形式別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 10:15 UTC 版)
橋の構造形式には以下のような種類がある。なお、主な部材に働く力については、構造力学、材料力学、力学などの項目を参照のこと。 桁橋 - 2つあるいは3つ以上の支点上に水平に桁を架け、その上あるいは内部を通行する橋。最も古くからある一般的な形式。桁には曲げモーメントにより主桁内部の上側に圧縮応力が発生、下側に引張応力が発生する。材料には鋼、コンクリート、木材などが用いられ、I形、箱形、T形などの断面がある。一般に荷重を主として負担する主桁と通行路を造る床版は異なる部材だが、比較的小規模のコンクリート橋では床版が主桁としての役割も果たす床版橋(スラブ桁橋)もある。また、吊橋の桁は補剛桁と呼ばれる。建設費が比較的安価なことから、最も多く採用される形式。 トラス橋 - 棒状の部材を三角形に組み合わせ交点(格点と呼ぶ)をピンで結ぶトラス構造を用いた橋。鉄道橋に多い形式。トラス部材には軸力(圧縮力または引張力)のみが作用する。ただし、実際にはピン結合ではなく剛結とすることが多く、この場合トラス部材には曲げモーメントも作用する。材料には鋼や木がよく用いられる。トラス構造は、使用部材を減ずる目的で断面2次モーメントを極大化させるため、桁構造と比して鉛直方向に構造が大きくなる。特に下路式の場合は、構造下面と路面や軌道面との間の高さを減ずることが可能であることから、桁下に余裕の無い箇所や取り付け部での縦断勾配の得づらい箇所での採用例も多い。トラス部材の配置によって以下のような分類がある。平行弦ワーレントラス、曲弦ワーレントラス、垂直材付きワーレントラス、プラットトラス、ハウトラス、Kトラス。 アーチ橋 - 上向きの弧(アーチ)を用いた橋で、アーチ(アーチリブ)には大きな圧縮力と比較的小さな曲げモーメントが作用する。コンクリートや鋼あるいは木のほかに、近代以前では石がよく用いられていた。深い渓谷など、橋脚を造ることが困難な場所で採用されることが多い形式。 ラーメン橋 - 橋脚と主桁が剛に結合された骨組(ラーメン)構造を用いた橋。ラーメンはドイツ語 Rahmen (鋼節骨組)に由来する。部材には軸力、せん断力と曲げモーメントが作用し、材料としてはコンクリートあるいは鋼が用いられる。構造力学の観点からは、ラーメン構造は力の釣り合い方程式の数より未知反力の数の方が多い不静定構造である。これにより過大な荷重によってある部材が大きく変形しても落橋は免れたり、橋脚上に支承がなく上部構造がずれ落ちたりすることがないため耐震性の高い構造と考えられている。 吊橋 - ケーブル、ロープなど曲がりやすいが引張強度が大きい部材から桁あるいは床版を吊り下げた橋を呼ぶ。近代以降の大規模な吊橋は、両岸にケーブルを繋ぎ留めるアンカーブロックやアンカレイジと呼ばれる構造とその間に(通常2本以上の)主塔を設け、その上に張り渡したメインケーブルから通行路となる桁を吊り下げる形式を採る。このような吊橋では、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}桁および荷重の全ては、メインケーブルおよびそこから下げられたハンガーロープが受け持つため、桁自体は通行路として橋の形状を保つ程度の剛性があれば十分なことから補剛桁と呼ばれる[疑問点 – ノート]。ケーブルには引張力、主塔には圧縮力が作用する。アンカレイジはケーブルに生じる引張力に対してその質量および底面の摩擦力によって抵抗する。なお、主塔とケーブルが接触する主塔頂部のサドルの形状を固定式とする場合、荷重の偏在によっては主塔に曲げ応力が生じる場合があるので留意する。ケーブルには高強度の鋼、主塔には鋼やコンクリートが主に用いられる。アンカレイジを用いず桁の両端でメインケーブルを固定する「自碇式吊橋」「自定式吊橋」という形式もあるが、橋桁に大きな圧縮力が働くので設計が複雑になる。床版をメインケーブルと一体化し、主塔を使わず橋台から直接吊り下げる「吊床版橋」というものもある。床版をそのまま通路とする「直路式」、桁を載せる「上路式」、上路式の派生として、床版と桁の両端を固定してアンカーブロックを不要とした「自碇式」がある。 斜張橋 - 吊橋の一種で、支点となる主塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を吊ったもの。主塔上部から斜めに伸びた多数のケーブルが橋桁などの鉛直荷重を受け持つとともに、桁に対して圧縮力となる軸力を導入する。ケーブルには引張力が生じるため、鋼製。主塔には圧縮力が働き、桁には曲げモーメントと軸力が作用するため、コンクリートが用いられることが多いが、軟弱地盤の場合は主塔にも鋼構造が用いられる。また、多々羅大橋のように、主塔の設置箇所の制限から、中央径間と側径間との延長のバランスが悪い場合、主塔に曲げ応力が生じるのを回避するため、単位長さ重量の大きいコンクリートと小さい鋼とを組み合わせた複合構造を用いることもある。ケーブルの張り方によって、主塔側面の異なった高さから斜め平行に張られる「ハープ」と主塔上部の一点から放射線状に張られる「ファン」の2つの形式があるほか、張る面を桁中央(道路の場合は中央分離帯)に寄せる1面吊り、桁側端に分離する2面吊り、1面に2条近接させる形式など、様々なバリエーションがある。。美観に優れることから、近年採用例が増えつつある。 エクストラドーズド橋 - 外ケーブルを用いたプレストレストコンクリート橋の一種。比較的高さの低い主塔から斜材(外ケーブル)により主桁を支持する構造。外ケーブルが構造断面の外側に飛び出していることから「大偏心外ケーブル構造」とも呼ばれる。外観は斜張橋に類似しているが、主桁の剛性が高く構造としては桁橋に近い。また、斜材ケーブルの角度が小さいことから、活荷重の影響による斜材の張力変動が小さく疲労に対して有利であり、斜張橋に比べ斜材ケーブルの張力を高く取ることができる。さらに低い主塔と相まって、建設コストを低く抑えることができ、近年は鉄道、道路を問わず、採用例が増加している。
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