航空自衛隊救難隊の出動
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「日本航空123便墜落事故」の記事における「航空自衛隊救難隊の出動」の解説
19時54分、茨城県の航空自衛隊 百里基地所属の救難隊が、MU-2S救難捜索機、KV-107ヘリコプターを、災害派遣要請がないまま発進。KV-107ヘリコプターは、20時42分に現場上空に到着した。 事故発生直後、事故現場上空で捜索救難活動を行った航空自衛隊百里救難隊所属の救難ヘリコプターKV-107で救援活動に携わった元自衛官メディック(救急医療従事者)の一人が回想録を記している。 救難隊は、2機のヘリコプターを交代で現場に派遣し、救難活動を行った。21時05分ごろ、第2次出動隊は現場に到着し、隊員を降下させる場所を探すため高高度での偵察を開始した。だが、墜落現場は無数の火柱が合わさって巨大な火炎となり、黒煙と闇夜でサーチライトを照射してもライトが届かず地上の様子がわからなかった。22時20分ごろ、中高度まで降下して再度降下地点を探したが、送電線に阻まれ選定できなかった。23時頃、指揮所から「地上で立ち往生している数十台の消防車両を現場まで誘導せよ」と指示が入ったが、消防車と無線交信ができず、誘導は失敗した。 救難隊が現場上空で救助ができない理由を以下のように語っている。 偵察飛行を継続しながら、機上クルー間で他の救助方法での実行可能性について激論を交わした。主内容は、救難員のパラシュート森林降下、ホイストケーブルに救助用ロープを縛着しての高高度ラペリング降下、洋上救難に使用する照明弾の灯りにより視界を確保した上でのアプローチ、近くの村の広場への強行着陸等であったが、当時のパラシュートでは傘操縦性能が悪く、気流により巨大火炎の真っ只中へ着地してしまう恐れがある。また、強行着陸等も障害物の把握がされていない為、2次災害のリスクが大きくどれも実行可能性は難しいとの結論になった。 13日午前1時、埼玉県の入間基地に帰投していたKV-107ヘリコプターが再び現場に到着した。火炎等の状況は2時間前と殆ど変わっておらずアプローチは困難との判断だったが、現場偵察を続け、アプローチが可能になれば即座に進入できる体制は整えていた。しかし、実際には午前5時の夜明けを過ぎても待機場所である入間基地を飛び立たず、午前6時半にようやく入間基地を発進、現場上空から焼損した尾根付近を目視で生存者の捜索を行った。その後のちに生存者が発見された菅の沢付近へと近づきホイスト降下(ホイストで降下し救難者を吊り上げることが可能)しようとした直後、陸上自衛隊第一空挺団がリペリング降下(戦闘員がロープだけで降下する降下方法で吊り上げはできない)するので退去せよとの命令が無線で入り、現場を急遽離脱した。そのため、航空自衛隊救難隊のKV-107は後方支援にまわった。 このときの様子をのちの救難隊救難員の回顧録で以下のように語っている。 上空からの捜索では生存者の発見は困難と判断し救難員2名がホイスト降下することになった。救難員は、山岳進出の準備を完了し機長に対して「救難員降下準備よし!」と報告すると「了解」の応答に間髪入れず、「スタンバイ」「スタンバイ」「待て」と少し上ずったボイスに引き続いて「ブレーク(現場離脱)」「無線モニター」との連絡が入った。何かの緊急事態が発生したのではないかと耳を研ぎ澄ませて聞くと「間もなく、第1空挺団のレンジャー部隊がリペリング降下を実施する。現場にいる航空機は直ちに退去せよ。」とのことであった。 墜落後初めてのヘリコプターからの降下は午前8時30分の長野県警機動隊、2番目の降下が午前9時の陸上自衛隊第一空挺団からとなり、生存者の引き上げも陸上自衛隊のヘリで行っている。 実際の墜落位置:北緯35度59分54秒、東経138度41分49秒(事故調資料) 捜索救難活動と墜落地点の測位結果時刻発見者・発表者報告、活動計測位置墜落地点からの誤差18時56分ごろ 東京救難調整本部(運輸省航空局) レーダー消失地点18時59分、自衛隊、警察、消防に通報 羽田方位308度59マイル北緯36度02分、東経138度41分 北約3.7km 18時56分ごろ 航空自衛隊 レーダー(千葉県南房総市愛宕山)消失地点 横田TACAN方位302度36マイル 東約9.4km 19時15分 アメリカ空軍C-130輸送機 火災発見 横田TACAN方位305度34マイル 北東3km 19時21分 航空自衛隊F-4戦闘機 炎を確認 横田TACAN方位300度32マイル 南東約6km 20時42分 航空自衛隊救難隊KV-107ヘリコプター 炎を確認 横田TACAN方位299度35.5マイル 南西4km 21時10分 朝日新聞社ヘリコプター「ちよどり」 報道取材で現場上空に到着、炎を確認 羽田方位304度60マイル 23時35分 朝日新聞社ヘリコプター「ちよどり」 報道取材、自衛隊が運輸省に通報した御座山付近には墜落の形跡がないことを確認 羽田方位304度60マイル 01時00分 航空自衛隊救難隊KV-107ヘリコプター 地上の捜索隊(警察)を誘導しようとしたが失敗 入間TACAN方位291度36.3マイル 南南西2km 04時39分 航空自衛隊救難隊KV-107ヘリコプター 上空より墜落現場確認 三国山西約3km扇平山北約1km 南西3km 05時00分 陸上自衛隊HU-1Bヘリコプター 日の出とともに上空より墜落現場確認 三国山北西約2km 南南東1km以下 05時33分 航空自衛隊KV-107ヘリコプター 上空より墜落現場確認 三国峠方位340度3km 北北東1km 05時37分 長野県警察ヘリコプター 上空より墜落現場確認 08時30分 長野県警察ヘリコプター 墜落現場に機動隊員2名ラペリング降下 09時00分 陸上自衛隊ヘリコプター 墜落現場に空挺団員降下:陸路で捜索隊到着
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