第一護衛艦隊
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日本海軍は海上護衛の中央機関として1943年(昭和18年)11月15日に海上護衛総司令部(略語、GEB)を新編、1944年(昭和19年)4月1日には特設護衛船団司令部を設置した。しかし司令部・艦艇とも臨時編成のため、建制の護衛戦隊を求める声があがった。これにこたえるように香取型練習巡洋艦2隻(香椎、鹿島)と秋月型駆逐艦春月、海防艦多数をもって第101戦隊(昭和19年11月15日新編、旗艦香椎、海防艦6隻)、第102戦隊(昭和20年1月1日新編、旗艦鹿島、海防艦6隻)、第103戦隊(昭和20年1月20日新編、旗艦春月、海防艦6隻)が編成された。これら新編の対潜部隊が所属したのが、第一護衛艦隊である。 シンガポール方面と日本本土の航路護衛を担当していた第一海上護衛隊だが、護衛兵力は各部隊から寄せ集められた臨時編成だったため、兵力の建制化が求められていた。大本営海軍部(軍令部)も海上護衛総司令部の意見を認め、1944年(昭和19年)12月10日付で第一海上護衛隊を第一護衛艦隊に昇格させた。司令長官には岸福治中将(海兵40期)が任命された。艦隊への格上げにともない、水上兵力と共に航空兵力の増強もおこなわれた。第901海軍航空隊(当時、海上護衛総司令部附属)に第953海軍航空隊(高雄警備府所属)と第954海軍航空隊(第三南遣艦隊所属)と第254海軍航空隊(海南警備府所属)を統合、第936海軍航空隊(当時、第一南遣艦隊所属)に第933海軍航空隊(第三十一戦隊所属)を統合する。昭和20年1月1日附で戦時編制の改定をおこない、第901海軍航空隊と第936海軍航空隊は第一護衛艦隊に編入された。増強された第一護衛艦隊はひきつづき海上護衛総司令部に所属し、ヒ船団に代表されるシンガポールを終点とする南方航路の死守を目指した。この措置と護衛戦隊の増設により、特設護衛船団司令部は解隊されていった。 しかし、1945年(昭和20年)1月上旬よりアメリカ機動部隊が仏印沿岸に進出し、第101戦隊(第一護衛艦隊所属)は護衛中のヒ86船団と共に壊滅した。その後、南号作戦(1月25日~3月9日終結、3月16日中止)が発動されて第一護衛艦隊は主力として参加したが、参加船団数15・加入船舶のべ45隻・護衛艦艇のべ50隻のうち、船舶20隻と護衛艦艇4隻を喪失した。この事態に、海上護衛総司令部は南シナ海航路を断念して重点を日本-満州にうつすことになり、大本営も同意した。代わって、台湾・上海を終点とする東シナ海航路の死守を画策したが、これも、沖縄戦に備えたアメリカ機動部隊の事前空襲のために不可能となった。以後は東シナ海横断航路ではなく、上海-青島-木浦・馬山・済州島-下関の迂回ルートを取らざるを得なくなった。 1945年(昭和20年)3月、日本軍は連合軍の沖縄島進攻を予想し、南西方面の海上護衛を担当していた第一海上護衛隊を天号作戦に投入する気運が高まっていた。沖縄戦突入後の4月10日、大本営海軍部は対馬海峡方面部隊として第七艦隊〔第十八戦隊(常磐、高栄丸、永城丸)、海防艦4隻(102号、104号、106号、150号)、下関防備隊、第33掃海隊〕を新編した。第七艦隊司令長官、幕僚は第一護衛艦隊兼務であったため、岸福治中将(第一護衛艦隊司令長官)の肩書は第七艦隊司令長官兼務第一護衛艦隊司令長官となった。第七艦隊は佐世保方面の陸海軍防備部隊や守備隊を指揮下に置き、7月10日には第103戦隊が第一護衛艦隊から第七艦隊に編入された。 第七艦隊の新編と同日(4月10日)、津軽海峡と宗谷海峡の防備・護衛強化のため第104戦隊(司令官渡辺清七少将、海防艦6隻、宗谷防備隊)が編成され、大湊警備府部隊に編入された。5月5日、第105戦隊(司令官松山光治少将、駆逐艦響、海防艦6隻)が編成され、舞鶴鎮守府部隊に編入された。7月10日、第105戦隊は第一護衛艦隊に編入された。 4月からはB-29による日本本土港湾への機雷投下(飢餓作戦)が始まり、下関港をはじめ全国の港湾が封鎖された。護衛部隊・船舶とも、多数の損傷艦を出した(飢餓作戦)。4月14日には第一護衛艦隊主力が駐留する済州島泊地への潜水艦攻撃が実施され、潜水艦ティランテにより貨物船寿山丸と海防艦2隻(能美、第31号)を撃沈された。6月末から日号作戦に従事した。最終的には、舞鶴・新潟・酒田・秋田・函館・小樽を結ぶ日本海沿岸航路と、舞鶴・新潟-元山・羅津・雄基(現先鋒)間を結ぶ日本海横断航路を確保しつつ終戦を迎えた。なお、ソ連対日参戦に際し、隷下海防艦の一部が終戦による停戦命令に反して朝鮮・樺太に入港し、邦人救出を敢行している。
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