流行性角結膜炎とは? わかりやすく解説

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流行性角結膜炎

流行性角結膜炎(EKCepidemic keratoconjunctivitis)は、主にD 群アデノウイルスによる疾患で、主として手を介した接触により感染する以前は、本疾患患者扱った眼科医医療従事者などからの感染多く見られたが、現在では、職場病院家庭内などの人が濃密接触する場所などでの流行的発生みられるアデノウイルス種々の物理学条件抵抗性強いため、その感染力は強い。19 世紀後半ドイツ労働者の間で流行したことが記載されている。その後米国で、"shipyard eye"と呼ばれる眼疾患が流行した造船所労働者眼の外傷治療のさい、医原病的に広がったものと考えられる今日我が国では全国的にEKCみられるが、年度によりD群の8、1937型のいずれか流行となっている。

疫 学
流行性角結膜炎患者との接触により感染する病院医師看護婦、さらに職場家庭などで、ウイルスにより汚染されティッシュペーパータオル洗面器などに触れるなどして感染する年齢による頻度の差はみられない血清学調査では、日本の子供の8型に対す抗体保有率は20%未満19型および37に対して10%程度である。
感染症法施行後発生動向調査によると、全国600眼科定点からの報告では1999年4~12月報告23,941定点当たり報告数41.71)、2000年1~12月40,873 (65.40)、2001 年1~12月暫定データ)に39,141 (62.13)となっている。季節としては8月中心として夏に多く年齢では1~5歳中心とする小児に多いが、成人含み幅広い年齢層みられる

病原体
アデノウイルスは現在まで49種の血清型知られているが、EKC起こすのはD群の8、1937型である。まれに、B群11型E群4型病因となりうる。現在流行中の型は19 型であり、ほぼ全国から分離されているが、8型と9型の中間型思われる血清型沖縄県におけるEKC病原考えられており、同様の型が横浜秋田でも分離されている。

臨床症状

潜伏期は8~14日である。急に発症し眼瞼浮腫流涙を伴う。感染力が強いので両側感染しやすいが、初発眼の方が症状が強い。耳前リンパ節腫脹を伴う。角膜炎症が及ぶと透明度低下し混濁数年に及ぶことがある時に結膜炎出血性となり、出血性結膜炎(EV70, CA24 変異株による)や咽頭結膜熱との鑑別要することがある(図1)。その他、ヘルペスウイルスや、クラミジアによる眼疾患との鑑別が必要である。

流行性角結膜炎 

新生児乳幼児では偽膜性結膜炎起こし細菌混合感染角膜穿孔起こすので注意する必要がある

病原診断
眼ぬぐい液や結膜擦過法によりアデノウイルス分離することが、病原診断基本である。ウイルス分離されたら、中和反応により型を同定する。ほとんどはD 群であり、重症型が多い。他の型が分離される軽症型では、咽頭結膜熱との異同再検討する急性出血性結膜炎エンテロウイルス(EV70)の感染よるものであるが、これは最近分離困難となり、ペア血清での中和抗体有意の上昇、あるいはPCRによる検出が必要となる。
迅速診断法としてELISAクロマトグラフィー法(アデノクロン、アデノチェック)があるが、型別判定できないPCR‐RFLP法シーケンス法により、型の同定が可能となった血清型を知ることで、より詳細疫学的調査が可能となり、公衆衛生的対応にも結びつくことが期待される

治療・予防
アデノウイルス全般について有効な薬剤はない。対症療法的に抗炎症剤点眼行い、さらに角膜炎症がおよび混濁みられるときは、ステロイド剤点眼する細菌混合感染可能性に対しては、抗菌剤点眼を行う。眼疾患者分泌物取扱い処分注意し手洗い消毒をきちんと行う。点眼瓶類がウイルス汚染されないよう注意をし、汚染され病院内器具類はオートクレーブ滅菌するか、あるいはアルコールヨード剤などで消毒する予防の基本接触感染予防の徹底である。

付記
EKCという診断名は8型において初め用いられ一元的病因論でいわれていたが、その後1937型も8型と全く区別できず、多元的病因論受け入れられている。4型でもEKC からPCF まで幅広い臨床像示しB群軽症なのでEKCよりもアデノウイルス結膜炎という診断名用い重症型(D群)、中間型E群)、軽症型(B群)という用語を用いることが提唱されている。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
流行性角結膜炎は5類感染症定点把握疾患定められており、全国600カ所の眼科定点から毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ以下の3つの基準のうち2つ以上を満たすもの
1. 重症急性濾胞性結膜炎
2. 角膜点状上皮混濁
3. 耳前リンパ節腫脹圧痛
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの

国立感染症研究所感染症情報センター 稲田
北海道大学医学部眼科学教室 青木功喜)





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