お卯乃の方を巡る事件の関係者
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「用心棒日月抄の登場人物」の記事における「お卯乃の方を巡る事件の関係者」の解説
石森左門(いしもり さもん) 60歳半ばになる、国元の組頭。ただし、祖父の失態により、附属する家中組を持たない名目組頭に甘んじてきた。さらに、加役として江戸屋敷で若殿の傅役を務めることになり、このままでは名目とはいえ先祖代々の組頭の地位が危ういと考える。そこで、美貌の持ち主であった長戸屋の養女おもよを、藩主の側室に推挙した。ただし、自分は表に出ず、実務は坂井主税に任せた。それは、将来石森家から名目組頭の地位が剥奪されそうになった際、坂井に一肌脱いでもらうためである。 佐知は、石森が嗅足組の後見役 を務めていたのではないかと推理した。後に石森本人がそれを認めている。 戸田流加治道場が生んだ天才剣士であり、後輩である牧与之助と共に、お卯乃の方出生の秘密に関わる者たちを次々と殺害した。最後に、秘密をすべて探り当てた又八郎と佐知に戦いを挑み、又八郎に斬られた。 牧与之助(まき よのすけ) 又八郎の親友。戸田流の名手であり、加治道場の麒麟児と呼ばれる藩随一の剣豪。 持病の労咳が悪化し、2ヶ月前から床についたまま、見舞いに来た人にも顔を見せなくなった。一方で、仮病であるとの噂もあった。 石森左門と同じ道場の出身で、若い頃には石森の手ほどきを受けてきた。そのため、彼の命に従い、国元に戻った元嗅足組の女3名を斬殺した。そして、又八郎と佐知を確実に殺すために密かに江戸に呼び寄せられ、石森を斃した直後の又八郎を不意打ちに襲ったが、又八郎のとっさの反撃で斬られてしまう。 村越儀兵衛(むらこし ぎへえ) 若殿である新次郎附きの内用人。国元嗅足組の二の組に属する密偵である野呂助作ら6人の足軽たちを指揮していた。 国元の何者かに宛てて書いた手紙が、大目付兼松の手に渡ったが、そこには2年前に殺された船橋との激論を聞いた女を始末したと書かれていた。 また、お卯乃の方の出生の秘密をネタに、長戸屋惣兵衛が石森に脅しをかけてくると、会食の席で毒を盛り、これを病死に見せかけて殺した。 公儀隠密に拉致され、拷問を受けたが、秘密はついに白状しなかった。しかし、又八郎らが救出に行くと、戦いのさなかに何者かに刺殺されてしまう。安斎彦十郎は、それが二の組の者の仕業だと、又八郎に目で知らせてきた。 後に坂井主税は、おもよ(お卯乃の方)の美貌に最初に目を付けたのは、村越だったと語った。 船橋光四郎(ふなばし こうしろう) 用人。下には寛容だが上には厳しく、不正があれば諫争も厭わない人物で、藩主の信頼も厚かった。2年前、帰国中に何者かに暗殺される。足跡ひとつ残さぬ水際だった暗殺だったため、藩主が嗅足組の関与を疑ったほどだが、遺骸に残った傷が剣客のものであり、とどめの刺し方も嗅足組のものとは異なっていた。 大目付の兼松は、船橋が殺される前、江戸屋敷で何者かと論争をしていたことをつかんだ。又八郎や佐知らの探索の結果、それが石森左門であることが明らかになる。船橋は長戸屋の死に不審を抱き、長戸屋番頭の甚七にもあった上で、お卯乃の方の素性が確かでないことを探り当てて、石森を詰問したのである。 坂井主税(さかい ちから) 家老。50歳過ぎの年齢。近年は、嗅足組支配の家老を務めていた。以前の名を満之助といった。 お卯乃の方を藩主の側室に推挙したことで、異例の出世を果たしたと言われている。ただし、それは表に出ようとしない石森左門の代わりに行なったことである。なぜ石森が表に出ず、坂井に側室推挙を代行させたかという理由については、推測を又八郎に語って聞かせた。石森の意を受けた村越が、お卯乃の方の養父を旗本である久保と偽った件については、今も恥ずかしく思っている。又八郎は、坂井はお卯乃の方の実父については知らないと判断した。 異例の出世を妬んで批判する者も多いが、働き者で、苦労人らしい気さくな性格であり、又八郎は好意を抱いている。 小雪 江戸上屋敷の奥女中で、たまたま表役 を務めていた5年前に病死した。その際、毒殺の噂が立ち、藩主夫人の名で噂を否定する強い調子のふれが出された。 死の真相は、たまたま船橋が石森を詰問している場に茶を運んだため、石森が嗅足組と誤解し、石森の命で村越が毒殺したのである。 清五郎(せいごろう) 弓町の太物問屋「杉村屋」番頭。30代半ば。病気で臥せっている主人に、商い一切を任されている。5年前までは長戸屋の手代だったことが判明する。 その後、佐知が接触に成功し、又八郎と共に話を聞いた。彼は長戸屋の娘おみちの婿になる予定だったが、主人の惣兵衛が借金を残して急死し、おみちも心労のため、店をたたんだ後に亡くなってしまったという。そして、以下のような話をした。 主人の惣兵衛が死ぬ直前、金策のめどが付いた、うまくいけば3千両が手に入ると、悪相でつぶやいて、又八郎の藩の江戸屋敷に向かったこと。 お卯乃の方は長戸屋の遠い親戚の孤児で、長戸屋が引き取って育てた後、旗本の久保家に養子に出し、壱岐守の側室となったこと。 久保家との養子縁組に尽力したのは今の坂井家老だが、お卯乃の方を見出したのは、番頭の甚七によれば別人だったこと(清五郎は名を忘れたが、後日それが石森左門だと判明する)。 主人は、当時は納戸役だった村越儀兵衛と会食後、激しい腹痛を訴えて絶命したが、毒を盛られた疑いがあると医師が語ったこと。 甚七が南町奉行所に、主人の死に不審ありと訴え出た後、同心が来て平野屋を知っているかと尋ねたこと。 訴えの件は甚七の死後立ち消えとなったが、最近同心を名乗る武家が3名現れ、完璧に店の者に変装して、又八郎の藩の江戸屋敷に出入りするようになったこと(後日、彼らの正体が公儀隠密だと分かる)。 長戸屋惣兵衛 5年前まで江戸屋敷出入りだった呉服屋。長戸屋の名が、内用人村越が書いた手紙の中に出てきたため、江戸嗅足組の探索対象となる。 商売仲間だった平野屋所有の長屋に住んでいた孤児、おもよを引き取り、遠縁の孤児と偽って育てた。後に、おもよの美しさが石森左門の目にとまり、藩主の側室として挙げられ、お卯乃の方として藩主の寵愛を受けた。それが縁で、長戸屋は江戸屋敷出入りとなる。 その後、事業拡張に失敗して多額の借金を抱え、返済に窮すると、お卯乃の方出生の秘密をネタに藩から大金を巻き上げようとした。そのため、石森の命を受けた村越に毒殺されてしまう。 甚七(じんしち) 長戸屋の番頭。 主人惣兵衛の死後1年ほどして、主人の不審があると南町奉行所(時の奉行は大岡越前守)に訴え出た。 長戸屋が潰れた翌年60歳で亡くなったが、女房が平野屋について思い出してくれたため、又八郎と佐知は平野屋と接触することができた。 平野屋 本郷3丁目にある呉服屋。先代の主人が、持ち物である裏店に住んでいた赤子、おもよが孤児となったため、主人が同業である長戸屋に紹介して引き取ってもらった。しかし、20年前に主人が亡くなると、長戸屋の方から平野屋との付き合いを絶ってしまったという。 息子である当代の主人吉右衛門は、たびたび幕府の役人が来ては、長戸屋について尋ねることを苦々しく思っていて、同じように長戸屋の件で訪問した又八郎と佐知に、迷惑そうな態度を取った。ただ、又八郎は、彼の話から、公儀隠密が村越儀兵衛からおもよの出生の秘密を聞き出せなかったことを知り、安堵した。 亀七(かめしち) 平野屋の使い走りをしている老爺。又八郎と佐知が平野屋を訪問した際、後でこっそりと追いかけてきて、30年ほど前、先代の平野屋主人に同行し、赤子を抱いて長戸屋に連れて行ったことを告白した。誰の子かは知らなかったが、平野屋の持ち物だった長治郎店で主人が赤子を引き取ったことは憶えていた。 本来、すぐに口を封じた方が安全だが、佐知は仏心を出して、脅して他言を禁じるに止めた。しかし、後にお卯乃の方出生の秘密を知った佐知が口封じに向かうと、すでに何者かに殺されていた。後日、又八郎は、殺したのは石森左門だと推理した。 紋作(もんさく) 10年前まで長治郎店に住んでいた根付け彫り職人。58歳。当時の大家の書き付けから現住所が分かり、又八郎と佐知が訪問した。平野屋が長屋から連れて行った赤子は、栂野専十郎の娘であり、栂野が幕府に逆らって処刑されたことを教えてくれた。孤児となった栂野の娘については、どこかの金持ちにもらわれて行ったが、間もなく死んだと大家に聞かされていた。 また、5,6年前、村越儀兵衛と思われる武家が、栂野の娘のことを尋ねに来たと語った。 栂野専十郞(とがの せんじゅうろう) お卯乃の方の実父。同じ長屋に住む若者が、生類憐れみの令に違反して捕縛された際、情状酌量を求めて奉行所に向かい、打擲された。これを恨みに思い、仲間と共に幕府の政道を批判する張り紙をしたため、捕らえられて遠島を申しつけられた。しかし、なおも幕府高官の前で生類憐れみの令を批判したため、打ち首となった。 専十郎が亡くなると、元々病気がちだった妻も気力を失い、間もなく亡くなった。そして、まだ乳飲み子だった娘がただ1人残された。 平瀬(ひらせ) 旗本久保家の用人。船橋光四郎が訪問したことがあるかどうか、又八郎が問い合わせたところ、5年前に来たと答えた。船橋が尋ねたのは、おもよ(お卯乃の方)についてであり、その際平瀬は、おもよは長戸屋と坂井満之助(主計)との依頼を受け、当時久保家で行儀見習いをしていたおもよを名義養女としたことを答えたという。
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