ベノナ 当事者の記録と、第三者の反証

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ベノナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/19 06:37 UTC 版)

当事者の記録と、第三者の反証

ジョン・ローウェンサール(弁護士)[15]
  1. ヒスとされている暗号名”アレス”はGRU(軍)のために働いているが、国務省のヒスは非軍事情報しか入手できない。
  2. ヒスはマーシャル・プランで、ソビエト封じ込め政策を支持している。
  3. ヒスはヤルタ会談後モスクワに行ったので、GRUは直接本人と話せるはずだが、副外相のアンドレイ・ヴィシンスキーに伝言を頼んだことは矛盾する。
  4. FBIは国務省の文書をコピーした『ボルチモア文書』が、ヒスのタイプライターの製造日とシリアル番号が異なる偽造と知りながら隠蔽(上訴も棄却)。
  5. リチャード・ニクソンが無罪判決を下した陪審員は、下院非米活動委員会に召喚される可能性があると示唆[16]
  6. ノエル・フィールドヘーデ・マッシングの証言について、『偽証で法外な嘘』という手記を書き、ヒスの無実を主張し続けた。
  7. 多くは伝聞証拠であり、暗号名は使い回されている上に、国務省には同姓の人物がいたので、アルジャー・ヒスをスパイと裏付ける証拠はない。
チェスター・レーン(弁護士)

ボルチモア文書が捏造された証拠で、ヒスは冤罪だと証明できる[17][18]

ラッセル・ブラッドフォード(ロングビーチ警察歴史協会) ラルフ・ブラッドフォード(政治家)

FBIは他のタイプライターで、同じ文書を偽造できると知りながら隠蔽した[19]

アンソニー・サマーズ(ノンフィクション作家)

元ホワイトハウス顧問のジョン・ディーンは回顧録で、ニクソン大統領の主任弁護士チャールズ・コルソンが、ニクソンは下院非米活動委員会がタイプライターを複製したのを認めたと述べている。ニクソンは否定したが元FBI副長官のサリヴァンは、証拠を捏造するようFBIに依頼したら「フーバーは喜んで引き受けただろう」と語った。サマーズは偽造や偽情報を仕込んだ、不穏な記録があると指摘している[20]

アラン・ベルモント(FBI情報部長)

(上記の理由から)ベノナ文書を証拠として採用するのは不適切[21]

アメリカ国家安全保障局(NSA)

(上記の理由から)KGBの記録に、ヒスの名前が発見されたと”推定される”。アレスは”恐らく”ヒスであるとして、断定はしていない[22]

ジェフ・キッセロフ(歴史家)
  • ヒスに関する矛盾点[23]
  1. 暗号名”アレス”がメキシコシティにいた頃、ヒスはワシントンにいた。
  2. ノエル・フィールド(NKVDのスパイ)を採用したとされる時期、フィールドはロンドン軍縮会議のため、アメリカ国内にいなかった。
  3. ウィテカー・チェンバース(元共産党員)が証言した、ヒスが持ち帰ったとされるメモは彼の手元になかった。
  4. ヘーデ・マッシング(共産主義者)は、国外追放の圧力の下で証言しており、虚偽の陳述をしている。
  5. マッシングはヒスに会う1週間前、(氷点下になる)真冬のポトマック川で夫と遊泳したと証言。
  6. マッシングは彼女の本を精査したFBIに、事実を隠すために捏造したことを認めた。
  7. ヒスが米共産党の主宰者に車を寄付したという件で、譲渡証明書の署名が偽造されていた。
ドミトリー・ヴォルコゴノフ上級大将(反ソ連の公文書監督者)

ヒスがソ連の代理人として働いたことは一度もない[24]

ジュリアス・コビャコフ少将SVR

マッシングとフィールドの個人ファイルを調べたが、ヒスに関するものは1つもなかった。ヒスは”アレス”ではない[25]

ヴィクター・ナヴァスキー(ジャーナリスト)
  1. アレン・ワインスタインの著書『偽証罪: ヒス・チェンバース事件』に登場する全員が誤用されたと答え[26]、その1人サム・クリーガーはワインスタインから慰謝料をもらい、謝罪と訂正を公表すると約束したが守られていない[27]
  2. ベノナ文書を根拠にヒスをスパイとする人々は、みずからが支持する情報だけを集めて、ウラジーミル・パブロフ(外交官)が回顧録で否定した事など、相反する反証を無視している。ベノナ文書は冷戦構造を歪曲するために利用された[28]
ハーベイ・クレア(歴史学教授)

『米国にソ連のスパイがいた』は大枠として正しいが、細部は間違っていて単なる魔女狩りだった。小物のスパイは判明したが、その他は立証されていない[29]

アサン・テオハリス(FBI/ジョン・フーバー/米諜報機関専門の歴史家)

FBIはマッカーシズムを促進しながら、防諜の失敗を隠ぺいした[30]

アレン・ワインスタイン(官僚・歴史家・大学教授)

ベノナ文書は説得力はあるが、決定的ではない[31]

エドゥアルト・マーク(研究家)

ヒスは”アレス”だった可能性のある1人にすぎない[32]

ヴィターリー・パヴロフ中将(NKVD米国部副部長)

ハリー・ホワイトは工作対象でスパイではない。財務省には2人のエージェントがいて、それ以上の情報源は不要だった[33]

ブルース・クレイグ(諜報専門の歴史家)

交換された情報は法律の範囲内だったため、多くの人はホワイトの行動をスパイ行為と見なしておらず、現在の法的基準でもスパイ行為には当たらない[34]

ベン・ステイル(経済学者)

ホワイトはマルクス主義者ではなく、ケインズ経済学派である[35]


注釈

  1. ^ 1945年9月5日、在カナダソ連大使館に勤務していたイゴーリ・グゼンコ英語版が亡命し、ソ連の諜報活動を暴露した。

出典

  1. ^ 『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』に学ぶ「今そこにある危機」” (日本語). アゴラ 言論プラットフォーム. 2019年10月20日閲覧。
  2. ^ 「日本を降伏させるな」米機密文書が暴いたスターリンの陰謀” (jp). オピニオンサイト「iRONNA(いろんな)」. 2019年10月20日閲覧。
  3. ^ a b VENONA Archived 2014年6月28日, at the Wayback Machine. National Security Agency Central Security Service
  4. ^ a b Benson, Robert L.. “The Venona Story”. National Security Agency. 2004年4月30日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2006年6月26日閲覧。
  5. ^ NSA VENONA公式サイト VENONA Chronology
  6. ^ 1941年6月22日にペツァモ市の領事館。
  7. ^ a b c ヘインズ&クレア 2010
  8. ^ 元谷 2008、p.156以降
  9. ^ 連邦議会でもソ連のスパイ工作が追及されていた - エキサイト
  10. ^ 真珠湾攻撃77年目の真実 ルーズベルトは知っていた!? ~日米ソの壮絶”スパイ戦争 ザ・スクープスペシャル 終戦企画 2018年8月12日(日)午後1時55分~3時20分放送(一部地域を除く) テレビ朝日 ザ・スクープ
  11. ^ FBIの情報公開法文書 - アルジャー・ヒスの名がある。
  12. ^ 対日最後通牒ハル・ノートの原案を作成した元米国財務次官補 日本戦略研究フォーラム(JFSS)
  13. ^ ソ連に操られていた...アメリカが隠していた「不都合な真実」 新刊JP編集部
  14. ^ ニコラス・グリフィン 『ピンポン外交の陰にいたスパイ』柏書房。 
  15. ^ John Lowenthal. “Venona and Alger Hiss”. New York University. 2022年6月26日閲覧。
  16. ^ John Lowenthal (1976年6月26日). “What the FBI knew and hid”. The Nation. 2022年7月4日閲覧。
  17. ^ Alger Hiss (1957年). “In the Court of Public Opinion”. HarperCollins. pp. 363-409. ISBN 9780060902933. https://archive.org/details/incourtofpublico00hiss/page/363/mode/1up 
  18. ^ Supplemental Affidavits in re U.S. v. Alger Hiss”. The Black Vault (1976年6月26日). 2022年7月4日閲覧。
  19. ^ Russell R. Bradford; Ralph B. Bradford (1992年). “A History of Forgery by Typewriter”. Nelson-Hall Publishers. https://archive.ph/rA8z 2022年7月4日閲覧。 
  20. ^ Anthony Summers (2000年). “The Arrogance of Power: The Secret World of Richard Nixon”. Penguin Books. pp. 73-75. ISBN 9780670871513. https://archive.org/details/arroganceofpower00summ/page/75/mode/1up 
  21. ^ Walter Schneir; Miriam Schneir (2009年4月16日). “Cables Coming in From the Cold”. The Nation. https://www.thenation.com/article/archive/cables-coming-cold-0/ 2022年6月26日閲覧。 
  22. ^ Robert L. Benson. “The Venona Story”. NSA. p. 32. 2022年6月25日閲覧。PDF p.34
  23. ^ Jeff Kisseloff (2009年). “The Alger Hiss Story » Spies: Fact or Fiction?”. New York University. 2022年6月28日閲覧。
  24. ^ The Alger Hiss Story » Interpreting Russian Files”. New York University. 2022年7月3日閲覧。
  25. ^ Julius N. Kobyakov. “Alger Hiss”. Michigan State University. 2022年6月27日閲覧。
  26. ^ Jon Wiener (2004年5月2日). “Allen Weinstein: A Historian with a History”. George Washington University. 2022年7月4日閲覧。
  27. ^ "Costly Error for Hiss Historian: Weinstein Pays for Mistake" Jon Wiener (2005年). “Historians In Trouble: Plagiarism, Fraud, And Politics In The Ivory Tower”. New Press. pp. 31-57. ISBN 9781565848849
  28. ^ Victor Navasky (2001年6月20日). “Cold War Ghosts”. The Nation. https://www.thenation.com/article/archive/cold-war-ghosts/ 2022年6月27日閲覧。 
  29. ^ Rehabilitating Joseph McCarthy?”. TFN Insider. 2022年6月28日閲覧。
  30. ^ Athan Theoharis (2002年). “How the FBI failed in counterintelligence but promoted the politics of McCarthyism in the Cold War years”. Ivan R. Dee. ISBN 9781566634205. https://archive.org/details/chasingspieshowf00theo/mode/1up 
  31. ^ Allen Weinstein (1997年). “Perjury: The Hiss-Chambers Case”. PENGUIN RANDOM HOUSE. p. 512. ISBN 9780394728308 
  32. ^ Eduard Mark (Summer 2009). “In Re Alger Hiss: A Final Verdict from the Archives of the KGB”. 11. p. 50. doi:10.1162/jcws.2009.11.3.26 
  33. ^ 須藤眞志 『ハル・ノートを書いた男 : 日米開戦外交と「雪」作戦』文藝春秋文春新書〉、1996年2月19日、165頁。ISBN 4166600281 
  34. ^ R. Bruce Craig (2012年4月12日). “Setting the Record Straight: Harry Dexter White and Soviet Espionage”. George Washington University. 2022年6月28日閲覧。
  35. ^ Benn Steil (2013年2月25日). “The Battle of Bretton Woods: John Maynard Keynes, Harry Dexter White, and the Making of a New World Order”. Princeton University Press. pp. 4,23. ISBN 9780691149097. https://archive.org/details/battleofbrettonw0000stei/page/4/mode/1up 
  36. ^ a b c d “ローゼンバーグ事件の元受刑者、半世紀以上前のスパイ行為認める”. ニューヨーク: AFP. (2008年9月13日). http://www.afpbb.com/articles/-/2517117 
  37. ^ In Search of History Spies Among Us Documentary, http://docuwiki.net/index.php?title=Spies_Among_Us 





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