ネコの文化
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キャットショー
歴史上最も古い猫を用いた祭事の記録としては1598年にイギリスで祭りの一環として行われたものが最古であるが、詳細は未だ不明である[41]。 現在の形式につながるショーとして1871年にイギリスはロンドンのクリスタルパレスで初めて開催されて以来、品種の保全や交配のために各地で全国組織の愛猫協会などが主催するキャットショーが行われてきた。イギリスで行われた初期のキャットショーではいくつかの長毛種とブリティッシュショートヘアが出展され、アメリカではメインクーンのためのショーが同時期に開催された[42]。日本においては1956年、東京・日本橋の三越デパートの屋上で日本シャム猫クラブが主催したものが最初で、当時日本ではシャム猫以外に純血種が認識されておらず、出陣された個体もシャム猫だけであった[41]。一般に高級品種のみを対象としたイベントと認識されがちであるが、実際にはハウスホールドペット(純血種ではない雑種などの個体)や去勢猫といった部門もある。
家畜・食材としての猫
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日本
ネコを家畜として見た場合の利用例としては三味線を挙げられる。16世紀に、琵琶法師の仲小路が琉球(現在の沖縄県)の2弦であった蛇皮線を1弦増やして3弦とし、エラブウナギの皮を獣皮に張り替えたものが三味線となった。犬の皮も使われていたが、猫の皮の方が上物とされていた[43]。
食肉としては、江戸時代ではイヌやネコの肉が一部で食用とされており、天明の大飢饉により米価が高騰し深刻な米不足が起こった際、江戸北町奉行の曲淵景漸がイヌやネコの肉が低価格で流通していることから「米がないならイヌやネコの肉を食え」と発言したと伝わって町人の怒りを買い、江戸市中で打ちこわしまで引き起こす結果となった[44][45]。一方明治期の夏目漱石が著した『吾輩は猫である』の冒頭などには、貧乏書生が捕まえて煮て食ったなどの話も見られる。昭和初期までは困窮層に[要出典]「猫鍋」と指して「おしゃます鍋」(『猫じゃ猫じゃ』の歌詞に由来)なる言葉も残っていた[46]。
琉球では近年まで猫食が残っており、1999年には無許可で猫肉を販売していた業者が摘発を受けている。一般に肉食性の哺乳類は肉が臭く、脂肪分が少ないため食用に適さず、後述のように薬膳などに限られていた。琉球では古くから喘息に効くと信じられており、現在でも先島諸島の一部では稀に用いられることがあるという。
欧州
スイスには、古くからイヌ・馬とともにネコを食材とした料理が存在し、2011年に新聞によるオンライン・アンケートでは48%が猫を食べたことがあると回答しているが[47]、猫食禁止を主張しているスイス動物保護団体「SOSシャ・ノワレーグ」創設者は、国民の3%が猫を食しているとしている[48]。
東アジア・その他の国
中国やその影響を受けた一部の国では、滋養強壮などの薬膳としてネコを食べる。中国(特に南の方)や朝鮮では、イヌやハクビシンなどとともに食材として日常的に市場で売られている地域もあるほか、寅年に縁起物としてトラの代わりにネコを食べる地域もある[要出典]。
文化の中の猫
ネコを主題とした作品・架空のネコ
ネコはイヌと同様に、人間に身近な動物であることや、擬人化しやすいことから、漫画・文学作品などのフィクションのキャラクターとしても数多く登場する。
ネコの象徴化
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ネコの性格は気まぐれとされ、行動・習慣はむしろ頑固で多分に自己中心的であり、イヌが飼い主の躾によく反応し強い忠誠心を示すのとは対照的であるとされている。これは、イヌが元来群れをつくる動物であり、飼い主を群れの仲間(多くの場合は自分よりも上位)と認識するのに対して、元来単独で行動するネコでは、そのようなことがないのが原因であると言われる。もちろん全てのネコがそうであるわけではない。例えばロシアンブルーは人見知りではあるが飼い主に忠実であり、イヌのようだと言われるメインクーンは部屋から部屋へ飼い主に付いて行ったり、アビシニアンやソマリは人と遊ぶことを非常に好むなど、ネコの品種によっては、人間の生活様式に順応した性格を生まれ持って具えていることも多い。躾ければ、餌をねだる際にイヌのように「お手」をすることも覚える。また、ネコの飄々とした性質や姿形から、幻想的な象徴として描かれることも多い。『マザーグース』にはバイオリン(fiddle)を弾くネコが登場する。またイギリスなどの英語圏では黒猫はクリスマスカードのモチーフとして定番になっている。
農家にとってネズミを捕るネコは豊穰と富を象徴する生き物だったが、豊穰というものは連続する再生(生産)であり、そのための死(消費)をも意味する。ネコの特徴として、光の量によって大きさの変化する瞳が挙げられるが、これは月の満ち欠けに擬えられた。月もやはり死と再生を繰り返すと考えられていた存在である。後世では、この死を司るという特質が強調されるようになり、中世ヨーロッパでは魔女の使い魔と見做されるようになった。
イスラム世界では、預言者ムハンマドがネコを可愛がっていたと伝えられており、現在でもネコは好まれる。
なお、現代では野猫(ノラネコ)は野生化したイエネコそのものを指しているが、『和漢三才図会』でタヌキを「野猫」としているように、古くはタヌキをネコと呼んでいることから、ネコとタヌキは民俗学的には同一の存在である。中国では「狸」の字でタヌキのほかにヤマネコの類をも指したので、イエネコを「家狸」とも称した。
伝説・伝承
昔から日本では、ネコが50年を経ると尾が分かれ、霊力を身につけて猫又や化け猫になると言われている。それを妖怪と捉えたり、家の護り神となると考えたり、解釈は様々である。 この「尾が分かれる」という言い伝えがあるのは、ネコが非常な老齢に達すると背の皮がむけて尾の方へと垂れ下がり、そのように見えることが元になっている。 またスコットランドやハイランドでは同様にネコの妖精ケット・シーの逸話が存在する。
猫又に代表されるように、日本において「3年、または13年飼った古猫は化ける」あるいは「1貫、もしくは2貫を超すと化ける」などと言われるのは、付喪神(つくもがみ)になるからと考えられている[要出典]。 『鍋島騒動』を始め、『有馬の猫騒動』など講談で語られる化け猫、山中で狩人の飼い猫が主人の命を狙う『猫と茶釜のふた』や、鍛冶屋の飼い猫が老婆になりすまし、夜になると山中で旅人を喰い殺す『鍛冶屋の婆』、歌い踊る姿を飼い主に目撃されてしまう『猫のおどり』、盗みを見つけられて殺されたネコが自分の死骸から毒カボチャを生じて怨みを果たそうとする『猫と南瓜』などは、こういった付喪神となったネコの話である。
ほかにも日本人は「招き猫」がそうであるように、ネコには特別な力が備わっていると考え、人の側から願い事をするという習俗があるが、これらも民俗としては同根、あるいは類似したものと考えられる。
以下、ネコにまつわる日本の妖怪変化の数々を紹介していく。これらの話は、ネコが死と再生のシンボルでもあったことの名残りであろう。
- 死者に猫が憑く(岐阜県)
- 飛騨国大野郡の丹生川村(現・岐阜県高山市丹生川町)では、ネコが死者をまたぐと「ムネンコ」が乗り移り、死人が踊り出すと言われ、ネコを避けるために死者の枕元に刃物を置く、葬式のときにはネコを人に預ける、蔵に閉じ込める、といった風習があった。今日もなお、この言い伝えは廃れていない。
- この言い伝えについて、2019年に『岐阜新聞』が調べたところ、岩島周一著『飛騨の諺』(1997年)という書物には旧・丹生川村以外に、旧・上宝村、旧・高山市、旧・荘川村、旧・宮川村、旧・清見村にもよく似た言い伝えがあることが判明した。また、丹生川町の住人から昭和50年代に死者に猫を近づけないようにするという風習があったという証言が得られたが、今は知っている人は少ないことが判明している。[49]。
- 死者に猫が憑く(佐賀県)
- 佐賀県東松浦郡でも、死者にネコの霊が憑くと言われ、これを避けるために死者を北枕に寝かせた上でやはり枕元に刃物を置き、着物を逆さにかけるという[50]。
- 死者の骸(むくろ)を盗む猫(愛知県)
- 尾張国知多郡(現・愛知県知多郡)の日間賀島に伝わる話では、百年以上も歳経たネコの妖怪を「マドウクシャ」と呼び、死者の骸を盗りにくるため、死人の上に筬(おさ、機織機の部品)を置いてこの怪を防ぐという。これと同じく、火葬場や葬列を襲って屍を奪う妖怪は「火車」と呼ばれるが、その正体はネコであることが多い。
- 生者にも猫は憑く
- 生きている人間にネコの霊が憑くという伝承もある。
- 猫の恩返し
- 貧乏な寺に飼われていたネコが、世話になった恩返しのため、野辺送りの棺を空に上げて、飼い主の和尚に手柄を立てさせる『猫檀家』という説話がある[52]。
- 一方、ネコを大事にする風習からネコを神として祀る地域もある。
- 猫神(養蚕との関連)
- 宮城県の村田町歴史みらい館の調査によると、猫の石碑が宮城県に51基(特に仙南の丸森町に多く分布)、岩手県に8基、福島県と長野県に6基ずつ存在することが確認された。さらに、宮城県には猫神社が10カ所あることも確認された。これは、江戸時代に養蚕が盛んだった宮城県南部で、蚕の害獣だったネズミを駆除してくれるネコに対して興った信仰だったようだと同館は見ている。また、山形県高畠町の猫の宮も同じく養蚕の守り神である。ただし、養蚕が盛んだった群馬県では1基も見つかっていない。
- 猫神(漁業との関連)
- 宮城県の仙台湾(石巻湾)に浮かぶ田代島では、「猫神様」が島内の猫神社に祀られている。島では漁業・稲作と並んで、かつて仙南と同様に養蚕が盛んだったためネコを大事にする習慣があったが、猫神は大漁の守護神とみなされており、養蚕との直接的な関係は見られない。同島には昔からイヌはおらず、島内へのイヌの持ち込みも島民から拒否されるほどの「ネコの島」が現在も維持されている。
- 猫返し
- 東京都立川市に在る「立川水天宮 阿豆佐味天神社」内の「蚕影神社」は、養蚕が盛んな地域であった当地にあって、蚕の天敵であるネズミを駆除する猫を守り神として祀っており、飼い猫の無事や健康、いなくなった飼い猫の帰還に利益があるとされ、「猫返し神社」として親しまれ、参拝者が訪れている[53]。
- 愛猫家の間では、中納言行平の詠んだ和歌が猫返しのまじないとして知られている[54]。
立ち別れ いなばの山の みねにおふる まつとし聞かば 今帰り来む — 『百人一首』第16番
- 使い方としては、歌を書き込んだ紙に、いなくなった猫が使っていた食器を被せておく、食事場所や猫のトイレの場所に貼っておく、上の句だけ書いて器を被せ、帰還が叶ったときに下の句を書きこんで願ほどきをする、などがある。
- また、「いなばの山」と「猫返し」に関する伝承として、可愛がっていた猫がいなくなって悲しんでいる下女に、六部がいなばの宇山にいると教える「猫山」の民話が山口県、広島県、鳥取県などで採集されている[55][56]。
俗信・迷信
- 黒猫が通る
- 日本では、ネコに道を横切られると縁起が悪いとも良いとも言われる。黒猫に前を横切られることを不吉として忌むのは、”A black cat crossing one's path by moonlight means death in an epidemic(月夜に黒猫が横切ぎると、横切られた者が流行病で死ぬ)”というアイルランドの迷信を起源とするものであり、イギリスではむしろこれを幸運の印とすることが多い(黒猫は幸運のシンボルであり、それが自分の前を通り過ぎて行く→幸せが逃げて行く、とも解釈出来る)。また、黒猫を飼うと商売が巧くいくとも言われ(福猫と呼ばれた)、店舗などを営む自営業者が好んで飼う場合もある。
- 猫には九つの命がある
- 欧米では、人間から見て命がけのような行動をする猫を、9つ分の命がないと生きていけないと思われた。
- 漁師の黒猫
- イギリスでは、黒猫を飼っていると海難事故を避けられると信じられていた。
- 幸運を運ぶ黒猫
- スコットランドでは、玄関先に知らない黒猫がいると繁栄の兆しと信じられていた。
- 猫のくしゃみ
- イタリアでは猫のくしゃみを聞くと縁起が良いと信じられていた。
- 死を招く黒猫
- 16世紀のイタリアでは、黒猫が病人のベッドに寝そべると、その病人に死が訪れると信じられていた。
- Matagot
- フランスでは、黒猫を大事に世話すると、お返しに富をもたらすと信じられていた。
- 猫と小川
- フランスでは、猫を抱えて小川を渡るのは縁起が悪いと信じられていた。
- 尻尾を踏むと婚期が遅れる
- フランスでは、若い未婚の女性が猫の尻尾をふむと、1年間婚期が遅れると信じられていた。
- 新居に幸運をもたらす猫
- ロシアでは、新しい家のドアを最初に入ったのが猫だと家の持ち主に幸運が訪れるとの言い伝えがある[57]。
- 猫と噂
- オランダでは、猫が街で噂を広めていると信じられていた。
- 事故死を招くサビ猫
- ノルマンディーでは、サビ猫を見ると事故死の前兆と信じられていた。
- 死後の世界へお供する猫
- フィンランドでは、死後の世界へ旅する魂に猫がお供すると信じられていた。
- 悲運の七年
- アイルランドでは、猫を一匹殺すと、運の悪い七年間が続くと信じられていた。
- 猫が居つきますように
- アメリカ合衆国では、新居に移るときは猫を窓から入れると、家から離れないと信じられていた。
- 縁起の悪い白猫
- アメリカ合衆国では、夜間に白猫を見るのは縁起が悪いとされていた。
- 幸運を呼ぶ猫肉
- エウェ人は、猫を珍味として食し、特に頭を食べると幸運が訪れ、未知の土地で死ぬことを免れると信じていた。[要出典]
- 縁起の悪い黒猫
- ガーナでは、黒猫が夢に出てくると凶兆と信じられていた。
- 猫と犬の雨が降る
- 英語では「土砂降りの雨」を指して「raining cats and dogs」という。
- 日本と欧米での相違
- 猫の好物は、日本では鰹節だが、欧米ではミルクとされる。また、欧米では猫と犬は仲が悪いとされる。
- 新居のドアを最初に猫にくぐらせる。
- ロシアや極東の風習で、悪いものを見つけ追い出し、家族に幸運をもたらし、居心地のよい家になるという[58][59][60][61]。
猫年・猫座
ネコは、東洋では十二支の動物になり損ねた動物の一つということになっている。ただ、十二支の選に洩れた理由として広く語られるネズミの計略による遅延との逸話は後世の創作で、12種の動物が選ばれた時代の中国においてはネコはまだ一部の貴人に飼われ始めたばかりで、庶民には全く馴染みがなかったことが本当の理由であるとされている[要出典]。対して、竜が選出されているが、これは、架空の動物であっても皇帝の象徴としてこれを知らない者などいなかったためである。
中国の影響を受けつつ、しかし中国より遅れて十二支を整えたタイやベトナムでは、卯(ウサギ)に代えて、もうそのころには一般的になっていた[要出典]ネコを選び出している[62]。
西洋の星座にも、ねこ座は見当たらない。ただし、17世紀になってポーランドの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスが「やまねこ座」を、18世紀には猫好きだった天文学者のジェローム・ラランドが「ねこ座」をそれぞれ作成している。しかしねこ座については認められず、現在では残っていない。
サブカルチャーの世界における猫の扱い
注釈
出典
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- 1 ネコの文化とは
- 2 ネコの文化の概要
- 3 キャットショー
- 4 ネコの名を持つ生物
- 5 脚注
- ネコの文化のページへのリンク