はやぶさこまち21号列車分離インシデントとは? わかりやすく解説

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はやぶさ・こまち21号列車分離インシデント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/26 19:34 UTC 版)

はやぶさ・こまち21号
列車分離インシデント
連結運転を行うはやぶさ・こまち号
発生日 2025年(令和7年)3月6日
発生時刻 11時30分ごろ (JST)[1]
日本
場所 東京都荒川区西日暮里
路線 東北新幹線
運行者 東日本旅客鉄道(JR東日本)
事故種類 重大インシデント
原因 調査中
統計
列車数 2編成(新幹線H5系電車(H3編成)10両+新幹線E6系電車(Z7編成)7両
死者 なし
負傷者 なし
その他の損害 なし
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はやぶさ・こまち21号列車分離インシデント(はやぶさ・こまち21ごうれっしゃぶんりインシデント)は、2025年(令和7年)3月6日東北新幹線上野-大宮間で発生した重大インシデント[注釈 1]である。東京新青森秋田行きの「はやぶさ・こまち21号」(新幹線H5系電車新幹線E6系電車)が上野駅を発車直後に連結器が外れ、緊急ブレーキが作動し停止した。「はやぶさ・こまち21号」には乗客642人が乗車していたが負傷者は出なかった[3][4]運輸安全委員会 (JTSB) は本事象を重大インシデントに認定し、調査を開始した[5][6]

東日本旅客鉄道(JR東日本)は本事象の発生を受けて、3月14日まで連結運転を全面的に取りやめた[7][8][9]。その後、3月14日から連結器が外れないよう治具で固定したうえで連結運転を再開した[10][11]

インシデントの経緯

H5系とE6系で運行される「はやぶさ・こまち号」
手前は当該のH3編成

「はやぶさ・こまち21号」は東京新青森秋田行きとして運行されており、「はやぶさ21号」が新幹線H5系電車10両、「こまち21号」が新幹線E6系電車7両の計17両で運転されていた[注釈 2][3][4]。11時30分ごろ、上野駅を発車し時速60 km/hほどで走行中に緊急ブレーキが作動した[1][12]。乗務員が確認したところ連結器が外れ、8 mほど離れて両編成が停止している状態だった[4]。その後、車両の点検を行ったうえでそれぞれ単独編成で大宮駅まで運転を行い、「はやぶさ・こまち21号」は運転を打ち切った[3][4][12]。乗客は後続列車への乗り換えを強いられた[3][4][12]

本事象の発生によってJR東日本管内の東北新幹線東京-新青森間、上越新幹線東京-新潟間、北陸新幹線東京-長野間の全線で運転を一時見合わせた[13]。約3時間後の14時30分ごろに運転を再開したが、合計111本の列車が運休し、15万人以上に影響した[4][8][14][15]

調査

はやぶさ・こまち号の連結部分

本事象発生の半年前にあたる2024年9月19日にも「はやぶさ・こまち6号」が古川-仙台間を走行中に列車分離を起こしていた[3][4][16]。そのため、国土交通省は重大インシデント認定の定義である「連結器等の故障により、同型の車両が二度以上、インシデント事象となる列車分離を発生した事態」に該当すると判断、本事象を「重大インシデント」に認定した[17][18][19]。2024年の事象の詳細については後述する。

JTSBは翌7日に調査官3人を当該車両が収容された宮城県利府町新幹線総合車両センターへ派遣し、調査を開始した[20][21]。分離直後からE6系側で繰り返し切り離し動作が発生している状態であったことから[22][23]、電気系統に故障が生じたものと推測されている[4]。そのため、JTSBは当該のE6系(Z7編成)に対して保全命令を出していたが、4月23日にこれは解除され、JR東日本は電気系統の交換や治具の設置を行った上で運用への復帰を計画していると述べた[24]

余波

列車分離の再発

本事象の発生する半年前の2024年9月19日8時ごろ、東北新幹線古川-仙台間を走行していた盛岡秋田東京行きの「はやぶさ・こまち6号」(新幹線E5系電車10両+新幹線E6系電車7両)が時速315 km/hで走行中に連結器が外れて緊急停止した[25][26]。両編成には合わせて乗客320人が乗車していたがけが人は出なかった[26]。点検を行った結果連結器が外れた状態となっており、「こまち21号」が「はやぶさ21号」の後方300 mに停止している状態だった[16][26]。両編成に異常が無いことを確認したうえで仙台駅まで単独走行させ、運転を打ち切った[27]。この影響で東北新幹線は東京-新青森間の全線で一時運転を見合わせ13時ごろに運転を再開、4万5千人ほどに影響が出た[27][28]。走行中の新幹線車両で列車分離が発生するのはこれが初めてである[29]

国土交通省東北運輸局は原因の究明をJR東日本に求めた一方で[27]、JTSBは分離後に自動的に緊急ブレーキが動作したため「連結器が外れ、自動ブレーキが作動しなかったケース」に該当しないと判断し、重大インシデントには認定していなかった[17][30][31]。JR東日本は「こまち6号」側の車両に搭載されている強制分離を指示するスイッチの裏から金属片が発見されたと公表した[32][33]。強制分離スイッチは連結失敗時などに使用するもので、通常は時速5 km/h以下でしか動作しない[32][33]。金属片によって回路が短絡し、解放指令が制御部に送信された事で列車分離が生じたものと推定している[34][35]。これを受けてJR東日本は連結運転を行う新幹線E2系電車新幹線E3系電車新幹線E5系電車新幹線E6系電車新幹線E8系電車全96編成の緊急点検を行い、E6系23編成のうち当該編成を含む11編成で金属片が発見されたと発表した[34][35]。金属片は車両新製時に生じたものとみており、緊急対策として強制分離スイッチの無効化を行った[35]

連結運転の取りやめ

本事象の発生を受けてJR東日本は、3月13日まで連結運転を全面的に取りやめた[7][8]。これによって秋田新幹線は全線で東京-盛岡間、山形新幹線は連結運転を行わない1往復を除く東京-福島間の全線で運転を取りやめ、17両編成で運行するやまびこ号やなすの号などについても10両に減車して運転を行った[36]。混雑が予想される朝と夕方の時間帯には臨時列車の運転が行われた[37]。山形新幹線では新幹線ホームと在来ホーム間での乗り換えが必要となった[38]。これに伴って乗り換え時間が増え、JR東日本は案内員を配置するなどして円滑な乗り換えを行えるようにした[39]

JR東日本は緊急対策として解放指令が出たとしても連結器が外れないよう治具を設置したうえで運転再開を行う見通しとし、12日に走行試験を行った[40][41]。3月14日から連結器が外れないよう治具で固定したうえで連結運転を再開した[10][11]。14日はダイヤの変更などが依然発生したが、翌15日からは通常ダイヤでの運行となった[42][43]。JR東日本は今後、走行中に解放指示が出ても分離が発生しないようなシステムの開発を行うと発表した[44]

脚注

注釈

  1. ^ 「事故が発生するおそれがあると認められる事態」を指す[2]
  2. ^ 新青森方の17号車から11号車が「こまち21号」、東京方の10号車から1号車が「はやぶさ21号」として運転されていた。

出典

  1. ^ a b 東北新幹線「連結外れ」がJR東に与えるダメージ”. 東洋経済オンライン (2025年3月12日). 2025年3月15日閲覧。
  2. ^ 調査の流れ(鉄道)”. 運輸安全委員会. 2025年3月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e 東北新幹線、また連結外れる 「こまち」に原因か、昨年9月も―JR東”. 時事通信 (2025年3月7日). 2025年3月15日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 東北新幹線 連結外れ「こまち」側に原因か 連結運転は全面停止”. NHK (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  5. ^ 国の運輸安全委「重大インシデント」JR施設で車両調査開始”. NHK (2025年3月7日). 2025年3月15日閲覧。
  6. ^ 運輸安全委員会 調査概要”. 運輸安全委員会 (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  7. ^ a b 東北新幹線の連結取りやめ、14日まで延長 運輸安全委の調査続く”. 毎日新聞 (2025年3月8日). 2025年3月15日閲覧。
  8. ^ a b c 東北新幹線、「連結運転」取りやめ 連結外れた事故の原因究明まで”. 朝日新聞 (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  9. ^ 東北新幹線の連結運転取りやめ、14日まで延長 調査続く”. 日本経済新聞 (2025年3月8日). 2025年3月15日閲覧。
  10. ^ a b 東北新幹線の連結運転再開、乗客「ありがたい」…連結外れの原因は調査中”. 読売新聞オンライン (2025年3月14日). 2025年3月15日閲覧。
  11. ^ a b 東北新幹線 連結運転を再開 15日から通常運行へ”. NHK (2025年3月14日). 2025年3月15日閲覧。
  12. ^ a b c 東北新幹線上野~大宮間はやぶさ・こまち21号が走行中に連結部が外れ停車した事象の 現在の調査状況と当面の対策について”. JR東日本 (2025年3月11日). 2025年3月15日閲覧。
  13. ^ 【午後2時半ごろ再開見込み】東北新幹線 上下線で運転見合わせ 上野~大宮間で車両が分離 上越・北陸新幹線も”. TBS (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  14. ^ 連結部分が外れて停車した東北新幹線 午後2時34分ごろに運転再開”. 朝日新聞 (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  15. ^ 東北新幹線の連結分離トラブル 111本が運休し166本に遅れ 約15万2800人に影響”. テレビ朝日 (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  16. ^ a b 東北新幹線古川~仙台間はやぶさ・こまち6号が走行中に連結部が外れ停車した事象の 調査結果と対策について”. JR東日本 (2024年9月26日). 2025年3月15日閲覧。
  17. ^ a b 東北新幹線の連結分離、運輸安全委が事故調査官派遣へ トラブル2度で対象に、新幹線初か”. 産経新聞 (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  18. ^ 東北新幹線が連結器分離で緊急停止、国交省が重大インシデント認定…運輸安全委が調査へ”. 読売新聞オンライン (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  19. ^ 東北新幹線、また車両分離 連結は当面取りやめ”. 日本経済新聞 (2025年3月7日). 2025年3月15日閲覧。
  20. ^ 東北新幹線「連結外れ」、運輸安全委員会が車両の調査開始”. 日本経済新聞 (2025年3月7日). 2025年3月15日閲覧。
  21. ^ 東北新幹線「連結外れ」 運輸安全委員会の事故調査官がJR東日本の施設で立ち入り調査 宮城・利府町”. 東北放送 (2025年3月7日). 2025年3月15日閲覧。
  22. ^ 新幹線で連結分離「信頼回復へ原因究明徹底を」”. 陸奥新報 (2025年3月14日). 2025年3月15日閲覧。
  23. ^ 東北新幹線が走行中分離、「こまち」側に連結解除の痕跡…原因判明まで新幹線の連結運転取りやめ”. 読売新聞オンライン (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  24. ^ 連結分離の新幹線「こまち」が営業復帰へ 保全命令解除される”. 朝日新聞 (2025年4月23日). 2025年4月23日閲覧。
  25. ^ 「音もなく、すーっと止まった」 車両分離の東北新幹線、乗客は…”. 朝日新聞 (2024年9月19日). 2025年3月15日閲覧。
  26. ^ a b c JR “東北新幹線 時速315キロ走行中に連結外れた”【詳しく】”. NHK (2024年9月19日). 2025年3月15日閲覧。
  27. ^ a b c 東北新幹線、走行中に連結外れる 国交省が原因究明指示”. 日本経済新聞 (2024年9月19日). 2025年3月15日閲覧。
  28. ^ 東北新幹線、走行中に連結外れる”. 北國新聞 (2024年9月19日). 2025年3月15日閲覧。
  29. ^ 東北新幹線、時速315キロで走行中に分離…JR東は連結車両全96編成で緊急点検へ”. 読売新聞オンライン (2024年9月19日). 2025年3月15日閲覧。
  30. ^ 東北新幹線車両分割 運輸安全委員会「重大インシデントにあたらず」との見解め”. 宮城テレビ (2024年9月19日). 2025年3月15日閲覧。
  31. ^ 前代未聞の新幹線トラブル 時速315キロで車両の連結が“外れる”電気系統の不具合か? 東北新幹線「5時間」全線ストップ”. 青森放送 (2024年9月19日). 2025年3月15日閲覧。
  32. ^ a b 削りくずで強制分離スイッチ操作と同じ状態に 東北新幹線”. 朝日新聞 (2024年9月26日). 2025年3月15日閲覧。
  33. ^ a b 東北新幹線の連結分離、金属片でスイッチ誤作動か JR東日本が発表”. 毎日新聞 (2024年9月26日). 2025年3月15日閲覧。
  34. ^ a b 東北新幹線 連結外れは金属片が原因と推定 JR東日本”. NHK (2024年9月26日). 2025年3月15日閲覧。
  35. ^ a b c 東北新幹線の列車分離事故、連結器解放スイッチの端子間ショートが原因か”. 日経クロステック (2024年9月27日). 2025年3月15日閲覧。
  36. ^ 【速報】明日7日も「併結運転」の中止決定(東北・山形・秋田新幹線) 遅れが生じる可能性も 東北新幹線の車両分離を受け JR東日本”. 青森テレビ (2025年3月6日). 2025年3月15日閲覧。
  37. ^ 東北新幹線ダイヤが乱れ混乱が続く 連結運転中止で臨時列車を運行”. 東日本放送 (2025年3月7日). 2025年3月15日閲覧。
  38. ^ 東北・山形・秋田新幹線14日まで連結運転を取りやめ 福島駅、盛岡駅で乗り換え必要”. TBS (2025年3月9日). 2025年3月15日閲覧。
  39. ^ 連結中止、山形新幹線の福島駅折り返しは在来線ホーム 東北新幹線乗り換えが急ぎ足に”. 産経新聞 (2025年3月7日). 2025年3月15日閲覧。
  40. ^ 東北新幹線、連結運転14日再開へ こまち号に電気異常か”. 日本経済新聞 (2025年3月11日). 2025年3月15日閲覧。
  41. ^ 東北新幹線、8日ぶりに「連結運転」再開 利用者「ほっとした」”. 朝日新聞 (2025年3月11日). 2025年3月15日閲覧。
  42. ^ 東北新幹線で連結運転を再開 乗客から原因究明求める声”. NHK (2025年3月14日). 2025年3月15日閲覧。
  43. ^ 東北新幹線と秋田・山形新幹線の連結運転、8日ぶり再開”. 日本経済新聞 (2025年3月14日). 2025年3月15日閲覧。
  44. ^ 東北新幹線の重大インシデント、JR東が連結器の分離防ぐシステム開発へ…導入時期は未定”. 読売新聞オンライン (2024年4月8日). 2024年4月8日閲覧。



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