国際競争力
こくさい‐きょうそうりょく〔‐キヤウサウリヨク〕【国際競争力】
国際競争力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 01:24 UTC 版)
岩田規久男は「日本の法人税率が諸外国に比べて高いことは、日本企業の海外流出を促し、国内産業の空洞化の一因となる。また、海外企業の流入を妨げる一因にもなる」と指摘している。 経済学者の原田泰は「巨額の財政赤字の中で減税は難しいが、法人税減税は進めるべきである。法人はどこにでも動けるため、成功したときの取り分の多い国に行って立地する。そのような立地競争に負けないように減税する必要がある」と指摘している。 大田弘子は、法人実効税率の引き下げによる企業負担の軽減が「賃金・投資・配当に回る。高い法人税は結果的に家計にも影響を与え、日本が立地として選ばれなければ雇用減少・賃金抑制につながる」と指摘している。 伊藤元重は「日本に対する海外からの直接投資は、諸外国と比べて著しく低調である。高い法人税率だけが原因ではないが、高い税率が投資の大きな障害になっていることは明らかである」「企業が海外投資をする場合、市場の大きさ、人材、政治的な安定性、技術水準など様々な要因から判断される。法人税率だけで、立地・投資額を決めるわけではない」と指摘している。 竹中平蔵は「企業が中国などの海外での工場の立地を進める中、税制の措置だけで国内投資が増えるかというと、そう単純な話ではない。財政を考慮し、ある程度の投資減税を行うことは政策として有効である」と指摘している。 神野直彦は「日本国外の企業への調査では、対日投資の阻害要因として、高賃金、品質への厳しさ、語学能力などが指摘されており、租税負担の高さについては順位は低い。実効税率を引き下げても、工場を立地するなどの投資は進まず、乗っ取りなどの投資が生じるだけにである」と指摘している。 植草一秀は「事業活動の本拠地が海外に移転すれば、税源となる企業の生産活動の利益も海外に移転する」と指摘している。 企業の海外流出について野口悠紀雄は、 製造業が生産拠点を決める最も重要な要因は、賃金の格差であり法人税率ではない。 国際課税原則の下では、その国の企業は工場をどこに立地しようと収益をその国に持ち帰る限り、最終的にはその国の税率が適用され税負担は変わらない。 と指摘している。 スミサーズ・アンド・カンパニー(イギリス)のアンドリュー・スミサーズ(Andrew Smithers)は、日本の企業の利益率が低いのは過剰投資が原因であり、過剰な投資を減らして投資効率を高める必要があるとしている。また、日本の法人税制は減価償却費が過大に認められているため、それが内部留保を高める原因になっているとし、法人減税を行っても国家財政を悪化させるだけだと主張している。むしろ企業の貯蓄を押さえる税制を実施すれば賃金や配当が増え、結果的に税収も増えるとしている。 経営学者の加護野忠男は「最近(2012年)になって、日本企業は余剰資金を積み増している。企業のリスク投資を促すことが必要である。日本企業の投資を促すには、単純な法人税減税ではなく、投資減税を行うべきである」と指摘している。 経済学者の円居総一は「企業の内部留保や多額の対外投資は、政府が勝手に使えるものではない。なぜならそれらのほとんどが、民間のものだからである。企業の内部留保を投資に回せと言っても、政府にできるのはそれを誘導することだけである。企業の内部留保はデフレの産物であり、国内需要を喚起すれば投資に回る」と指摘している。 JETROが在日外資系企業に対して行ったアンケート調査によると、日本でビジネスを行う上での阻害要因の上位は、①人材確保の難しさ②外国語によるコミュニケーションの難しさ③ビジネスコストの高さ④行政手続の複雑さ⑤許認可制度の厳しさ、等である。③に関してはオフィス賃料や人件費や人材採用コストの高さが主要因であり税率自体は阻害要因として殊更に優先順位が高い訳ではなく、また納税に関する不満でも税率そのものではなく納税手続きに時間が掛かる事や納税制度の複雑さが問題として指摘されている。また日本から海外に生産拠点を移した日本の製造業各社に対して内閣府が実施したアンケート調査では海外移転の主な理由として、労働力コストの安さ、現地の需要拡大、現地ニーズへの対応、親会社・取引先等の進出に伴って進出、といった要因が圧倒的多数であり、現地の税制・融資等の優遇措置を理由に海外移転したとの回答は極めて少数だった。なお日本の法人税率は長年低下が続いている一方で、製造業の海外現地生産比率は長年上昇が続いている。
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