京大で触れた愛蘭戯曲とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 京大で触れた愛蘭戯曲の意味・解説 

京大で触れた愛蘭戯曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 02:33 UTC 版)

屋上の狂人」の記事における「京大で触れた愛蘭戯曲」の解説

1913年大正2年4月同級友人佐野文夫身代りとなって第一高等学校第一部乙類退学となった菊池寛は(詳細は「マント事件」を参照)、同校友人成瀬正一助け舟彼の家に寄宿しながら学資援助も受け、同年9月京都帝国大学英文科選科進学した翌年からは本科)。菊池成瀬一高友人たちが進む東京帝国大学文科自分行きたかったが、文科学長の上萬年認可下りず叶わなかった。 一高文芸第一主義比べて京大文学的には〈いなか〉であり、ことに1年生の頃の菊池選科生であることに屈辱孤独感じていた。京大には芥川龍之介久米正雄のような文学について意見交換できる刺激的なライバルの友もいなかった 東京にいる友人たちから1人だけ取り残されたような焦燥感孤独紛らわすため、入学当初から菊池研究室図書館入り浸って内外様々な読書熱中した京大研究室には東大よりも近代文学に関する書物豊富だった。そのため菊池東京にいた時よりも〈二倍三倍多くの本〉を読むことが出来た以前から興味持っていたイギリス文学江戸文学のほか、菊池同校教授の上田敏から聞いたジョン・ミリントン・シング強く惹かれ、他にもロード・ダンセイニオーガスタ・グレゴリーなどのアイルランド愛蘭戯曲のほとんどを読破した。 私は研究室にあつた脚本は、大抵読んだ。それは、東京文科図書室などには決してない新しいものばかりだつた。それが、京都大学にゐた第一収穫だつた。 — 菊池寛「半自叙伝アイルランド戯曲傾倒した菊池は、〈愛蘭アイルランド)人の民族的覚醒〉を築いたウィリアム・バトラー・イェイツシンググレゴリーなどの〈郷土芸術〉に注目し、彼らの〈愛蘭土国民文学運動〉である「アイルランド文芸復興運動」をモデルに、京都ダブリン重ねて京都芸術復興ルネッサンス)〉を、「太郎名義で『中外日報』で呼びかけたこともあった。 菊池は、欧州各国の中で一番日本似ているのはアイルランドだと感じ外国の中でアイルランドを最も好きになった。ケルト民族アイルランドは、アングロサクソンイギリスとは人種歴史伝統異なる〈全く違つた別な国〉であり〈英文学愛蘭土文学とは豌豆真珠のやうに違つたもの〉だと菊池比較した上で、〈欧州人種の中で「物のあはれ」を知る国民は唯ケルト人〉だけだとしている。 愛蘭土凡ての点に於て日本そつくりである。愛蘭土戯曲出て来人物は孰づれも初対面とは思はれぬ程、日本人には馴染みの人達である。(中略愛蘭土戯曲出て来母親欧州戯曲に見るやうな自我的(イゴチスチック)な母親ではなくて、常に自分以外の人の事のみを心配して居る優しい母親である、兄弟喧嘩日本そつくりのものである。 — 菊池寛シング愛蘭土思想日本人似た感情動き自然崇拝観を持つアイルランド人中でも真に愛蘭土の生活を語り真に愛蘭土思想を語るもの〉はシングであり、シングアイルランド劇作家の中で〈最も天才的世界的な劇作家〉だとする菊池は、シング芸術第一特徴を、〈彼の作物には自然主義抒情主義乃至はロマンチシズム微妙な混合示して居る事〉だとしている。 また、菊池は〈シング人生戯曲成分掴み取る事を解した真正戯曲家〉だとして、真実同時に歓喜ジョイ)を重んじたシング戯曲は、英国戯曲のような旧道徳の〈かび臭〉や新道徳の〈ペンキ悪臭〉とは無縁だ論じ道徳主義から自由なだけでなく、なおかつ象徴主義からも自由で離れた作風であるとして、シングへの傾倒をみせている。 シング人物鋳掛師でも漁夫でも皆詩人であつてその台詞は皆詩である、がその言葉不自然に嫌味にも響かない、之は愛蘭土生れシング特権である、此事はシング自身認めて居る、(中略シング好んで醜悪な人生をも題材とする。そしてその醜悪な内から美を漁らうとする、彼の戯曲は美と醜との配列である。(中略)が、シング大名成した所以は彼が愛蘭土的である為ではなくして、今迄誰人もが探究しなかつた人間性のある方面描き出して居る為である事は無論である。 — 菊池寛シング論」 シングアラン諸島イニシュマーン島英語版)に住みアラン諸島風光民衆から創作題材得たが、そのシングの『聖者の泉』(The Well of the Saints)や『海に騎りゆく者たち』(Riders to the Sea)などから作劇上の暗示受けた菊池は、自身故郷であり地方色豊かな讃岐香川県)を舞台にした『屋上の狂人』や、土佐高知県)の佐田岬に近い海岸舞台にした『海の勇者』を書き上げた

※この「京大で触れた愛蘭戯曲」の解説は、「屋上の狂人」の解説の一部です。
「京大で触れた愛蘭戯曲」を含む「屋上の狂人」の記事については、「屋上の狂人」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「京大で触れた愛蘭戯曲」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

京大で触れた愛蘭戯曲のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



京大で触れた愛蘭戯曲のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの屋上の狂人 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS