コルト社以外の米国製のガバメントモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 00:56 UTC 版)
「M1911」の記事における「コルト社以外の米国製のガバメントモデル」の解説
製品特許が1986年に保護期限切れで失効して以後、各社がこぞってガバメントモデルを製作している。スミス&ウェッソン、スプリングフィールド・アーモリー、ウィルソンなどが代表的なメーカーである。STIとSV、パラ・オードナンスは、多弾装モデルで有名なメーカーで、キンバー社製のものはロサンゼルス市警察SWATに採用されたことでも知られる。ちなみに、本国アメリカでは一般的に、ガバメントモデルのコピーモデルを「ナインティーン・イレブン(1911)」と呼ぶ。 AMT オートマグシリーズ AMT社が44オートマグの後継機種として発売した自動拳銃のシリーズ。初代オートマグはガバメントとは全く無関係な銃であるが、オートマグII以降はガバメントを基本としている。詳細はリンク先を参照。 AMTハードボーラー AMT社製のガバメントモデルで、ガバメントモデル初の全ステンレス製モデル。アメリカにおける狩猟・競技向けに開発された。 特に7インチ銃身のロングスライド型は、映画『ターミネーター』でアーノルド・シュワルツェネッガー演ずるT-800が使用し、宣伝ポスターにも写ったことで有名になった。10mmオート弾を使用するものは「ジャベリナ」と呼ばれる。 LAR グリズリー LAR社製のガバメントモデル。「拡大されたガバメントモデル」と呼べる外観を持ち、.45ウィンチェスターマグナム弾をはじめとした各種の強力なマグナム弾を使用する。その反動を軽減するためにコンペンセイターが装備されているものもあり、銃身長のバリエーションとしては5インチと6.5インチと10インチがある。 STI 2011 STI(Science Technology Ingenuity)社製のガバメントモデル。 世界スピード射撃選手権者のチップ・マコーミックと共同開発した、スチール製レシーバーとポリマー製グリップを一体化させ、軽量化と高強度性を合わせ持つ、多弾倉フレーム「2011」を搭載する。このフレームは、他社の多くが鋳造フレームを使用していたのに対して、CAD-CAMを駆使した鍛造鋼素材をNC加工する高精度工法で製作されている。他にはスケルトンハンマー、肉抜きされた軽量トリガー、ビーバーテイル・グリップセーフティ、アンビデクストラウス・サムセーフティ、グリップエンド部にマガジンウェル等を備える。現在では、使用用途別のサイズ・口径別の様々なバリエーションがありそれぞれで名前が違う。(イーグル、エッジ、タクティカル、エグゼクティブ、パーフェクト10、GM、ホーク、マッチマスター、トータルエクリプス、レジェンド、TruBor、アペリオ、スチールマスター、VIP等がある)STI社のOEM供給を受けて同型のフレームを持つ銃でストレイヤー・ヴォイト、バースト・プレシジョンがある。 S&W M945 S&W社のカスタム部門であるパフォーマンスセンター製のガバメントベースのオリジナルモデル。スライドには同社製M4506のスライドを改造したものを流用し、下半分はコルト社製ガバメントモデルの基本設計をコピーして製造された。鱗状のセレーションが特徴的。 S&W SW1911 S&W社製のガバメントモデル。元々コルト社製以外の1911型ピストルのスライドおよびフレームの鍛造素材の供給元であったS&W社が完成品として製造しているモデル。強度的問題や調整が難しい内蔵エキストラクターを外装式に改め、グリップセーフティで解除するファイアリングピンブロックを内蔵するなど、近代的にリデザインされた特徴を持つ。 ウィルソンM1996A2 CQB ウィルソン社製のガバメントモデル。スリット入りのスライドとロングセーフティを持ち、トリガーにはアジャスタブルの軽量パーツを採用している。主に公安関係者向けに販売されているようであるが、その価格はベレッタ92(1丁700ドル)の3倍以上という破格の値段である。 スプリングフィールド・FBIスペシャル・ビューローモデル FBIがSWAT用に1996年に正式採用したカスタムモデル。 1994年のトライアルではダブルカラムのハイキャパシティーが求められ、パラ・オードナンス製フレームを装備したレスベアーカスタムが正式採用された。しかし、所定の納期に必要数量が納入されず、かつマガジンのフィーディングトラブルが頻発したために発注がキャンセルされ、改めてシングルカラムでのトライアルが行われ、このモデルが採用された。 主な特徴は、フレームのグリップ前面にチェッカリング加工、アンビセーフティとマグウェル一体型のメインスプリングハウジング、トリチウム入りノバックサイトである。この市販型であるプロフェッショナルモデルを米海兵隊がカスタムベースに使用したり、このトライアルの結果で、小規模カスタムメーカーであったスプリングフィールド・アーモリー社の製造するガバメントモデルのクオリティの高さが証明された。 FBI向けとは言うものの市販もされているが、2,500ドル(ベレッタ92FSが平均500ドル)と、破格の値段である。 スプリングフィールド・オメガ 1987年に登場した、スプリングフィールド・アーモリー製のターゲット・シューティング・モデル。 直方体型の薬室が排莢口に噛み合わされるSIG式のロッキング機構と、左右に設けられたエキストラクターを特徴とする、ペーター・シュタール製5インチ、もしくは6インチのスライド・ユニットにマグナ・ポートを追加工し、自社製のフレームに組み合わせたモデルである。.45ACP弾を使用するものの他に10mmオート弾を使用するものと.38スーパー弾を使用するものが発売されたほか、ペーター・シュタールからも9ミリパラベラム用や.40S&W用などのコンバージョン・キットが用意されていた。左右に設けられたエキストラクターは、これら各口径への換装をユーザーが簡易に行えることを狙ったものでもあった。10mmオート弾モデルは大手トイガンメーカーである東京マルイが「オメガ10mmオート」の名称でエアソフトガンを販売しているため、日本でもわずかながら知名度がある。 なお、スプリングフィールド・アーモリーは、1991年にペーター・シュタール製スライド・ユニットのSIG式ロッキング機構を自社製品にコピーし、「リンクレス10mm」として発売した。しかし、これが原因でペーター・シュタールとの関係が悪化し、パテント関係で告訴されてリンクレス10mmは発売中止になるとともに、オメガ用のパーツ供給も途絶えることとなった。そのため、オメガは1992年で発売中止となり、以降のアフターサービスも行われなかった。 M1911A1 MEU PISTOL アメリカ海兵隊専用モデルであり、正式名称は「PISTOL, CALBER .45, MEU(SOC)」(MEU=Marine Expedition Unit、海兵遠征隊)。 アメリカ軍の正式拳銃がM1911A1からM9に更新された際、海兵隊独自の特殊作戦部隊であるMEU(SOC)は、M1911A1型の継続装備を決定した。そのため、更新処分される1945年以前に生産・納入されたM1911A1の中から状態の良いフレームを抽出し、フレーム以外のほぼ全てのパーツを新規購入して海兵隊の工廠で組み立てたモデルである。この背景には、新規武器を調達するためには議会の承認を得る必要があり簡単に購入できないということで、銃本体(=フレーム)の修理部品の調達という名分で購入する必要があったという事情がある。 主な特徴として、固定のハイマウントサイト、アンビセーフティ、ビーバーテイル形グリップセーフティ、パックマイヤー社製ラバーグリップなどが搭載されている。市販はされていない官給品の改造モデルゆえ時期によりさまざまな仕様があるが、スプリングフィールド・アーモリー製スライドを使用しているのが確認されている。 海兵隊は実戦・訓練による消耗が激しいため、その後は供給不足を補うために次期正式拳銃の採用トライアルまでのつなぎという名目で、新規購入したスプリングフィールド・アーモリー製プロフェッショナルモデルをベースに、同様のカスタムを施したモデルを暫定調達している。 後継が前述のコルトM45A1 CQBP。 キンバー ICQB/ウォーリア キンバー社製1911拳銃 アメリカ海兵隊特殊作戦コマンド向けに設計されたモデル。基本はM45 MEU(SOC)に類似しているが、フラッシュライト取り付けの為に、フレームにレールを搭載している。 また民間向けにウォーリアとして販売されている。 キンバー イージス キンバー社製小型1911拳銃。 使用弾は主に.45ACP。装弾数は7+1発と少ないが、構造がやや簡単であるために故障は少ない方である。 フレームがアルミニウム製ゆえに軽量で、さらにグリップも細くなっているので、隠匿携帯に向いている。 デトニクス 9-11-01 デトニクス社製のガバメントモデル 本家M1911とサイズは同じ大きさ、スライド後端のスロープが特徴的。相違点は、スライド後端のスロープとバレルがスライドからはみ出した点である。これを小型化したのがデトニクス・コンバットマスターである。 デトニクス・コンバットマスター デトニクス社製のガバメントモデルで、小型ガバメントモデルの元祖でもある。しかし、ただ小型化しただけではなくいくつかの改良も加えられており、部品も本家コルト・ガバメントモデルとできる限り互換性を持たせてある。隠し持つのに丁度良い大きさであるため、アメリカの私服警察官などに使用された。 ハンマーを素早く手で起こすために設けられた、スライド後端のスロープが特徴的。そのデザインから、日本ではコルト社製ガバメントモデルの短縮型と勘違いされ、「コルト・デトニクス」などと呼ばれることもあるが、コルト社製ではないのでこれは誤りである(コルト純正のそれは「ディフェンダー」と「オフィサーズ」)。 クーナン .357マグナム オートマチック アメリカのクーナン社が開発した.357マグナム弾を使うモデルである。マグナム弾を使用するため、威力は強力で、グリップの幅が広くなっている。長らく製造中止になっていた時期がある。
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