各種杭工法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 10:09 UTC 版)
杭工法は木杭・小口径鋼管杭・既製コンクリート杭等の旧来から用いられたもの、その他の地盤補強会社各社が開発したものなど、特に戸建住宅(いわゆる小規模建築物)向けのものが数多く提案されている。 木杭 松杭は紀元前から用いられた。杭体が常時地下水位面以下であれば、腐る事なく上載荷重を支え続ける。旧丸ビル(丸ノ内ビルヂング)も松杭で支えられていた。 小口径鋼管杭 支持地盤が浅めであれば、柱状地盤改良と同等かやや高めの経費で大きな支持力を発揮する。鋼管の厚みが6mm以上であれば、自治体による安息角の審査にも対応できる。また、地盤液状化が起こったとしても、大きな側方流動が発生しない限り影響を受けない。杭として支持力を算定するが、戸建住宅に適用される小口径鋼管杭は厳密には「杭工事」としてではなく「地盤補強工事」として施工されている。 既製コンクリート杭【PCパイル・RCパイル】 既製コンクリート杭を専用の施工機で、杭の頭部に圧力を加えて地中に杭を圧入して、杭先端の支持力と周面の摩擦力によって建物荷重を支持させる工法である。PC(プレストレストコンクリート)杭・RC(鉄筋コンクリート)杭などがある。以前は、小規模建築物にはあまり採用されていなかったが、コンクリート2次製品業界が新規事業のひとつとして、住宅用PC杭の供給に参入し、需要拡大によりPC杭のコストが徐々に下がってきた。その為、最近は、軟弱地盤の補強対策工法として一般住宅や集合住宅にも多く採用されている。PC杭は、認定工場で製造される既製コンクリート杭で、高強度コンクリートで製造され、PC鋼より線を入れて補強されている為、衝撃や曲げにも強い。PC杭は、深層混合処理工法(柱状地盤改良工法)では、固化不良のおそれのある、腐植土層や地下水の有る軟弱地盤の補強工事に多く採用されている。杭の断面は、円筒形・H型・八角形・三角形・四角形等の形状がある。最近は、H型PC杭が良く使用されており、200㎜×200㎜の断面で、杭長は2.5m~(0.5mずつ長くなり)10.0mであるが、運送や施工の都合上、2.5m~7.5mが用いられる。支持地盤が深い場合は杭を継ぎ、長さ17.5mまで対応できる。支持地盤の深さが、2.0m~17.5mの幅広い範囲で使える。専用の施工機で施工を行い、あらかじめマーキングされたポイントにオーガを置き、オーガを回転させて必要な深さまで穴を開ける。逆回転してオーガを抜く為、残土が非常に少ない。次に、打設するPC杭をワイヤーで吊り込み、PC杭を穴に差し込み、水準器で鉛直確認をして、施工機の油圧で圧入を行う。全本数の貫入量を測定する為、杭の打設の深さが全て確認できる。又、施工機に搭載された管理装置により、打設されたPC杭の全本数の圧入力(支持力)が確認できる。打設後は、基礎形状に合わせて、専用のカッターで杭頭をカットする。工期の目安は、建築面積50~70㎡で約2日(打設1日・杭カット1日)。PC杭は、深層混合処理工法(柱状地盤改良工法)の改良体のように固化するまでの養生期間が不要な為、施工完了後、直ちに基礎工事を行う事が出来る。杭として支持力を算定するが、戸建住宅に適用されるPC杭は厳密には「杭工事」としてではなく「地盤補強工事」として施工されている。杭の設計は、ボーリング調査または、オートマチックラムサウンディング試験等で確認して行うことになっているが、ボーリング調査等の費用が高額な為に、PC杭工法は一般住宅の地盤補強工事に採用されにくかった。しかし、最近では、建築技術性能証明を取得したPC杭工法が有り、スウェーデン式サウンディング試験(調査料が廉価)で行う地盤調査の結果より杭の設計が出来るようになった為、一般住宅や集合住宅等の地盤補強工事として採用されている。支持地盤までPC杭を打設する場合は、液状化対策工法としても期待できる。 その他の民間各社開発の杭工法 天然砕石パイル工法については以下のようなものがある。 HySPEED工法(ハイスピード工法) HySPEED工法は、天然の砕石で地盤に砕石パイル(砕石杭)を造ることによって、軟弱地盤を強い地盤に変え建物をしっかり支え、地震時の液状化から地盤を守る工法である。 スクリュー・プレス工法 スクリュー・プレス工法は下記の優れた特徴を持った砕石パイル築造工法である。1)掘削時に、排土はせず周囲を圧密して穴を作る為、スクリュー体積分の土が周囲を圧密し、周囲の地盤強度が上昇する。 2)掘削時に排土しない為、残土処分費用がかからず、その費用分だけ製造費用を減らすことができる。 3)4m掘削が、2分程度と施工速度が速く、工期を短くすることができる。 4)特殊スクリューにて、4mまで連続圧密削孔が可能で、削孔中に下端より加圧エアーを送気することにより、圧気工法の原理で地下水を排除することが可能であるから、滞水砂層をケーシング無しで掘削可能であり、非常に低コストな液状化対策工事の施工が可能である。 アクパド工法(地盤安心造工法) 液状化対策において唯一特許を取得している工法で、専用の重機を使い砕石と水を組み合わせることによって、軟弱な地盤を強固な地盤に改良することが可能。 エコジオ工法(砕石による地盤改良) 専用のケーシング(鉄の筒)を用いることで、掘削した穴の壁面崩壊を防ぎ、高品質な砕石パイルを構築出来る工法である。 現在は主に住宅で使われており、ほとんどの場合、残土を排出せずに施工できる。 将来、返還が必要な借地へ建設するコンビニなどの地盤改良としても利用されている。
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