自縄自縛
『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第50章 バルドルの死(*→〔契約〕1)の原因を作ったロキを、激怒した神々が追う。ロキは隠れ家にひそみ、神々が自分を捕えるためどんな方法をとるか考えつつ、亜麻糸で網を作る。神々が近づいたので、ロキは網を火に投げこみ、鮭に変身して川にとびこむ。神々は灰をもとに網を作り上げ、それでロキを縛る。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章 エジプトに9年間不作が続いた時、キュプロスから来た予言者プラシオスが、「異邦人を殺して毎年ゼウスに捧げれば、不作はやむだろう」と言った。ところが、予言者プラシオス自身が「異邦人」という条件に該当したので、エジプト王ブシリスはまず最初に彼を殺した。
*→〔人柱〕1aの『雉も鳴かずば』(昔話)・『神道集』巻7-39「橋姫明神の事」。
『三国志演義』第17回 農民が軍隊の通るのを恐れ麦を刈らないので、曹操は「行軍中に麦を踏んだ者は、兵でも将でも斬首する」との布令を出す。ところが、曹操の乗った馬が鳩に驚いて麦畑に踏みこんでしまう。曹操は自らの首を刎ねようとするが、皆に止められ、代わりに髪を切り落とす。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第1日第2話 7人の女が、王子の愛する妖精を殺す(のちに蘇生する)。王子が「妖精を傷つけた者をどう処罰すべきか」と問われ、7人の女は酒を飲んだためか「泥沼に生埋めの刑がよい」と口走ってしまい、そのとおりの罰を受ける。
*自ら、樽に入れられる刑罰を提案する→〔樽〕5の『がちょう番のおんな』(グリム)KHM89・『白い花嫁と黒い花嫁』(グリム)KHM135・『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第8話。
『ギリシア奇談集』(アイリアノス)巻6-10 「両親ともにアテナイ市民でなければ、生まれた子は市民権を得られない」とする法律を、ペリクレスが制定した。ところが疫病のため、当のペリクレスの2人の嫡子は死んでしまい、市民権のない庶子だけが生き残った。
『ギリシア奇談集』(アイリアノス)巻13-24 アテナイ人クレイステネスは陶片追放の制度を創設した。ところが最初にその該当者と判定されたのは、当のクレイステネス本人であった。
『ギリシア奇談集』(アイリアノス)巻13-24 エレウシスの秘儀に詣でる際、「女子は車駕を用いてはならぬ」との法案を、リュクルゴスが起草した。この法令に背いた最初の女はリュクルゴスの妻で、彼女は有罪とされ罰金を支払った。ザレウコスもまた、自らの作った法律で息子を裁いた→〔片目〕5。
『史記』「商君列伝」第8 秦の商君(商鞅)は厳しい法律を作って民を治めるが、後には、自分の作った法律のために捕えられる。彼は「謀叛の企てあり」と密告されて都から逃げ出し、旅館に一夜の宿を請う。旅館の主人は客が商君とは知らず、「商君の法律により、旅券を持たぬ人を泊めることは禁じられている」と断る。
『明石物語』(御伽草子) 舅多田刑部が、婿明石三郎を毒殺しようと謀り、多田の家臣入江が毒酒を用意して、明石三郎に飲ませる。しかし熊野権現の守護で明石三郎は無事であった。毒酒の効かぬことを不審に思った入江は、自分でその酒を飲んでみて、たちまち死んだ。
『英雄伝』(プルタルコス)「テセウス」 プロクルステス(ダマステス)は、旅人の身の丈を無理に寝床に一致させて殺していた。テセウスが、彼を同じ目にあわせて殺した〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要1では、大小2つのベッドを用意し、短身の客は大きいベッドに寝かせてベッドと等しくなるまで槌で打ちのばし、長身の客は小さいベッドからはみ出た部分を鋸で切った、と詳しく記す〕。
『エステル記』第2章~第7章 ペルシアのクセルクセス(アハシュエロス)王の寵臣ハマンは、ユダヤ人モルデカイを殺すために、高さ50アンマ(キュビト)の処刑用の柱を立てる。ところが、モルデカイの養女であった王妃エステルが、ハマンの陰謀を王に訴えたので、王は、「ハマンが立てた柱にハマン自身をかけよ」と命じた。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第16章 シニスは、通行人に松を曲げさせてそれを持たせ、松のはね上がる力で人々を殺していた。そこへテセウスがやって来て、シニスを同じ目にあわせて殺した〔*『英雄伝』(プルタルコス)「テセウス」に類話〕。
『古事記』中巻 兄ウカシは、御殿の内に押機(おし)をしかけ、カムヤマトイハレビコ(=後の神武天皇)をおびきよせて圧殺しようとする。しかし、弟ウカシが、そのたくらみをカムヤマトイハレビコに告げたため、兄ウカシ自身が御殿の内に追い入れられ、押機に打たれて死んだ〔*『日本書紀』巻3神武天皇即位前紀戊午年8月に類話〕。
『ヘンゼルとグレーテル』(グリム)KHM15 魔女が、グレーテルをパンがまの中へ入れて丸焼きにし、食べようとする。グレーテルは、「どうやってかまの中に入るのかわからない」と言う。魔女が「見本を示そう」とかまに頭をつっこんだ時、グレーテルが後ろから突きとばし、鉄の戸をしめる。
*自分が掘った落とし穴に落ちる→〔落とし穴〕4の『隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)』。
*自分が用意した毒剣で傷を負う→〔剣〕5bの『ハムレット』(シェイクスピア)第5幕。
*自分が発明した処刑具で処刑される→〔処刑〕5aのギロチンの伝説。
*自分が用意した毒酒を飲む→〔すりかえ〕6の『僧正殺人事件』(ヴァン・ダイン)。
*自分が用意した毒薬を口に入れる→〔毒〕1の『本朝二十不孝』巻1-1「今の都も世は借物」。
*自分が作った毒入り弁当を食べる→〔毒〕8の『まま母の悪計(わるだくみ)』(沖縄の民話)。
*自分が放った毒蛇に噛まれる→〔毒蛇〕2の『半七捕物帳』(岡本綺堂)「かむろ蛇」・『まだらの紐』(ドイル)。
*自分が放った呪いの式神が戻って来る→〔呪い〕7aの『宇治拾遺物語』巻2-8。
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