安全性に関する問題
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2011年12月、フランスのポリ・アンプラン・プロテーズ(英語版)(Poly Implant Prothèse - PIP)社が製造した豊胸バッグが、体内で破れる恐れがあるとして、仏保健省は23日、使用者に対し、除去手術を受けるよう勧告した。対象はフランス国内だけで約3万人に上るとみられるが、同社の製品は日本を含む世界65カ国以上で販売され、使用者は40万人にのぼるとみられている。 PIP社はシリコーン豊胸材生産で30年以上の歴史をもつ老舗で、世界3位の大手だったが、破裂するなどの事故例が多く報告され、医療用でない安価なマットレス用のシリコーンの使用が発覚したことなどから、2010年に倒産し、清算手続き中だった。なおこれまでに同社製品での豊胸手術を受けた女性たちから2000件もの苦情申し立てが寄せられており、仏警察は同社への捜査を開始している。 同社のバッグに関しては以前から発がん性を指摘する声が出ており、バッグを使用した女性のうち8人に乳がんなどのがん発症が確認されたため、仏保健省が安全性を調査していた。その後の2011年末時点では、利用者20人が乳がんなどを発症したことが判明し、11月には未分化大細胞型リンパ腫で死亡者が出ている。グザビエ・ベルトラン保健相は「他製品と比べ発がんリスクが高いわけではない」と、急を要するわけではないと前置きしながらも、体内で破れて炎症を起こす恐れがある為、予防措置としての除去を勧告している。なお、フランス政府は、摘出手術などの費用に対し健康保険の適用を認める方針である。 また同社の製品を使った豊胸手術を受けた女性が4万2千人いるというイギリスでは、政府が「安全上の問題があるとの証拠はない」として、特に呼びかけは行わない方針を立てるなど、各国においても対応が割れている。イギリス国内のこれらの女性のうちの250人以上が、同社製品を使用し手術をした医療機関を相手取る集団訴訟の準備をしている。2千人の使用者がいるチェコやドイツは摘出手術を受けるよう勧告している。オランダでは同社の製品が「M-implants」という別名で販売・使用されていたことが発覚。オランダ当局は、この「M-implants」使用者約1000人に対しても医師に相談するよう勧めている。 国際刑事警察機構(ICPO)は2011年12月23日、中米コスタリカからの要請に応じ、PIP社創業者ジャンクロード・マス容疑者(72歳)を国際手配した。なお、ロイター通信によると、マス容疑者は2010年6月にコスタリカで飲酒運転で逮捕され、起訴後に同国から逃亡していたことが判明。国際手配は飲酒運転に関するもので、豊胸手術用シリコーン材の問題とは直接の関係はないとみられている。またマス容疑者の弁護士は、マス容疑者がフランス国内にとどまり、同国司法当局による刑事訴追に備えていることを明らかにするとともに、「PIP社製品が健康上の問題を引き起こしたとの証拠はない」と主張していると話していた。 しかし、健康被害を受けたなどとする利用者2500件以上から訴えが起こされ、南仏のマルセイユ検察は2011年12月、過失致死傷容疑で捜査に着手。マス容疑者はその後1月26日に南仏のバールで治安当局に拘束された。
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安全性に関する問題
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日本における美容外科の歴史において、美容外科が正式な医療行為であるとの認知に比較的時間がかかったのは、それが健康な身体に外科的侵襲を加える行為であるのに対して、安全性の確立が不十分であったことが一つの大きな要因としてある。 実際、初期の美容外科治療においては、豊胸術や顔の若返り術と称して、皮下に直接ゲル状のシリコンを注入し、合併症を引き起こしたり、隆鼻術と称して解剖学的に無謀なプロテーゼ(シリコン樹脂を板状に加工したもの)の挿入を試み、プロテーゼが後年に皮膚を突き破って出てくる症例などが散見された。 日本では、厚生労働大臣の許可を受けた場合のみ標榜することができる診療科は麻酔科のみであり、医師免許を有していれば、誰でも「美容外科医」を名乗ることができる。この「自由標榜制」は、世界的に見ても特異な制度である。 よって、経験の浅い医師の稚拙な技術や、ずさんな管理体制での施術により死に至ったり、機能障害の発生や、非可逆的な身体への侵襲を受けるケースも多くみられる。大手美容外科などの脂肪吸引での死亡事故や、広範囲におよび皮膚皮下組織の壊死が起こった例、豊胸手術の際の麻酔のミスで遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)になってしまうなどの医療事故、わきがの治療での麻酔による死亡など、このような医療事故は現在に至っても定期的に起こっている。 なお、国民生活センターには、現在美容医療機関での危害の報告が年間200~300件ほど寄せられている。 また保険外診療が中心の美容外科で使用される薬剤や挿入物などの安全性についても懸念されている。それらの使用物は通常、医師が自身の判断で個人輸入し使用している。ボトックスなどは未承認のものが使われるケースが9割以上であり、未承認薬は、医薬品医療機器等法に基づき販売されている承認薬に比べよりリスクが高いと厚生労働省は注意を促している。豊胸手術用の乳房インプラントに関しては厚生労働省はいずれも薬事承認しておらず、安全性に関して保障していない。 他、フィラーを注射しての「プチ整形」を巡り、後遺症や痛みが残ったなどとして訴訟に発展するケースも相次いでいる。フィラーに用いられる医薬品が未承認であることも少なくなく、専門家はトラブルに注意を呼び掛けている。
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