国際ろう者競技大会とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 国際ろう者競技大会の意味・解説 

デフリンピック

(国際ろう者競技大会 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/16 07:15 UTC 版)

デフリンピック
デフリンピックシンボル
開始年 夏季大会 1924年パリ
冬季大会 1949年ゼーフェルト
主催 国際ろう者スポーツ委員会
公式サイト
http://www.deaflympics.com/
テンプレートを表示

デフリンピック英語: Deaflympics)とは、おおむね4年に1回の頻度で開催されてきた聴覚障碍者のための世界規模の総合スポーツ競技大会である。大会名は「聾者(Deaf)+オリンピック(Olympics)」の造語で「聾者のオリンピック」という意味を持つ。

概要

デフリンピックには夏季大会と冬季大会が存在し、夏季大会は1924年フランスで、冬季大会は1949年オーストリアで始まった。当初の大会名は国際聾者競技大会(こくさいろうしゃきょうぎたいかい)であったが、1967年世界聾者競技大会(せかいろうしゃきょうぎたいかい、英語: World Games of the Deaf)へ名称変更された。のちに国際オリンピック委員会(IOC)の承認を得て、2001年大会より現名称が用いられている[注釈 1]

障碍者のための国際的な競技大会としては、4年ごとに開催されてきたパラリンピックが広く知られる。また、知的障碍者を対象とするスペシャルオリンピックスも存在する。

他方で聴覚障碍者は、身体障碍や知的障碍の有無にかかわらず、聴覚機能の特性により、声や音による競技者間の意思疎通を基本的に行うことができない。審判からの合図や指示も、音声主体の方法では受け取れないため、特に集団競技において、充分な聴力を有する者と比べ著しく不利となる。例えば、視覚障碍者向けの競技に見られるように、ボールに音を付して位置を把握する方式が採用される場合、聴覚障碍者はその音を利用できず、競技遂行上重大な不利益を受ける。このように、聴覚障碍者は音情報を前提とする競技設計そのものに適応しにくい特性を有するため、他の障碍とは区別した競技体系が必要とされ、独自の総合スポーツ競技大会としてデフリンピックが発展してきた。

なお、国際ろう者スポーツ委員会(ICSD、CISS)が主催する障害者スポーツの大会としては、本大会が最初に開催された[注釈 2]

デフリンピックでは、競技の公平性を確保するため、ウォームアップ中および試合中において、選手が補聴器、増幅器、人工内耳体外装置など聴覚を補助・増幅する機器を装着することは厳格に禁止されている。これら機器の使用は、音の把握を可能にする点で、使用しない選手に対して競技上の不利益を生じさせるため、国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)はルール上明確に禁止事項としている[注釈 3]

日本では、本大会に関する行政上の所管は厚生労働省に置かれていたが、競技性の向上に伴うスポーツ振興の観点から、2014年4月以降は制度所管が文部科学省へ移管されている[注釈 4]

開催地一覧

全日本聾唖連盟のデフリンピック啓発ウェブサイトより[1]

夏季大会

開催年 開催都市 開催国 参加国数 参加人数
第1回 1924年 パリ フランス 9カ国 145人
第2回 1928年 アムステルダム オランダ 10カ国 210人
第3回 1931年 ニュルンベルク ドイツ 14カ国 316人
第4回 1935年 ロンドン イギリス 12カ国 293人
第5回 1939年 ストックホルム スウェーデン 13カ国 264人
第6回 1949年 コペンハーゲン デンマーク 14カ国 405人
第7回 1953年 ブリュッセル ベルギー 16カ国 524人
第8回 1957年 ミラノ イタリア 25カ国 625人
第9回 1961年 ヘルシンキ フィンランド 24カ国 595人
第10回 1965年 ワシントン アメリカ 27カ国 697人
第11回 1969年 ベオグラード ユーゴスラビア 33カ国 1,183人
第12回 1973年 マルメ スウェーデン 32カ国 1,061人
第13回 1977年 ブカレスト ルーマニア 1,118人
第14回 1981年 ケルン 西ドイツ 1,213人
第15回 1985年 ロサンゼルス アメリカ 29カ国 1,053人
第16回 1989年 クライストチャーチ ニュージーランド 30カ国 959人
第17回 1993年 ソフィア ブルガリア 51カ国 1,705人
第18回 1997年 コペンハーゲン デンマーク 62カ国 2,068人
第19回 2001年 ローマ イタリア 71カ国 2,405人
第20回 2005年 メルボルン オーストラリア 75カ国 3,500人
第21回 2009年 台北 台湾中華台北[2] 77カ国 2,493人
第22回 2013年 ソフィア ブルガリア 70カ国[3] 2,879人
第23回 2017年 サムスン トルコ 100カ国[4] 3,148人
第24回 2022年 カシアス・ド・スル ブラジル 73か国[5] 2,412人
第25回 2025年 東京[6] 日本 81か国  3,081人

冬季大会

開催年 開催都市 開催国 参加国数 参加人数
第1回 1949年 ゼーフェルト オーストリア 5カ国 33人
第2回 1953年 オスロ ノルウェー 6カ国 53人
第3回 1955年 オーバーアマガウ 西ドイツ 7カ国 61人
第4回 1959年 モンタナ スイス 8カ国 42人
第5回 1963年 オーレ スウェーデン 58人
第6回 1967年 ベルヒテスガーデン 西ドイツ 12カ国 86人
第7回 1971年 アデルボーデン スイス 13カ国 92人
第8回 1975年 レークプラシッド アメリカ 15カ国 268人
第9回 1979年 メリベル フランス 14カ国 180人
第10回 1983年 マドンナ・ディ・カンピリオ イタリア 16カ国 191人
第11回 1987年 オスロ ノルウェー 15カ国 136人
第12回 1991年 バンフ カナダ 16カ国 294人
第13回 1995年 ウッラス フィンランド 20カ国 312人
第14回 1999年 ダボス スイス 18カ国 273人
第15回 2003年 スンツバル スウェーデン 22カ国 253人
第16回 2007年 ソルトレイクシティ アメリカ 24カ国 310人
第17回 2011年 ハイタトラス スロバキア 開催中止
第18回 2015年 ハンティ・マンシースク ロシア 27カ国 340人
第19回 2019年 ヴァルテッリーナ イタリア 32カ国 461人
第20回 2024年 エルズルム[注釈 5] トルコ 36カ国 598人
第21回 2027年 インスブルック オーストリア

競技一覧

夏季公式競技

2022年現在の公式競技は、全部で21種目である[7]

以前は、以下の競技も公式競技であった。

冬季公式競技

実施競技一覧(冬季)[7]
競技\年 49 53 55 59 63 67 71 75 79 83 87 91 95 99 03 07 15 19 23
アイスホッケー
アルペンスキー
カーリング
クロスカントリースキー
スノーボード
チェス

脚注

注釈

  1. ^ 国際オリンピック委員会が「オリンピック」という名称の使用を許可しているスポーツ競技大会は、デフリンピック(Deaflympics)のほかに、パラリンピック(Paralympics)とスペシャルオリンピックス(Special Olympics)が挙げられる。
  2. ^ パラリンピックの前身であるストーク・マンデビル競技大会の開始が1948年(第1回ローマパラリンピックとしては1960年)、スペシャルオリンピックスが1968年である。
  3. ^ 国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)「オージオグラムに関する規則」第2節「参加資格に関する規則」。日本ろうあ連盟スポーツ委員会訳 [1](https://www.jfd.or.jp/sc/deaflympics/icsd-audiogram-regulations)
  4. ^ 厚生労働省「障害者スポーツの関係施策について」[2](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sanka/sports.html)
  5. ^ 当初はカナダケベックシティーでの開催が予定されていたものの、開催を中止した。

出典

  1. ^ デフリンピックの開催年次”. 全日本ろうあ連盟. 2013年6月27日閲覧。
  2. ^ CHINESE TAIPEI - Deaflympics
  3. ^ ソフィアデフリンピック、ついに開幕”. 日本ろうあ連盟 スポーツ委員会 (2013年7月27日). 2013年7月27日閲覧。
  4. ^ 第 23 回夏季デフリンピック競技大会(概要)”. 神奈川県 スポーツ局スポーツ課 (2013年8月5日). 2017年11月28日閲覧。
  5. ^ Caxias do Sul 2022” (英語). Deaflympics.com. 国際ろう者スポーツ委員会. 2022年9月5日閲覧。
  6. ^ デフリンピックの2025年夏季大会 東京で開催が決定 日本初”. 東京新聞 (2022年9月10日). 2022年9月10日閲覧。
  7. ^ a b Sports”. Deaflympics.com. 国際ろう者スポーツ委員会. 2022年9月5日閲覧。

関連項目

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「国際ろう者競技大会」の関連用語

国際ろう者競技大会のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



国際ろう者競技大会のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのデフリンピック (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS