疑問点の指摘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/30 09:57 UTC 版)
「張作霖爆殺事件ソ連特務機関犯行説」の記事における「疑問点の指摘」の解説
この説は「旧ソ連共産党や特務機関に保管されたこれまで未公開の秘密文書から判明した事実」として紹介されているが、『正論』2006年4月号のインタビュー記事のプロホロフの説明によると「従来未公開のソ連共産党や特務機関の秘密文書を根拠とする」ものではなく「ソ連時代に出版された軍指導部の追想録やインタビュー記事、ソ連崩壊後に公開された公文書などを総合し分析した結果から、張作霖の爆殺はソ連特務機関が行ったのはほぼ間違いない」としている。これについて「実行の様子の説明がない」と、インタビューした内藤泰郎産経新聞モスクワ支局長と解説を担当した藤岡信勝(拓殖大学教授・新しい歴史教科書をつくる会(以下、つくる会)会長)は指摘し、藤岡は以下の3つのシナリオが考えられるとした。 ソ連特務機関が関東軍のやったことを自分達がやったように報告した。 プロホロフの情報が真実で日本側のこれまでの記録、証言などがすべて作り話だった。 河本大佐以下の関東軍軍人が丸ごとソ連特務機関に取り込まれ事件を起こした。 秦郁彦は「プロホロフが引用しているヴィナロフ撮影の写真なるものは未見なので評価しにくいが、爆破現場にかけつけたカメラマンによって撮影され新聞や雑誌に掲載したものは数多いので、そのコピーという可能性もある」としている。そのため、伊藤隆は、一応ソ連情報機関の内部資料は存在すると仮定した上で「私はエイティンゴンが自分の手柄にするために、報告書でもデッチ上げて書いたんじゃないかという印象を受けましたね」「私はやはり日本の軍部がやったと考えています」と主張している。 また、秦は「ソ連犯行説は西郷隆盛が西南戦争で死なず生き延びたたぐいの妄想に見える。プロホロフによる張作霖と日本およびソ連との事件直前の状況が、「張作霖爆殺はコミンテルンの仕業」と主張する人間たちを事実に基づかない妄言であり歴史を捏造するもの」(下記論稿を参照)と主張している。また田母神の一連の主張に対し田岡俊次との対談で張作霖事件も含めて「コミンテルンの陰謀論が四つも五つも出てくる。歴史上の出来事はすべて特定の人間や団体の陰謀によって起きたという「陰謀史観」を唱える人は少なくないが、ふつうは一つか二つしか出さないものなのに」「このソ連情報機関の資料というのは、元KGB職員だったプロホルフという若い作家が書いた本を指しているのだと思いますが、彼は文書資料によって書いたわけではない。メディアの取材にも「そういう話を聞いたことがある、というだけだ」と語っています。泡みたいな話ですよ」と主張している。また秦は保守言論誌『Will』 2009年2月号で反論『陰謀史観のトリックを暴く』を投稿し、中西のソ連犯行説を批判している。また前述の田母神の主張に影響を与えたと『週刊朝日』(朝日新聞出版)に指摘された元谷外志雄は、後述の会談の中で「河本が中華民国政府に収容所に入れられていた」などの事実ではない事を述べた。 『マオ 誰も知らなかった毛沢東』の日本語版の当該箇所は「張作霖爆殺事件は、一般的には日本軍が実行したとされているが、ソ連情報機関の資料から最近明らかになったところによると、実際にはスターリンの命令に基づいてナウム・エイティンゴン(のちにトロツキー暗殺に関与した人物)が計画し、日本軍の仕業に見せかけたものだという」であるが、英語による原文は"This assassination is generally attributed to the Japanese, but Russian intelligence sources have recently claimed that it was in fact organized, on Stalin’s orders, by the man later responsible for the death of Trotsky, Naum Etingon, and dressed up as the work of the Japanese"とあり、「見せかけたという主張もある」とも受け取れるという指摘もある。 イギリスの極秘外交文書においてソ連犯行説が言及されていることについて、秦郁彦はその出典がアンソニー・ベストの『一九一四―一九四一年の英諜報とアジアにおける日本の挑戦』であると指摘。同書では「ソ連が主役」だとするMI12C(英陸軍情報部極東課)による1928年10月の報告書WO106/5750の引用に引き続いて、「暗殺は関東軍の一部によって遂行された」との駐日大使よりの報告FO371/13889について言及されているとしている。この記述をもとに秦は「誤った情報判断を修正したはずと想像していたが、予想通りだった」「中西は(後半の「ソ連が主役」だとするMI12Cの判断の過ちが修正されたとの記述を)見落としたのだろうか」と述べている。
※この「疑問点の指摘」の解説は、「張作霖爆殺事件ソ連特務機関犯行説」の解説の一部です。
「疑問点の指摘」を含む「張作霖爆殺事件ソ連特務機関犯行説」の記事については、「張作霖爆殺事件ソ連特務機関犯行説」の概要を参照ください。
- 疑問点の指摘のページへのリンク