各種校訂本での大島本の採用状況
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「大島本」の記事における「各種校訂本での大島本の採用状況」の解説
校訂本において基本的に大島本を底本とするものは多いが、全ての帖においてではない。大島本が採用されない巻は、大きく分けて 定家自筆本がある巻(花散里、行幸、柏木、早蕨)や明融臨模本がある巻(桐壺、帚木、花宴、若菜上下、柏木、橋姫、浮舟)など大島本より、青表紙本系統の本文系譜上、優位にあると考えられる写本がある巻 大島本が欠けている(浮舟)、補写である(桐壺、夢浮橋)、本文が青表紙本でないとされる(初音)など、大島本が問題があるとされる巻 に分けられる。後者を補充するものとして、しばしば池田本が用いられてきた。 大島本には大量の補訂が存在するため、底本に採用する際に「当初書かれたままの本文」を採用するのかそれとも「訂正された本文」を採用するのかの問題が残ることは、源氏物語大成以降も同じである。 現代の学術的な校訂本での大島本の採用状況を示す。 源氏物語大成 中央公論社 池田亀鑑編 1953年(昭和28年)-1954年(昭和29年)下記を除く47帖 桐壺、夢浮橋、初音、浮舟は池田本 花散里、柏木、早蕨は定家自筆本 源氏物語評釈 角川書店 玉上琢弥編 1964年(昭和39年)-1968年(昭和43年)下記を除く42帖 花散里、行幸、柏木、早蕨は定家自筆本 桐壺、帚木、花宴、若菜上下、橋姫、浮舟は明融本 初音は池田本 日本古典文学全集 小学館 1970年(昭和45年)-1976年(昭和51年)下記を除く51帖 桐壺、浮舟は明融本 初音は陽明文庫本 新潮日本古典集成 新潮社 1976年(昭和51年)-1985年(昭和60年)下記を除く41帖 花散里、行幸、柏木、早蕨は定家自筆本 桐壺、帚木、花宴、若菜上下、橋姫、浮舟は明融本 初音は池田本 手習は為氏本 完訳日本の古典 小学館 1983年(昭和58年)下記を除く42帖 花散里、行幸、柏木、早蕨は定家自筆本 桐壺、帚木、花宴、若菜上下、浮舟は明融本 初音、夢浮橋は池田本 新日本古典文学大系 岩波書店 佐竹昭広編 1993年(平成5年)-1997年(平成9年)浮舟を除く53帖 浮舟は明融本 新編日本古典文学全集 小学館 1994年(平成6年)-1998年(平成10年)下記を除く41帖 花散里、行幸、柏木、早蕨は定家自筆本 桐壺、帚木、花宴、若菜上下、橋姫、浮舟は明融本 初音、夢浮橋は池田本 上記をまとめると以下の表のようになる。なお、池田亀鑑による日本古典全書版源氏物語(朝日新聞社)は校異源氏物語=源氏物語大成とほぼ同じ方針で底本を採用していると見られる(但しその後に見いだされた明融本にされているものもあると見られる)ものの、巻ごとの底本を明らかにしていないためこの表には掲載していない。 巻序 巻名 大成 評釈 全集 集成 完訳 新大系 新全集 備考 出版社 中央公論社 角川書店 小学館 新潮社 小学館 岩波書店 小学館 出版時期 1942年 1964年-1968年 1970年-1976年 1976年-1985年 1983年 1993年-1997年 1994年-1998年 主な編者 池田亀鑑 玉上琢弥 阿部秋生 石田穣二 阿部秋生 室伏信助 阿部秋生 大島本採用帖数 47帖 42帖 51帖 41帖 42帖 53帖 41帖 1 桐壺 池田本 明融本 明融本 明融本 明融本 大島本 明融本 大島本補写・明融臨模本あり 2 帚木 大島本 明融本 大島本 明融本 明融本 大島本 明融本 明融臨模本あり 3 - 7 空蝉 -紅葉賀 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 8 花宴 大島本 明融本 大島本 明融本 明融本 大島本 明融本 明融臨模本あり 9, 10 葵、賢木 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 11 花散里 定家本 定家本 大島本 定家本 定家本 大島本 定家本 定家本あり 12 - 22 須磨 - 玉鬘 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 23 初音 池田本 池田本 陽明文庫本 池田本 大島本 大島本 池田本 大島本が別本 24 - 27 胡蝶 -篝火 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 28 野分 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 定家本 定家本あり 29 行幸 大島本 定家本 大島本 定家本 定家本 大島本 大島本 定家本あり 30 - 33 藤袴 - 藤裏葉 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 34 若菜上 大島本 明融本 大島本 明融本 明融本 大島本 明融本 明融臨模本あり 35 若菜下 大島本 明融本 大島本 明融本 明融本 大島本 明融本 明融臨模本あり 36 柏木 定家本 定家本 大島本 定家本 定家本 大島本 定家本 定家本、明融臨模本ともにあり 37 - 44 横笛 -竹河 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 45 橋姫 大島本 明融本 大島本 明融本 大島本 大島本 明融本 明融臨模本あり 46, 47 椎本、総角 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 48 早蕨 定家本 定家本 大島本 定家本 定家本 大島本 定家本 定家本あり 49, 50 宿木、東屋 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 51 浮舟 池田本 明融本 明融本 明融本 明融本 明融本 明融本 大島本欠・明融臨模本あり 52 蜻蛉 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 53 手習 大島本 大島本 大島本 為氏本 大島本 大島本 大島本 大島本の本文に問題があるともされる。 54 夢浮橋 池田本 大島本 大島本 大島本 大島本 大島本 池田本 大島本が補写とされる 1999年(平成11年)に出版された『CD-ROM 角川古典大観 源氏物語』(角川文庫)においては、代表的な青表紙本の本文を持つとされる写本である大島本、代表的な河内本の本文を持つとされる写本である尾州家河内本、代表的な別本の本文を持つとされる写本である陽明文庫本と保坂本の本文が電子データで収録されており、これら4写本の本文を、同時に並べて比較できるようになっている なお、別本を主体とする校本である『源氏物語別本集成』(おうふう)においては「別本としての本文の位置づけを明らかにする」ために代表的な青表紙本について全帖にわたって対校しているが、その際「代表的な青表紙本」として、浮舟を除いた若紫巻から夢浮橋巻までの49帖については大島本を使用している。(残りの5帖は、臨模本以外も含む明融本を使用している。)
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