航空機用ジェットエンジンにおける世界最有力企業の一つへ
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「ロールス・ロイス」の記事における「航空機用ジェットエンジンにおける世界最有力企業の一つへ」の解説
第二次世界大戦以前のロールス・ロイス社は、数ある民生用高級自動車メーカーの一つに過ぎなかった。しかし、第二次世界大戦から航空機用ジェットエンジンの製造経験を蓄積する事により、今日では米ゼネラル・エレクトリック社、米プラットアンドホイットニー社に並ぶ、航空機エンジンにおける世界最有力メーカーの一つとなっている。また、航空機用エンジンの技術により、国家の安全保障に重要な役割を果たす存在となっている。 遠心式ジェットエンジン 1942年、フランク・ホイットルに源流を持つ遠心式ジェットエンジンに関するプロジェクトであるW.2B プロジェクトを、ロールス・ロイスはローバーから工場・人員ごと引き継ぐこととなった。航空機レシプロエンジン用機械式過給器の専門家スタンリー・フッカー(後のRB211のトラブル解決に活躍する)らのチームが W.2B の開発を引き継いだ。 シースルーモデルで気流解析を重ね W.2B の本質的欠陥を把握したフッカーらは、ローバーで半完成状態にあった W.2B/23 (B.23) 案に技術的洗練を加えた。ロールス・ロイスが持てる要素技術とノウハウを注入したこのエンジンW.2B/23C (B.23C) は、「ウェランド」(ロールスロイス ウェランド)と命名された。本機は実戦に耐える水準にまで改良されており、1943年に英初のジェット戦闘機グロスター ミーティア F.1 向けに量産開始し、総計167基が生産された。 続いてロールス/ロイスは、ローバーとホイットルの反目の原因になっていた改設計型 W.2B/26 (B.26) 案の実用化に着手した。この W.2B/26 (B.26) に、一足先に実用化段階に達していたハルフォード H.1(後のデ・ハビランド ゴブリン)と同様の改良を施し、推力・安定性共に大幅に向上し、また構造が簡素化され製作容易にもなった。このエンジンは「ダーウェント」と命名され、習作色の強いウェランドと直ちに代替した。 さらに、ロールス・ロイスは、アマチュア的で不安定かつ発展性が見込めない W.2 の基本設計を離れ、更にホイットルへの特許料支払回避も兼ねて、スタンリー・フッカーらのチームの手で白紙の状態から設計し直したエンジンを作り上げた。このエンジンは「ニーン」と命名され、1944年8月に初火入れした。この「ニーン」は、遠心圧縮式ターボジェットエンジンの一つの完成形である。「ニーン」は、第二次世界大戦後、初期のジェット戦闘機に数多く採用された。 なお、この「ニーン」は戦後発足したアトリー労働党政権の誤った判断により、ソ連に供与されてしまった。「ニーン」はソ連技術陣によりデッドコピーされ、ソ連はRD-45、さらにはクリーモフVK-1として大量生産され、MIG-15やMIG-17に搭載された。 特に朝鮮戦争においてMIG-15の脅威は深刻であり、連合軍は一時38度線を越えて平壌を制圧していたものの、MIG-15の出現により制空権が奪われ、それに勢いづいた中朝軍により平壌・ソウルを奪回されてしまった(ソウルは後に国連軍が再奪還する)。 また、ロールス・ロイス「ニーン」のコピーに関する経験がソ連に技術的蓄積を授けることとなり、今日のロシア・中国などの東側戦闘機の脅威を生む源流となった。 軸流式ジェットエンジン 遠心式よりも機械的特徴が航空機に向く軸流式ジェットエンジンは、構造がより複雑であり、第二次世界大戦中においてはドイツが独走状態にあった。これらの分野のドイツ人技術者は、敗戦と同時に米ソが奪い合う形で自国に招聘していたため、英仏は独自開発を余儀なくされ、スタートラインから大きく出遅れていた。 ロールスロイス社は、軸流式ジェットエンジンを1945年に開発着手、1947年に初火入れされたが、サージング問題等の産みの苦しみに悩まされ、1948年に一応の実用化を果たしたものの、機械的に信頼性に足るものは1950年から量産された。これら一連のシリーズは「エイヴォン」と命名された。「エイヴォン」は堅実な設計が奏功して、航空機用の生産が1950年から1974年まで続けられ11000基以上が生産されたのみならず、船舶・産業動力向ガスタービンエンジンとしても現用中である この他にも、ロールス・ロイスは「エイヴォン」から連綿と多種の軸流式ジェットエンジンを作り続けているが、特に注目すべきものとして、世界初のターボファンエンジン「コンウェイ」、ターボファンエンジン「スペイ」「RB211」「テイ」、そして今日の「トレント」などが挙げられる。RB211 1960年代、大型ジェット旅客機「L-1011 トライスター」向けに開発中だった、新機軸を大幅に盛り込んだ世界初の3軸式ターボファンエンジンRB211がトラブルを招いた。同エンジンへの搭載が試みられた炭素繊維複合材料製のターボファンブレードであるHyfilはバードストライクの試験に合格できず、また採用試験運転中にファイバーが剥がれ落ちてしまう事故も発生した。振動特性の違いなどからターボファンのみを通常の金属製に変更することは不可能であり、エンジン全ての再設計が必要となった。この経過は、ロールス・ロイスにとって莫大な経済的損失となった。
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