主要な手法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:21 UTC 版)
直接法 制限に対して直接外力を加えることにより、可動性を正常に回復する方法である。そのように制限に対して直接アプローチすることから直接法と呼ばれる。てこの原理を応用して行う方法(力点と作用点間の長さにより短てこ法と長てこ法に分類)、瞬間に圧力を入れて行う高速低振幅法(スラスト法)、日本では古賀正秀が始めたので古賀技法とも呼ばれている、メンネルM.Dが始めた短い振幅を連続的に与える方法などがある。短時間で効果を現すが、解剖学的な要素や生理学的限界を感知せずに行うと、過誤を起こしやすい。 間接法 制限のない方法、すなわちオステオパシーで言う機能障害の方向に動かしていく。この手法では、機能障害を誇張させることによって脳神経にその状態を把握させ正常な状態に戻す信号を出すようにさせる。緩やかな手技が多く人体に過剰な刺激を与えないが、正確な手技を行わないと効果を得にくい。 ストレイン&カウンターストレイン 緊張した筋と拮抗的な位置にある筋との間にアンバランスが生じると、痛みが生じる。ストレイン&カウンターストレインは、緊張した筋肉を見つけるために圧痛点Tender Point(発痛点Trigger Pointではない)を探し、その点をモニターしながら緊張部位を最大限にゆるめた位置で90秒程度維持し、緊張した筋肉と拮抗的な筋肉のバランスを取ることにより、痛みから解放させるもの。アメリカのローレンス・ジョーンズD.Oが開発した手法で大変普及している手法ではあるが、Tender Pointを捜すために優れた触診力が必要であり、また、最も筋が緊張をゆるめる位置を捜す触診力と解剖学的知識が必要である。この手法は名称がアメリカ・日本などで商標登録されているため、理学療法ではポジショナルリリースセラピーという名称で行われることがある。 筋・筋膜リリース 筋膜の緊張に対して、引き延ばすように直接法を行ったり、あるいは収縮させるように間接法的に行ったりしてバランスを整える手法であり、本来はマッサージの技法のひとつ。 筋エネルギー法 患者の力を利用しその力に抵抗しながら筋肉を収縮させ、筋や関節の動きを改善する方法。患者の体力にあわせて行えるため危険性の少ない手法である。 スティルテクニック ヴァン・バスカーフD.Oが、種々の資料を基にオステオパシー創始者であるスティル博士のテクニックを再現したテクニック。関節の解剖学的構造を考え、直接法と間接法の両方を特徴を持つ技法である。 頭蓋オステオパシー(クラニオセイクラルセラピー、クラニアル) ウィリアム・G・サザーランドが開発した治療法。硬膜に緊張があったり頭蓋骨に動きの制限があると脳脊髄液の流れに不調が現れ、その結果全身の神経機能に影響を及ぼし、身体機能が不調に陥る。また硬膜は大孔、第2頚椎、第2仙椎と連続性が見られ、頭蓋の動きの不調すなわち硬膜の緊張は、脊柱全体に影響を及ぼす。頭蓋オステオパシーでは、頭蓋・硬膜の変調を触診で見いだし調整することにより全身状態を改善させる。技術のない人が行うと効果がないばかりか、めまいや吐き気、頭痛、倦怠感、集中力欠如、うつ、様々な痛みなどをおこす可能性もある。この頭蓋オステオパシーを簡略化し家庭でも行えるようにしたのが、アプレジャー博士の頭蓋仙骨療法である。また、サザーランドの手技はSOTなどカイロプラクティック等にも影響を与えた。 靱帯性関節ストレイン法 頭蓋オステオパシーを開発したサザーランド博士、創始者のスティル博士に緒を発するといわれている。呼吸を応用する手法や間接法を主に直接法も含まれている。 内臓マニピュレーション フランスのジャン ピエール バラルD.O.、MRO (F)が始めた手法。内臓には呼吸に伴う動きと自発的な動きがあるが、それらを調整することにより内臓を円滑な機能にさせる。 誇張法 斉藤巳乗MRO(J)が創始した手法できわめて弱い力で機能障害を誇張し改善させる。時には、特に四肢においては直接法的にも行う。 クラシカルオステオパシー アメリカにおいては、オステオパシーの歴史の中でさまざまな手法が開発されていったのに対し、イギリスでは、スティルに学んだリトルジョンが持ち帰った古典的な手法を今に伝えている。また、原則に従いながら様々な研究も行われより効果的なものが伝えられている。スティルは徹底して解剖学を重視し、リトルジョンは生理学的な考えのもとでの治療も必要であることを主張した。両者とも解剖学と生理学は相互に関係性を持っていることは十分に理解していた事は、間違いのない事実である。それはスティルの四大原則からもうかがえる。このイギリスで行われるオステオパシーの手法を、古典的手法を現代に伝えたものとして、一般的にクラシカルオステオパシーと呼ぶ。スティルによって提唱された四大原則(1.身体には自己治癒力と自己調節の機能が備わっている 2.構造(解剖学)と機能(生理学)は相互に関係がある 3.身体は肉体、精神(魂)が全体として働くひとつのユニットである 4、これらに基づいて合理的な治療を行う)を忠実に遵守し、オステオパシー本来の源流を汲むものである。 FDM 1991年にスティーブン・ティパルドスD.O.が創始した手技療法。FDM(Fascial Distortion Model、ファッシャルディストーションモデル、旧オーソパシックメディスン)とは、“筋膜歪曲様式”と訳すことが出来る。急性損傷や慢性疾患を、人体を構成する組織に生じた変化と捉え、それを手技による矯正技術により直接的に元の状態に戻す画期的な療法である。FDMでは、損傷は人体組織に発生する6種類の変化のうち、1つ、あるいは複数の組み合わせから構成されると定義されている。今現在、日本、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、アフリカに協会があり、その全てを統括するFDM国際連合(FDM-GO)の代表は田中啓介FDM.O。 ※ここで言う“組織”とは、腱、靭帯、筋支帯、筋膜バンド、癒着、そして周囲を取り囲む他の組織、骨、神経、器官などを構成する、人体の主要な結合組織を意味している。
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