他社、他メディアへの波及
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/07 08:38 UTC 版)
「実録シリーズ」の記事における「他社、他メディアへの波及」の解説
日活ロマンポルノも東映の「実録路線」に対抗して、1973年下半期の大攻勢として「ロマン・ポルノ」「アクション・ポルノ」「実録・ポルノ」「ドキュメント・ポルノ」の四本柱を打ち出し、1974年から"実録ポルノシリーズ"を始め、『実録エロ事師たち』や『OL日記 濡れた札束』『実録ジプシー・ローズ』などを製作した。鈴木義昭は「ピンク映画も、実は東映実録路線の影響を受けている。高橋伴明とか中村幻児の世代はね。『仁義の墓場』で渡哲也が骨をかじるシーンを置き換えたのが『日本の拷問』の日野繭子です。実録路線と相互乗り入れしていたのが日活ロマンポルノです。スタートの『団地妻 昼下りの情事』からして実録的要素があるからね。『一条さゆり 濡れた欲情』なんて本人が出てくる実録(笑)、刑法175条に引っかかる犯罪映画。『実録ジプシー・ローズ』とか『実録桐かおる』とかいっぱいあったね。東映実録路線は、ある意味みんな犯罪映画。東映実録路線で戦後史を勉強したから、だいぶ偏っちゃった(笑)。山口組ってスゲエみたいな映画ばっかりだったから。自分らの時代って、子どもの頃、浅草辺りでも発砲事件があって、やくざって凄くある意味身近だった」などと述べている。 映画各社からも実録の方がフィクションより興行力があるという認識が持たれ、「実録」を掲げることが一種の流行になり、容易にこれを冠した作品もあらわれるようになった。また洋画配給会社も実録風の映画を買い付けたり、実録風の宣伝を取り入れたりすることも増えた。『週刊文春』1973年3月12日号では「安上がりな"実録"に力を入れこむ邦画界」という記事が載り、「戸田城聖、北一輝、玉本敏雄といえば、なにを連想するかネ?さて、三人とも日蓮宗信者?いや、映画のモデルなんだ。東宝の『人間革命』、ATGで『戒厳令』、日活が『性豪列伝 チェンマイの幼な妻』てナ調子。そういえば松竹でも、北海道・十勝の"ワイン町長"の伝記を『喜劇・怪物町長』のタイトルで映画化するとか。"実録路線"のトップをきったのは東映。田中角栄がモデルの拒否でボツになったのにコリず、『仁義なき戦い』を作ってバカ当り。『マスコミで騒がれた事件や人物はなんでもかんでも映画にしてしまえ』とサ。自社の俳優・安藤昇の"実録"まで作ってる。早いハナシがヤクザ映画なんだがね。大阪で殺された16歳のクラブ・ホステスも『ネオンくらげ』で"やる"そう。原作料もいらず、ウルサイ俳優も使わず、一般募集で似てるのを見つけてくりゃいいんだから、実録映画ただもうけみたいなもんだ。日本ばかりでなく、海のむこうでも実録・伝記映画が大流行。アレック・ギネスのヒットラー『アドルフ・ヒトラー 最後の10日間(英語版)』、オーソン・ウェルズのチャーチル、リチャード・バートン、リズ・テイラー夫妻のムッソリーニ伝などなど。しかし、映画にされてウレシがってる人はいいが、『ネオンくらげ』のモデルの遺族は気の毒だねえ。近く日本でも公開される『ビリー・ホリディ物語』(『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実)』)では、モデルの黒人女性歌手ビリーの遺族に、遊んで暮らしてゆけるだけの年金が支払われたそうだ。ゴタゴタがおきれば、話題になってなお結構、というのが普通だがねえ。"実録"もいいが、あとで『実録・人権じゅうりん』て番外作がつくのはゴメンだ」と書かれた。『ネオンくらげ』は内藤誠のオリジナル脚本で"実録もの"という認識を持たれていないが、当初の企画は"実録もの"だったのある。また同年4月には「オレがOKしなきゃ撮らせない」と、全ての企画を岡田自身が決定する陣頭指揮を宣言したが、実録ものの新方針第一弾が千葉真一主演の『ルバング島の奇跡 陸軍中野学校』で、これは東映の太田浩児プロデューサーが1973年に実録物の一つとして『実録・陸軍中野学校』というタイトルで企画を提出し製作が決まっていたが、1973年の4月に陸軍中野学校出身の小野田寛郎の救出が不成功に終わり製作が延期された。しかし1974年の小野田の発見で、岡田の新方針により急遽企画が復活、製作が決定した。このように東映は実録ヤクザ映画を量産した時期に、ヤクザでない実録映画も多少作った。 藤木TDCは「東映が山口組とつるんで実録映画を作り出したとき、東映に警察が入って『止めろ』って言った後、実録犯罪映画が増えました。昭和の時代は実録映画や犯罪映画の全盛期でしたね。ピンク映画でも実録犯罪ものがいっぱい作られましたし、『連続23人強姦魔』とか、『若妻人質性拷問』とか『誘拐密室暴行』とか『TATTOO<刺青>あり』や『冷血』とかね。『海燕ジョーの奇跡』とか『南へ走れ、海の道を!』とか、やくざ映画をそのまま撮れないから青春映画っぽく撮る映画も出来た。映画は実録的要素がどんどん増えました。2010年代も流行ってますよ、『冷たい熱帯魚』とか『凶悪』とか、テレビドラマだと『黒い看護婦』とかね。今は人権問題が厳しいから昔とはタッチが違うけど。1980年代のアイドル映画時代にもアイドルの実録みたいなのが出てきましたね。セイントフォーの『ザ・オーディション』なんて芸能界の実録の隠れた傑作です。単なるアイドル映画とは明らかに一線を画しているけど、今は公開できないんじゃないかな。吉川晃司の『すかんぴんウォーク』も芸能界の裏側を描いています」などと論じている。 テレビの番組タイトルで"実録"というタイトルが付けられた最初が何だったかは分からないが、2019年12月27日には『実録!金の事件簿8 年末最後の戦いSP』(フジテレビ)と『実録!解決ファイル★婚活アプリで女性から金盗む男にフット後藤&ミキ・粗品が驚愕』(TBS)という、キー局のプライムタイムで同じ時間帯の二つの番組タイトルに"実録"というタイトルが冠された。 映画監督の市川徹が最初に発案したとされる。
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