じている。

19世紀から20世紀にかけて成立した近代社会国民国家の研究を背景としながら、マックス・ヴェーバーは権力を社会関係の中で抵抗に逆らって自己の意志を強要する可能性として定義した。このヴェーバーの権力概念は直接的または間接的に後の研究者の研究に受け入れられ、特にシカゴ学派に属するチャールズ・メリアムハロルド・ラスウェル、国際政治学のハンス・モーゲンソウの研究などに影響を与えた。特にラスウェルは権力に関する重要な研究業績を残しており、シカゴ学派の権力理論の成果が示されている。ラスウェルの見解によれば、権力は社会のさまざまな価値と結びつけて捉えることが可能であり、ある行為の型に反した結果、重大な価値の剥奪が期待される関係として権力が定義できると考える。この権力の概念は罰金のように財産の剥奪を伴う権力だけでなく、社会的地位や名声の剥奪を伴う場合も権力として包括している。古典的な権力理論が政府組織の内部における権力関係だけではなく、ラスウェルは権力の影響が制度の外部、非公式な場面においても認められることを解明した。

他者や集団・組織に対し絶大な影響力を行使できる人のことを隠語として「実力者」ということがある。他者を服従させる何らかの特別な「力」を有している点ではこれも「権力者」の範疇に含まれるが、表舞台に立つことなく非公式に影響力を行使することから、通常の権力主体と比して可視化されにくい。そこから「影の支配者・実力者」と呼ばれることもある(いわゆる「キングメーカー」などもその一例である)。

特別権力関係

特別の公法上の原因により成立する、公権力と国民との法律関係をいう。

これは、公務員の勤務関係、国公立大学の在学関係、在監関係など、性質の異なる法律関係を、或る国民が公権力に服従するという関係として捉え、命令や強制について個別の根拠は必要とされず、さらに裁判所の司法審査権は及ばないとされていた。法治主義の下、現在においては、採用されていない。

日本国憲法の規定

行政・立法・司法の三権分立させることで均衡と抑制が図られる。また公務員の権力の濫用は戒められている。

脚注

  1. ^ a b 研究社 新和英中辞典「権力」
  2. ^ Dahl, 1957.その他の権力の定義については後述。
  3. ^ 百科事典マイペディア「権威」
  4. ^ 高畠、1984年、47頁以下。

参考文献

  • Arendt, H. 1972. On violence. in Crises of the Republic. New York: Harcourt Brace Jovanovich.
  • Aristotle. 1962. The politics of Aristotle. trans and ed. Barker, E. New York: Oxford Univ. Press.
    • アリストテレス著、山本光雄訳『政治学』岩波書店、1961年
  • Bachrach, P., and Baratz, M. 1962. Two faces of power. American Political Science Review 56:947-952.
  • Bachrach, P., Baratz M. 1970. Power and poverty. New York: Oxford Univ. Press.
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  • Barry, B. 1976. Power and political theory: Some European perspectives. London: Wiley.
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  • Cartwright, D. ed. 1959. Studies in social power. Research Center for Group Dynamics, Publication No. 6. Ann Arbor: Univ. of Michigan, Institute for Social Research.
  • Dahl, R. A. 1957. The concept of power. in Behavioral Science 2:201-215.
  • Dahl, R. 1961. Who governs? New Have: Yale Univ. Press.
    • ロバート・ダール著、川村望、高橋和宏監訳『統治するのはだれか アメリカの一都市における民主主義と権力』行人社、(1961年)1988年
  • Foucault, M. 1977. Power/Knowledge. New York: Pantheon.
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  • Hobbes, T. 1968. Leviathan. ed. C. B. Macpherson Middlesex: Harper.
    • トマス・ホッブズ著、永井道雄、宗方邦義訳『世界の名著23 リヴァイアサン』中央公論社、昭和46年
  • Hume, D. 1962. Enquiry concerning human understanding. Oxford: Clarendon Press.
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    • ラスウェル著、久保田きぬ子訳『政治 動態分析』岩波書店、1959年
  • Lukes, S. 1974. Power: A radical view. London: Macmillan.
  • Merriam, C. E. 1934. Political Power: Its Composition & Incidence. Whittlesey House.
  • Mills, C. W. 1956. The power elite. New York: Oxford Univ. Press.
    • ミルズ著、鵜飼信成、綿貫譲治訳『パワー・エリート 上下』東京大学出版会、2000年
  • Mosca, G. (1896) 1939. The ruling class. New York: McGraw-Hill.
  • Niebuhr, R. 1932. Moral man and immoral society. New York: Charles Scribner's Sons.
    • 大木英夫訳『道徳的人間と非道徳的社会』白水社、1998年
  • Polsby, N. 1980. Community power and political theory. New Heaven: Yale Univ. Press.
    • ポルスビー著、秋元律郎訳、『コミュニティの権力と政治』早稲田大学出版部、1981年
  • Poulantzas, N. 1973. Political power and social classes. London: New Left Books.
    • ニコス・プーランツァス著、田口富久治訳、山岸紘一訳『資本主義国家の構造 政治権力と社会階級 1-2』未来社、1978年
  • Parsons, T. 1969. On the concept of power. in Politics and Social Structure. New York: Free Press.
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    • ウェーバー著、浜島朗訳『権力と支配 政治社会学入門』有斐閣、1988年
    • ウェーバー著、世良晃志郎訳『支配の社会学』創文社、1962年

関連項目


政治権力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 02:52 UTC 版)

政治」の記事における「政治権力」の解説

詳細は「権力」を参照 権力とは一般に他者に対してその意志反してでも従わせることのできる能力一般的な定義与えられている。ドイツ社会学者マックス・ウェーバーは「抵抗逆らってでも自己意思貫徹するあらゆる機会」と捉えている。権力対す認識については権力生じ資源実体性から把握する方法と、権力生じ他者との関係性から把握する方法がある。フィレンツェ政治思想家ニッコロ・マキアヴェッリは政治権力は軍事力という暴力装置によって裏付けられなければならない考えており、これは権力資源実体性から権力把握するのである。またアメリカの政治学者ロバート・ダールは『誰が統治するのか?』の中で権力を「他からの働きかけなければBがしないであろうことを、AがBに行わせることが可能なとき、AはBに対して権力を持つ」という他者との関係において定式化している。そして権力集団において意思決定することで行使される考えた。この権力本質をめぐる議論から分かるように、権力概念とは論争的なものであり、権力権威暴力などの概念との関係の観点からも議論されるフランス哲学者ミシェル・フーコーの『監獄の誕生』は権力概念をめぐる議論新し観点提示したフーコー権力理論によれば近代刑罰について研究することで知識権力密接な関係を「権力と知とは相互に直接含みあう」と指摘している。つまり権力知識協同することで初め人間行動支配することが可能となるものであり、科学的な知識であっても権力無関係に独自に存在するものではないと論じた権力概念対す見解ついていくつか概観したが、いずれも政治根本的な構成要素として権力位置づけている。なぜなら、政治においてそれぞれの主体権力活用することによって目的達成することが可能となるためである。 権力機能には他者積極的な服従消極的な服従両方含まれる他者積極的な服従獲得する能力厳密に言えば権力区別して権威呼ばれるアメリカ心理学者スタンレー・ミルグラム実施したミルグラム実験が示すところによれば、教授命令に対して多く被験者自己責任及ばないために、他者に対して継続的に電気ショック危害加えることが確認できるこのような権威者対す他者服従人間の心理だけでなく、合理性観点からも理解することができる。イギリスの政治思想家トマス・ホッブズジョン・ロック政治思想によれば権威者がおらず各人自分判断勝手に行動している自然状態において、各人自己の生命財産を守るという合理的な理由基づいて政府組織構築した論じている。これは権威者に対して人々服従することによって安定した秩序もたらされる考えることができる。ウェーバーは『支配の社会学』において権力受容される理由心理的要因合理的要因とは異な観点から捉えており、正当性概念説明している。つまり人間権力働きである支配受容するさまざまな理由伝統的正当性合法的正当性、そしてカリスマ的正当性三種類に大別することが可能であると論じたいずれか正当性備えているならば、それは支配される人々にとっては服従しうるものとなる。一方で権力消極的な服従強制的に獲得する機能も持つことに着目することができる。ドイツの政治思想家カール・マルクス革命家ウラジミール・レーニン権力国家権力限定して捉え、それが支配階級であるブルジョワジーによって運営されるプロレタリアート対す暴力的な強制装置であると考えた。このマルクス主義的な権力理論によれば国家支配される国民抑圧されていると考えられる

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