終刊とその後
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『文藝時代』の主要メンバーの横光利一などが作家として成功し、他の大きな商業雑誌にも迎えられるようになるにつれ、「既成」「新進」といった区別が実質上なくなり、同人の『文藝時代』への寄稿が遅れたり、次第に同人があまり書かなくなったりという状況にもなった。新感覚派的表現について川端康成は、1925年(大正14年)3月号で「少女時代に洋装してゐたからと云つて、大人になつてからまで洋装するかどうかは、今後の問題だ」とも語っていた。 また、次第に隆盛になってきたプロレタリア文学の方に共鳴していった片岡鉄兵が左傾化したのをはじめ、新感覚派と親しかった学生の藤沢桓夫や武田麟太郎もプロレタリア文学運動に加わっていった。石濱金作も転換し、今東光と鈴木彦次郎も旧労農党に加入してしまい、横光はかなり動揺した。 泰然自若としていた川端は、プロレタリア文学は否定してはいなかったが、元々唯心論や心霊的な世界観を持っていたためマルクス主義の唯物史観には馴染めなかった。また、プロレタリアの正義が「知識階級の生活感情に新しい芸術的な触れ方を見出してゐない」ことを疑問視していた川端は、「知識階級の人々の苦悶を新しく解決するのでなければ」、人は文芸として満足することができないとしていた。 当初は同人の輪番制だった編集も、大正末ごろから金星堂の編集に変り、1926年(大正15年)12月号の編集後記には、「今月号は同人の名がタッタ三人しか見当らない。寂しい気がする、ぐらゐで勘弁願へればいゝが、これでは同人雑誌の意味をなさぬ、怪しからん、と云はれたら一言もない」といった不満が書かれた。 翌年1927年(昭和2年)3月号の編集後記では、「毎号同じ顔触も、いたづらに読者を倦怠にみちびく恐れあり、ひいては雑誌の売行上多大の影響を与へる点から、同人の方達に諒解の上、今月の本誌から、同人雑誌の概念を一掃した」という告知もなされた。この頃、プロレタリア系の『文藝戦線』が発禁となったため、左翼系の作家が『文藝時代』に小説を連載するなど、実質的には「新感覚派」の雑誌ではなくなっていた。 『文藝時代』自体の売上げもふるわなくなって、終りの方では7割の返品にもなっていた(経営難)。そうしたことからも、金星堂の社長・福岡益雄から休刊が提案され、1927年(昭和2年)5月号(第4巻第5号)をもって通巻32冊で廃刊することとなった。 『文藝時代』の終刊後、川端と横光が一緒に同人になった雑誌は、堀辰雄・深田久弥・永井龍男・吉村鉄太郎らが1929年(昭和4年)10月に創刊した『文學』であった。同人誌『文學』は、『詩と詩論』(1928年創刊)と同様に、ヴァレリー、ジイド、ジョイス、プルーストなどの新心理主義を紹介した雑誌で、「意識の流れ」などを取り入れた方法を模索していた。 この昭和初頭の頃は、プロレタリア系の作家が「ブルジョア文学を撲滅しろ」「ブルジョア作家は抹殺しろ」と気勢を上げ、「全日本無産者芸術連盟」(機関誌『戦旗』)などの左翼文学者が文壇の跳梁となり、その圧力で純文学が凌駕されていた時期だった。そうした風潮に異論を呈した堀に共鳴した川端も、それまで堪え忍んできた左翼作家の「退歩」具合に「厭気」がさし、「政治上の左翼」が今では「文学上では甚だしい右翼」になっていると怒りを表明して、横光とともに堀の同人となった。 その後、川端は「プロレタリア作家が生かして」描こうとしなかった浅草を舞台としたモダニズム文学「浅草紅団」で浅草ブームを起し、横光は新心理主義の手法をヒントに新しい文体に挑んだ「機械」を発表し高い評価を受けた。
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終刊とその後
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1987年に終刊。終刊理由は翻訳契約をした作品をすべて出版したことで、今後サンリオの出版業は子供・ファミリー向けに集約させるとした。 本文庫の刊行作品は、本文庫の廃刊後は一時期古書としての取引価格が高騰し、1988年時点で作品に関係なく古書としては1500円〜2000円で取引されていたという。2018年現在までには他社の文庫(ハヤカワ文庫・創元SF文庫・ちくま文庫)で新版刊行されたり、単行本として出されたものも多い。なお一部は近年、新訳で文庫刊行されている。一方でマニアックな作品もあるため、未刊行のまま入手が困難となっている文庫も多い。 2014年には、シリーズ全冊を解説した『サンリオSF文庫総解説』(牧眞司+大森望編、本の雑誌社)が刊行された。同書は2015年第46回星雲賞ノンフィクション部門を受賞。
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