はどう‐せつ【波動説】
光の波動説
(波動説 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 04:08 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動光の波動説(ひかりのはどうせつ、英: wave theory of light)とは、「光の本質は、何らかの媒質内を伝播する波動である」という仮説である。
概要
ホイヘンスの提唱による。1690年に刊行した自身の著書『光についての論考』内で、回折など光に関する波動としての性質を論じ、それらの性質をホイヘンスの原理と呼ばれる1つの原理に纏め上げた。ホイヘンスは同書内において、光が波であるならば、それを伝播する何らかの媒質があって然るべきと考え、その媒質としてエーテルと言う物質を提案した。すぐ後に、ニュートンによる光の粒子説が提唱され、それぞれの説は対立するようになった。
1723年に、波動説によらなければ説明できない現象がジャコーモ・フィリッポ・マラルディによって発見されている。この現象は19世紀初頭の1811年頃から1816年にかけてフランソワ・アラゴによって追試が行なわれた事からアラゴスポットと呼ばれる様になり、波動説を補強する一因となった[1]。
その後、1805年頃に光の干渉に関するヤングの実験がヤングによって行なわれ、1835年頃にはフレネルによってホイヘンスの原理が補完され、光は偏光している横波であるとの結論が得られた事に加え、1850年にフーコーが、翌1851年にフィゾーがそれぞれ独立に空気中での光速度が水中での光速度より大きいと言う事実を実験で確認した事により、波動説がほぼ確立された。さらに、1845年にファラデーが自身の実験によって発見したファラデー効果により[2][3]、光は電磁場の影響を受けることが判明し、1865年にマクスウェルが発表した電磁気学に関する論文『電磁場の動力学的理論』[4]内で纏められたマクスウェル方程式により、光が電磁波の一種である事が示唆された。1888年にヘルツが行なった実験によって電磁波も反射や屈折及び干渉や偏光と言った光と同じ性質を持っていることが判明して、光は電磁波の一種らしいということで、光は波動だとする見方は強まった。
しかし、それら電磁波についての
- 波であるとするならば、その媒質は何であるのか
- マクスウェル方程式からはその速さは一定であるということになるが、互いに運動している観測者の間では相対的にどういうことになるのか
と言った疑問点については、後にアインシュタインが登場するまでは大きな謎として様々な説が議論された。
そういった謎の1つとして、いわゆる「エーテルの風」によって予想されるような現象を検討するマイケルソン・モーリーの実験が1887年に行なわれた[5]。この実験で、エーテルの風を有意に示すような結果は得られなかった[注 1]。1905年にアインシュタインが発表した特殊相対性理論に関する論文『運動物体の電気力学について』[6]に至り、光速はいかなる(相対)運動をしている観測者からも不変である、ということになり、「光速の基準となるエーテル」の存在は考える必要が無いものとなった[注 2]。
一方で同じアインシュタインによる、「光量子仮説」は、光電効果においてそれまで不思議とされてきたいくつかの現象をうまく説明するものであり、波であるはずとする数多くの実験結果が重ねられてきた光について、粒子説の復活とも言えるような新たな展開をもたらすものであった。最終的に光子(光量子)、更には「量子」という名で呼ばれることになった多くの粒子や波動は、粒子と波動の二重性を持つものである、と言う結論が量子力学によりもたらされた。また、媒体は「場」というものとして、現代の物理学では扱われている。
脚注
注釈
出典
参考文献
原論文
- Maxwell, James Clerk (October 27, 1865). “A dynamical theory of the electromagnetic field” (PDF). Phil. Trans. R. Soc. Lond. 155: 459-512. doi:10.1098/rstl.1865.0008 .
- Michelson; Abraham, Albert; Morley; Williams, Edward (November 1887). “On the Relative Motion of the Earth and the Luminiferous Ether” (PDF). American Journal of Science. Series 3 34 (203): 333-345. doi:10.2475/ajs.s3-34.203.333. ISSN 0002-9599. OCLC 643884995 .
- Einstein, A. (June 30, 1905). “Zur Elektrodynamik bewegter Körper” (PDF). Annalen der Physik 322 (10): 891-921. Bibcode: 1905AnP...322..891E. doi:10.1002/andp.19053221004. ISSN 0003-3804. LCCN 50-13519. OCLC 5854993 .
書籍
- 洋書
- Hellemans, Alexander; Bunch, Bryan (1 November 1988). The Timetables of Science: A Chronology of the Most Important People and Events in the History of Science. New York, New York: Simon & Schuster. p. 261. ASIN 0671621300. ISBN 978-0671621308. NCID BA07810181. LCCN 88-23920. OCLC 18442038
- Faraday, Michael; Day, Peter (February 1, 1999). The Philosopher's Tree: A Selection of Michael Faraday's Writings. Volume IV, Nov. 12, 1839 - June 26, 1847 (Thomas Martin ed.). London: George Bell and Sons, Ltd. ASIN 0750305703. ISBN 0-7503-0570-3. NCID BA42170747. OCLC 45727945
- Faraday, Michael (July 15, 2004). Experimental Researches in Electricity. 2. Mineola: Dover Publications. ASIN 0486435059. ISBN 0-486-43505-9. NCID BA70021971. OCLC 54529642
- 和書
- 児玉帯刀「11.1. 光の本質」『光』槇書店〈物理学要点シリーズ〉、1975年6月30日(原著1964年4月10日)、第8版、538-540頁。 ISBN 978-4837502036。 NCID BN04358996。ASIN 4837502032。
- 櫛田孝司「1.2. 光物理学の歴史」『光物理学』共立出版〈共立物理学講座 (11)〉、1983年10月1日、初版、3-9頁。全国書誌番号: 84005994。 ISBN 978-4320030374。 NCID BN00513088。 OCLC 673182716。ASIN 4320030370。
- 『物理小事典』三省堂、2008年(原著1994年4月)、第4版。全国書誌番号: 94041161。 ISBN 978-4385240169。 NCID BN10774805。 OCLC 675375379。ASIN 4385240167。
関連項目
外部リンク
- ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『光の波動説』 - コトバンク
- Wave theory of light - ブリタニカ百科事典(英語)
波動説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 05:34 UTC 版)
波動説は、波動が太陽内部から彩層やコロナへエネルギーを運ぶとする説で、1949年にエヴリー・シャツマンによって提唱された。太陽は通常のガスではなくプラズマでできているため、空気中の音波に似たいくつかの種類の波を伝達する。中でも最も重要な波は、磁気音波とアルヴェーン波である。磁気音波は磁場の存在によって変化した音波であり、アルヴェーン波はプラズマ中の物質との相互作用によって変化した超低周波電波に似ている。どちらのタイプの波も、光球での粒状斑対流や超粒状斑対流の乱れによって打ち上げられ、熱としてエネルギーを散逸させる衝撃波へと変わる前に太陽大気を通ってある程度の距離までエネルギーを運ぶことができる。 波動説の問題点の一つは、適切な場所への熱の運搬である。磁気音波は、彩層の圧力が低いこと、および光球に反射して戻ってくる傾向があることから、十分なエネルギーを彩層を通ってコロナまで運ぶことができない。アルヴェーン波は十分なエネルギーを運搬することができるが、コロナに入ってからはそのエネルギーを急速に散逸させることができない。プラズマ中の波動は、解析的に理解し記述することが難しいことがよく知られている。しかし、2003年にThomas Bogdanらによって行われたコンピュータシミュレーションでは、アルヴェーン波がコロナの底部で他の波動に変化し、光球から彩層、遷移領域を通って大量のエネルギーを運び、最終的にコロナに入って熱として散逸する経路を提供できることが示されているようである。 波動説のもう一つの問題は、1990年代後半まで、太陽コロナを伝搬する波の直接的な証拠が全くなかったことである。太陽コロナに流れ込み伝搬する波が直接観測されたのは、1997年、太陽を極端紫外線で長時間安定して測光観測できる初の宇宙機であるSOHOによるものであった。これは、周波数約1ミリヘルツ(mHz、1000秒周期に相当)の磁気音波で、コロナの加熱に必要なエネルギーの10%程度しか運べないものだった。太陽フレアで放出されたアルヴェーン波のような局地的な波動現象は数多く観測されているが、これらは一過性のものであり、コロナの一様な熱を説明できるものではない。 コロナを加熱するためにどのくらいの波のエネルギーが利用できるのかは、まだ正確にはわかっていない。2004年に発表されたTRACEのデータを用いた結果によると、太陽大気には100 mHz(10秒周期)という高い周波数の波があるようである。また、SOHOに搭載されたUVCS装置を用いて太陽風の中のさまざまなイオンの温度を測定した結果、人間の可聴域にある200Hzという高い周波数の波があることを間接的に示す強い証拠が得られた。これらの波は、通常の環境下では検出することが非常に困難だが、ウィリアムズ大学のチームによって日食の間に収集された証拠は、1 - 10Hzの範囲でそのような波が存在することを示唆している。 2009年、ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリーに搭載されたAIA (Atmospheric Imaging Assembly) による観測で、太陽下部大気のほか、静穏領域やコロナホール、活動領域でもアルヴェーン派による振動が発見された。これらの振動は非常に大きなパワーを持っており、以前に「ひので」で報告された彩層でのアルヴェーン波と関連しているものと考えられている。 2008年には、NASAの宇宙機WINDによる太陽風の観測から、局所的なイオン加熱をもたらすアルヴェーンサイクロトロン散逸の理論を支持する証拠が示された。
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「波動説」の例文・使い方・用例・文例
- (光の)波動説.
- いくつかの特性は波動説、他のものは粒子論により最も良く説明されるという事実により特徴付けられる物質と電磁放射の特性
- 重ね合せの原則は、光の波動説の基礎である
- 英国の科学者で、弾性の法則を定式化し、光の波動説を提案し、惑星運動の理論を定式化し、重力の逆二乗の法則を提案し、コルクの細胞組織を発見し、『細胞』という用語を生物学に取り入れ、腕時計のひげぜんまいを発明した(1635年−1703年)
- オランダの物理学者で、光の波動説を最初に定式化した(1629年−1695年)
- 波動説という学説
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