世界の高速鉄道の最高速度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 11:18 UTC 版)
世界初の210 km/h運転を達成した新幹線の成功は、欧米各国に影響を及ぼした。鉄道先進国を自負していたフランスは、1967年5月28日よりパリ - トゥールーズ間の列車「ル・キャピトール」を欧州において初めて一部区間で200 km/hで運転し、その後も複数の列車を200 km/hで運行していた。新幹線の開業後、1981年に本格的な超高速列車TGVを開発し、営業最高速度260 km/hというスピード世界一を達成し、新幹線の記録を凌駕した。 その他、ドイツ (ICE) やイタリア(ディレッティシマ)でも高速列車が計画され、実現に移された。イタリアのディレッティシマは欧州初の高速新線であり、1970年に工事が始まり、1978年に部分開業を迎え、1983年に250 km/h運転を開始したものの、その後の整備で仏独に遅れを取り、全線が開業したのは1992年である。 スペインでは、当初はイベリア軌間の在来線を高速化させる計画で進めていたが、1986年に同国が欧州諸共同体 (EC) へ加盟したのちに標準軌の高速新線を導入する計画へ方針転換。この一連の流れにおいては日本企業が車両の導入に大きな努力をしており、技術面において非常に高い評価を得ていたが、同国の欧州諸共同体への加盟や同国への投資額、同国内の経営不振企業の救済計画などに代表される政治的な問題からフランスのTGV方式の高速列車を採用することとなり、この時点での日本の新幹線方式の車両の導入は幻となった。 ロシアの高速列車ソコルは1997年、ドイツ鉄道の技術支援を受け、モスクワ - サンクトペテルブルク間654 kmを営業最高速度250 km/hで結んだことにより、所要時間が、4時間20分から2時間30分に短縮された。 なお、すでに標準軌の鉄道網が整備されているこれらの国では、駅周辺は従来の路線をそのまま使用し、郊外区間では諸条件によって高速新線建設と在来線改良を使い分けることが多く、全線を新線として建設する新幹線とは異なっている。 走行試験を除く営業運転速度は、2019年4月現在、中国高速鉄道のCR400系(京滬高速鉄道と京津都市間鉄道)の 350 km/hが世界最速である。新幹線E5系やフランスTGV (320 km/h) などがそれに続く。大韓民国(韓国)では2004年にフランスのTGV方式の韓国高速鉄道 (KTX) が300 km/hで開業し、台湾では2007年に日本の新幹線方式(一部仏独の技術を導入)の台湾高速鉄道が300 km/hで開業した。 TGVは360 km/hへの速度向上を計画している。2007年後半からフランスのTGV方式を採用したスペインのAVEは、マドリード - バルセロナ間630 kmの新線で、ドイツのICEの技術に使われているシーメンス製の Velaro E という列車を使い350 km/hで運転する計画がある。実現すれば、マドリード - バルセロナ間は2時間30分に短縮される。さらにロシアやベトナムでも新幹線をモデルにした最高速度350 km/hの高速鉄道建設が計画されている。 浮上式鉄道を含めた2015年4月時点における世界最速の旅客営業鉄道路線は、2003年にドイツの技術によって開業した、中国・上海浦東国際空港へのアクセス路線である上海トランスラピッドで、その最高速度は430 km/hである。走行試験も含めた鉄道における最高速度の世界一は、日本のL0系が2015年4月に山梨リニア実験線で記録した603 km/h。浮上式鉄道を除くとフランスTGVの高速試験車V150編成が記録した574.8 km/hである(日本の非浮上式鉄道の最高記録はJR東海の300Xによって達成された443 km/hで世界第3位)。 東海道新幹線は建設時期が古く、カーブなどの線路状況が200 km/h台の設計になっている。より新しい山陽新幹線・東北新幹線などもフランスやドイツなどと比較すると山岳区間が多く、路線の起伏やカーブの設計などにおいて高速化を妨げる点が多い。特に後者は上越新幹線とともに寒冷地の耐寒・耐雪装備が不可欠であり、重量的に不利である。また沿線に住宅地が多いため、騒音への対策も必要となるなど、300 km/h以上の運転には課題が多い。 しかし、JR東海・JR西日本は2007年より山陽新幹線で500系と同じ最高速度300 km/h、東海道新幹線でも従来の車両では255 km/hまで減速する必要のあった半径2,500 mのカーブを、車体傾斜装置を搭載することで270 km/hで通過できるN700系の導入を開始した。さらに改良型となるN700系1000番台(通称「N700A」)の製造及びN700系からの同仕様への改造により、東海道新幹線で285 km/hでの営業運転を2015年3月14日より開始した。これにより、半径2,500mのカーブを、275 km/hで通過するようになった。また、JR東日本は2004年から360 km/h走行を前提とした試験車両(E954・E955形)を開発し、2009年からはE954形をベースとして320 km/hでの走行を前提にしたE5系を製造、新青森延伸後の2011年3月5日に300 km/hで営業を開始し、2013年3月16日より320 km/hでの営業運転を開始した。 かつて、JR東海は東海道新幹線の一部区間で、当時の営業最高速度270 km/hから330 km/hに引き上げることを検討していた。330 km/hでの走行は京都 - 米原間の直線が長い一部区間を対象に、N700系を使用し、前方に待機列車がなく性能を存分に発揮できる「のぞみ」の始発、終発に限定して行う計画であった。 また近年、速度向上の動きが顕著である。JR東日本はE954形-E5系の開発時に断念した360km/hでの営業運転について再度挑戦すべく、試験車両E956形を用いて走行試験を開始した。また、JR北海道は建設中の新函館北斗駅 - 札幌駅間について、整備新幹線としては初となる320km/hで営業運転するための追加工事を行うことを発表した。さらに、JR東海はN700Sにて営業用車両としては国内最速である363km/hを記録した(この速度で営業運転するためではなく、国内外に高い走行性能を示す目的)。
※この「世界の高速鉄道の最高速度」の解説は、「新幹線」の解説の一部です。
「世界の高速鉄道の最高速度」を含む「新幹線」の記事については、「新幹線」の概要を参照ください。
- 世界の高速鉄道の最高速度のページへのリンク