批判期とは? わかりやすく解説

批判期

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 08:59 UTC 版)

イマヌエル・カント」の記事における「批判期」の解説

今でこそ純理』は近代哲学基礎目されることも多いが、この書物がすぐに哲学界を驚愕させ、思考地平一変させたと考えることはできない。『純理』はすぐに上梓されたが、反響はほとんどなく、売上芳しくなかった同時代哲学者ハーマンメンデルスゾーンにはもっぱら不評だったと言われている。そのうえ、1782年雑誌ゲッティンゲン学報付録』に出た匿名書評ではカント思想バークリ観念論同一視されしまっていた。そのためカントは翌1783年出版したプロレゴーメナ』や『純理第2版観念論反駁」の中で、こうした嫌疑をはらさざるをえなかった。同時代人第一印象では、カントバークリヒューム同様の懐疑論者みなされのである批判哲学プロジェクトは『純理以降自然学実践哲学道徳論・法論)・美学歴史哲学宗教へと多岐にわたって展開されるとりわけ純理』と『実践理性批判』(1788)、『判断力批判』(1790)を合わせた三つ書物は、慣例として「三批判書」と総称されそれぞれ第一批判』、『第二批判』、『第三批判』と称されることもある。自然学分野は『自然科学形而上学的原理』(1786)や『判断力批判第二部の中で展開され実践哲学は『人倫の形而上学の基礎づけ』(1785)や『実践理性批判』(1788)、『人倫の形而上学』(1797)が主著となっている。美学については、同時代バウムガルテン影響を受けつつ大きく議論を展開させた『判断力批判第一部読まれなければならない。 批判期以降カント様々な論争巻き込まれ、また自ら論争介入していった。特に論争の場として重要だったのは、1783年ゲディケビースターによって創刊され雑誌ベルリン月報』である。カント十数本の論文を『ベルリン月報』に掲載しているが、そのなかには敢えて賢かれ、自らの悟性用い勇気持て」という言葉有名な小論啓蒙とはなにか」(1784)も含まれている。この問いかけまた、論争産物と言ってよい。同時期のプロイセンではフリードリヒ大王のもと、「啓蒙」の有用性その限界議論されていたからである。また、1785年にはヘルダーの『人類史哲学理念』(1784-91)をめぐってカントヘルダー論争繰り広げている。他にも、スピノザ主義めぐってレッシングヤコービメンデルスゾーンらが繰り広げた汎神論論争加わってもいる(「思考方向定めるとはどういうことか」(1786))。 1786年カント3月ケーニヒスベルク大学総長就任した同年8月にはフリードリヒ大王崩御し、代わってフリードリヒ・ヴィルヘルム二世即位する前代啓蒙君主呼ばれるほどフランス啓蒙哲学通じ、自らの宮殿ヴォルテールラ・メトリ呼び寄せたほどだったのに対し、この新し君主守旧的であり、宗教神秘主義にも傾倒していた。1788年には宗教文教行政担っていた法務大臣ヴェルナー宗教検閲発布し1792年にはカントが『ベルリン月報』に発表した人間本性における根源悪について」が検閲引っかかってしまった。この論文検閲通過したものの、次の人間支配をめぐる善現理と悪原理の戦いについて」は出版不許可決定受けた両論文は1793年には『単なる理性の限界内における宗教』として発表されるが、1794年にはカント宗教論有害だという勅令出されカント宗教神学に関する講述禁じられてしまう。 カントはこうした検閲勅令粛々と従っていたが、他方1789年勃発したフランス革命については、それがジャコバン独裁経て過激化ていった時代にもなおそれを称賛していた。国際政治情勢激動する時代にあってカントはそれに呼応するかのように、「理論では正しいかもしれない実践の役には立たないという俗言について」(1793)や『永遠平和のために』(1795)、『人倫の形而上学』「第一部法論形而上学的定礎」などで共和制国際連合について論じたカント晩年身体の衰弱加えて思考力衰え感じつつも、自然科学形而上学的原理から物理学への移行という課題取り組みつづけた。この課題完成されなかったが、一連の草稿は『オプス・ポストゥムム』として知られている。今で言う老年性認知症進行する中、1804年2月12日カント逝去した。最後の言葉は、ワイン薄め砂糖混ぜたものを口にしたときに発したという「これでよい(Es ist Gut)」であった伝えられている。2月28日大学墓地埋葬されるカント簡素な葬儀望んだが、葬儀二週間以上にわたって続き多く参列者が死を悼んだ

※この「批判期」の解説は、「イマヌエル・カント」の解説の一部です。
「批判期」を含む「イマヌエル・カント」の記事については、「イマヌエル・カント」の概要を参照ください。

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