弾性の法則とは? わかりやすく解説

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だんせい‐の‐ほうそく〔‐ハフソク〕【弾性の法則】

読み方:だんせいのほうそく

フックの法則


フックの法則

(弾性の法則 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/27 06:36 UTC 版)

長さ変化が微小な時、フックの法則はありふれた力学的ばねの物理的性質を正確に表す(アニメーションも参照)。
連続体力学


フックの法則(フックのほうそく、: Hooke's law)は、力学物理学における構成則の一種で、ばねの伸びと弾性限度以下の荷重は正比例するという近似的な法則。弾性の法則(だんせいのほうそく)とも呼ばれる。

フックの法則が近似として成り立つ物質を線形弾性体またはフック弾性体 (Hookean elastic material) と呼ぶ。

概要

フックの法則は17世紀のイギリスの物理学者ロバート・フックが提唱したものであり、彼の名を取ってフックの法則と名づけられた。

フックは1676年にラテン語アナグラムでこの法則を記述し[1]、1678年にアナグラムの答えが: Ut tensio, sic vis (: As extension, so is force)、即ち

伸びとともに、力あり。(力は伸びに比例する。)

であると発表した。

フックの法則に従う系では、荷重は伸びに正比例し

低炭素の応力-ひずみ線図。フックの法則は曲線全体のうち、原点と降伏点の間の一部でしか成り立たない。
1. 極限強さ
2. 降伏応力(降伏点)
3. 破断強さ(破断点)
4. 塑性硬化領域
5. くびれ領域
A: 公称応力 (F/A0)
B: 真応力(実応力) (F/A)

最もよく使われる形式のフックの法則はおそらくばねの方程式だろう。ばねの方程式では、力とばねの自然長からの伸びがばね定数 全体のばね定数 縮まる距離の関係 蓄えられるエネルギー

導出

ばね定数(直列)
直列の場合におけるの導出は、並列の場合よりも難しい。ブロックの釣り合いの位置をと定義し、ブロックに働く力についての

という形式の方程式を求める。

まず初めに、2つのばねの間の点の釣り合いの位置をと定義する。

ブロックに働く力は

である。

一方、2つのばねの間に働く力は

である。

今ブロックを押したとすると、ばねが圧縮されて系は釣り合うようになる。このとき、ばねの間に働く力は和が0にならなくてはならないため、である。よってを求めることができる。

よって

である。

ここでこの式を(1)式に代入して

故に、以下のようにブロックに働く力を求めることが出来る。

よって丸括弧全体を見かけのばね定数として定義することが出来る。

これは以下のように書き直すこともできる。

ばね定数(並列)
並列の場合には両方のばねがブロックと壁に接していなくてはならないため、2つのばねの圧縮量は常に等しくなる。

ブロックに働く力は

であり、これを整理してブロックに働く力は となる。

よって、ばね全体の見かけのばね定数を

と定義することが出来る。

縮む距離
直列の場合、2つのばねに働く力の大きさは等しい:

ばね1では、は釣り合いの長さからの距離であり、ばね2ではが釣り合いの長さからの距離である。よって

と定義する。

これらの定義を先ほどの力の関係式に代入すると、直列の場合における縮む距離の関係を得ることができる。

蓄えられるエネルギー
直列の場合、ばねに蓄えられるエネルギーの比は

である。しかしここで、には先に求めた関係があるため、それを代入して

を得る。

平行の場合、

2つのばねの縮まる距離は等しいため、この式を約分して

と単純に表すことができる。

フックの法則のテンソル表現

3次元の応力が働いている状態では、81個の弾性係数をもつ4階の弾性係数テンソル ()、応力テンソル ()、ひずみテンソル、またはグリーンのひずみテンソル)が定義され、以下の関係をもつ。

弾性係数テンソルは81個の弾性係数をもっているが、応力テンソル、ひずみテンソル、剛性テンソルの対称性により、異方性を示す物質でも21個の弾性係数のみが独立である。

応力は圧力の単位で表され、ひずみは無次元量である時、の成分も圧力の単位で表される。

大ひずみに関しての一般化としては、ネオ・フック固体 (neo-Hookean solid) やムーニー=リブリン固体 (Mooney-Rivlin solid) によって与えられる。

等方性物質

等方性物質はその性質が方向によって変化することの無い物質のことである。そのため等方性物質に関連する物理の方程式は、その系を表す座標系に拠ることは無い。ひずみテンソルは対称テンソルとなる。どのようなテンソルのも座標系に拠らないため、対称テンソルの最も完全な座標系非依存の分解の方法は、対称テンソルを定数テンソルと跡が0の (traceless) 対称テンソルの和として表現する方法である[2]

よって

ここでクロネッカーのデルタである。右辺の第一項が定数テンソルで、圧力として知られる。第二項が跡が0の対称テンソルで、せん断テンソルとして知られる。

フックの法則の等方性物質における最も一般的な形式は、これら2つのテンソルの線型結合として書き直すことができ、

である。ここでK体積弾性率であり、Gせん断弾性率である。

弾性係数の間の関係を用いて、これらの等式は違った形で表現することができる。例えば、ひずみは応力テンソルを用いて

と表すことができる。ここでヤング率でありポアソン比である。

3Dにおけるフックの法則の導出
3次元の形式のフックの法則はポアソン比と1次元のフックの法則を用いて以下のように導出することができる。ひずみと応力の関係を
  • 荷重の方向への伸び (1)
  • (荷重によって引き起こされる)荷重方向に対して垂直方向への縮み (2, 3)

という2つの効果の重ね合わせとして考える。

ここでポアソン比でありヤング率である。2, 3の方向についても荷重についての類似した等式、

とを得る。これら3つの場合を一緒に足し合わせて ()、以下を得る。

または以下のように整理できる。

これをについて解くと、

となる。総和を計算して


そしてについて解いた方程式に代入して

,
,

ここでラメ定数である。2と3の方向についても同様の取り扱いをすることで、3次元におけるフックの法則を求めることができる。

ゼロ長ばね

ゼロ長ばね、ゼロ長スプリング、零長スプリング (Zero-length spring) とは自然長がゼロであるばねを表す用語である。このばねにおいては、ばねによる力はばねの伸びではなく、ばねの長さそのものに比例するような振る舞いを示す。

関連項目

参考文献

  1. ^ アナグラムは ceiiinossssttuu だったアーカイブされたコピー”. 2010年11月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月17日閲覧。(リンク先はカテナリー曲線に対するアナグラムであるが、次の段落にこの記述がある)
  2. ^ Symon, Keith (1971). Mechanics. Addison-Wesley, Reading, MA. ISBN 0-201-07392-7
  • A.C. Ugural, S.K. Fenster, Advanced Strength and Applied Elasticity, 4th ed
  •  Symon, Keith (1971). Mechanics. Addison-Wesley, Reading, MA. ISBN 0-201-07392-7 

外部リンク


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