第4期活動 (2011年 - )
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「ピレリ」の記事における「第4期活動 (2011年 - )」の解説
2010年4月30日、ピレリがFIAに対して正式にタイヤ供給を申し出たことを発表。6月23日、世界モータースポーツ評議会が開催され、FIAにより2011年からピレリがF1にタイヤを供給することを決定したと正式に発表した。なお、契約期間は3年であり、実に20年ぶりにF1のひのき舞台に返り咲いたことになる。また、F1と同規格のタイヤをGP2にも供給することを発表。双方からのタイヤデータをフィードバックし、よりレースにエンターテイメント性を高める事を狙いとするなどレースを白熱化させるコンセプトを明示していた。 ピレリは本格復帰に先立ちニック・ハイドフェルドとテストドライバー契約を結び、2010年8月17日よりトヨタのTF109を使ったタイヤテストを開始した。しかし、ハイドフェルドが急遽ザウバーの正ドライバーになることが決定、ピレリはタイヤテストの後任を迎える必要があったため、9月16日にF1でドライブ経験のあるロマン・グロージャンを後任にする事を発表。さらに、9月23日にはペドロ・デ・ラ・ロサをタイヤテストに起用することを発表した。タイヤは前述のピレリが明示していたコンセプト通り、高いエンターテイメント性を図るために「あえて磨耗性(デグラデーション)の大きいタイヤ」を開発した。各ドライバーはそれまでのタイヤサプライヤーであったブリヂストンと比較して非常にデリケートなタイヤであると述べた。 この「あえて磨耗性の大きいタイヤ」の開発は、通常の自動車競技の性質と意義(技術躍進)とは逆行したものであり、本来は自動車競技の技術提供となると自社のイメージアップへと繋げるために自社製品の性能の高さを見せることによって、技術力の宣伝的な意味合いとなるのが通常である。したがって、あえて逆行させたピレリの技術提供は同社のイメージを大きく損ねる可能性もあったが、それを理解した上で買って出たピレリの英断をバーニー・エクレストンは高く評価をしている。 摩耗が進むと徐々にではなく突然にグリップ力が落ちる性能ゆえ、クリフ(崖の意味・性能が突然落ちる状態)・アンダーカット(崖を迎える前に、先行車より先にタイヤ交換し崖を迎えた先行車を追い抜く)といった言葉が登場した。また毎年のようにタイヤの性能に各チームが振り回される状態が続いている。 2012年には開幕から7戦で7人が優勝する乱戦ぶりで、タイヤの作動温度条件が非常に繊細で中盤まで各チームが困惑する性能だった。 2013年は更に柔らかいタイヤを導入・コストダウンとして裏地をケブラーから鋼線に変更。しかしイギリスGPなどで走行中に突然タイヤバーストを起こす危険な性能が批判を受け、途中から2012年仕様のタイヤに変更した。だが結果的にレッドブルとベッテルが以前以上に独走状態でシーズンを終えた。 2015年にはメルセデスにタイヤ内圧を規定より下げているのではないかという疑惑が浮上、直後のシンガポールではPPを独占し続けていたのが嘘のように低迷したが、その後は以前の独走状態が戻った。以後内圧チェックを厳密なものとした。 2016年より、従来の6種類(スーパーソフト・ソフト・ミディアム・ハード・インターミディエイト・ウエット)に加え、新たにより柔らかいドライタイヤ「ウルトラソフト」が追加された。サイドカラーは紫色で、市街地レースに使用すると発表されている。また、1イベントにつきタイヤメーカーが供給するドライタイヤのコンパウンドが2種類から3種類に増加した。6月17日、F1タイヤサプライヤー契約を2019年まで延長することを正式発表した。11月のマカオGPでは1983年以来ワンメイクタイヤを供給してきたヨコハマに代わって新たなF3タイヤサプライヤーとなった。 2017年はレギュレーションの変更により、幅広のタイヤを供給。以前のタイヤを幅広にすると、結果的にグリップ力と耐久性を両立したコンサバティブ(保守的)なタイヤを供給する事となった。クリフはあるものの最初から最後まで安定した性能を発揮できる性能だったが、大概のレースが1回ストップで済む耐久性は「摩耗性の大きいタイヤ」とは別なものだった。 2018年は、従来の7種類に加えウルトラソフトよりさらに柔らかいタイヤを導入することを発表。名称についてはファン投票により「メガソフト」「エクストリームソフト」「ハイパーソフト」から選ばれることになり、結果「ハイパーソフト」に決定。同時にもう一つのコンパウンドの追加も発表され、2018年は新たにハードよりも固い「スーパーハード」、ウルトラソフトより柔らかい「ハイパーソフト」の2種類が追加されることとなる。これに伴いドライタイヤのカラーリングは下記の通りハイパーソフトが新たにピンク、スーパーハードがオレンジ、ハードがアイスブルーに変更される(ミディアムからウルトラソフトは従来のカラーリングのまま変更なし)。大まかには、前年のタイヤを一段階ずつ柔らかい側へシフトして最後に更に柔らかいタイヤを用意したものと見られた。 2019年は、ドライタイヤのコンパウンドを5種類に戻し、名称はコンパウンドが最も硬いタイヤを「C1」、以降はコンパウンドが柔らかくなるごとに「C2」「C3」「C4」とし、最も柔らかいタイヤは「C5」となる。1イベントにつきタイヤメーカーが供給するドライタイヤのコンパウンドは3種類のままだが、カラーリングは白がハード、黄色がミディアム、赤がソフトに統一される。このタイヤは前年より0.4mm薄いシン・ゲージと呼ばれ前年に比べ作動させるのに必要な熱量も大きく作動温度領域も極めて狭いとされトップ3チームではフェラーリ・レッドブルが手こずる一方でメルセデスだけがこのタイヤを使いこなして開幕からの連続優勝記録を継続する一因とされた。今まで同じだったタイヤウォーマー温度を前後で別の温度に規定しだした為に、前後一方しか作動しなかったり異常磨耗に苦しむ事例も出てきた。2019年オーストリアグランプリにてレッドブルをはじめホンダ勢・フェラーリ勢5チームがタイヤの変更を求めたもののメルセデス勢・ルノー勢5チームが反対、変更には7チームの同意が必要でこの動議は失敗に終わった。
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