小田原にてとは? わかりやすく解説

小田原にて

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 00:39 UTC 版)

二流の人 (小説)」の記事における「小田原にて」の解説

小田原北条氏は全関東統領東国随一豪族だが、すでに早雲遺風なく、家門知って天下知らぬ平々凡々たる旧家であった時代についての見識欠け豊臣秀吉から上洛うながされても、成上り者関白など相手にしなかった。この頃秀吉はよく辛抱しあせらず怒らず、なるべく干戈動かさず天下統一意向をもって3年待った。やがて北条が、旧領沼田8万石還してくれれば朝礼する、と言ってきたので、真田昌幸因果を含めて沼田城還させたが、北条は城を貰っておいて上洛しなかった。北条思い上ること甚だしく成上り関白秀吉見事なぐらいからかわれ我慢しかねて北条征伐となる。 秀吉小田原攻めるためには尾張三河駿河通って行かねばならないが、そこは織田信雄徳川家康所領で、両氏は現在秀吉麾下属しているものの、いつ異心現す分からず家康の娘は北条氏直奥方で、両家の関係は密接であるから反旗をひるがへす怖れもあった。秀吉から軍略の話をきり出された如は、「先ず家康と信雄を小田原先発させ、先発仲間前田上杉などの古狸家康)の煙たいところを指名なさるのが一策でござろう」と進言した。「このチンバめ!」と秀吉は思わず叫んだ寝ず思案にくれて編みだした策を、言下に如答えたからだ。「お主腹黒い奴じゃのう。骨の髄まで策略だ。その手天下がとりたかろう。ワッハッハ」秀吉頗る御機嫌だった。 しかし早春始めた包囲陣に、真夏来てもまだ北条落ちなかった。石田三成羽柴雄利降伏勧告徒労終り浮田秀家北条十郎氏房和睦動いても氏政父子受けつけなかった。北条家随一重臣松田憲秀とその長男新六郎主家の裏切りの心を固め秀吉方の軍兵城内引入れる手筈をたてたが、松田憲秀次男で、北条氏直小姓をしていた左馬助が、父兄陰謀主人訴え寸前のところで陰謀は泡と消えた百計失敗帰して暫時空白状態、何か工夫めぐらして打開方策立てねばならぬ秀吉夜中隠居の如召し寄せた。如は、和談使者北条家と縁のある徳川殿を煩わす一手でござろうと進言し、翌日徳川家康陣屋でかけた天正18年真夏日ざかり家康と如が膝を突き合わせ直接顔を合せたのはこの日が初だった。「温和な」と「律義な策師」と暗々裡に許したから、遠く関ヶ原へ続く妖雲一片がこのとき生れてしまった。頭から爪先まで弓矢金言出来ている大将だと、如はたった一日最大級家康を買いかぶった小牧山秀吉勝って外交負けた家康は、その時以来40歳過ぎて初め天下への恋を知った。如律儀な顔をしているが、その道にかけては156歳の時から色気づき、ただ思うは天下ただ一人で、いわば二人恋仇同士だが、今は振られ同士妙な親近感にひかれた。如は、家康親睦すれば、再び天下面白く廻り出してくる時期があるかもしれぬと、にわかに青空ひらけて、め(秀吉)の前に隠居したが、また人生蒔き直し思った北条家への和談使者の話は断られてしまったが、如家康惚れたから、呑込みよろしく引上げ何食わぬ顔秀吉前に戻り、自ら北条との和談大役買って出た武蔵相模伊豆三国領有を許す旨の秀吉誓紙持ち熱弁真情あふれた水の和談使者口上和平の心が動いた北条氏政は、家臣一同助命乞う、いわば無条件降伏決意した。ところが降伏開城先立ち裏切り者松田憲秀ひきだして首をはねたことが、降伏対する不満の意、不服従の表現秀吉認められた。秀吉誓約無視して領地全部没収、氏政氏照に死を命じ北条氏断絶せしめてしまった。北条氏存続は、後々徳川家康火勢煽る油になりかねないため下策ではなかったが、和談使者をした如は顔をつぶされ大いひがんだ。 そこで如秀吉から、あの小僧め(氏直に父兄陰謀密告した左馬助)の首をはねてここへ持てと言われた時、秀吉から厚遇受けていた新六郎の方の首を、痛憤秀吉切断する心ではねて来た。「なぜ殺した!」と怒る秀吉に、如いささかも動じず左馬助は父の悪逆忠孝岐路に立ち、父兄助命恩賞忠義の道を尽した健気な若者天晴な男でござるが、この新六郎めは父と謀り主家売った裏切者このような奴が生き残っては、本人面汚しさることながら同席武辺者がとんだ迷惑だと考えていたから、殿下お言葉、よくも承りませずにかん違い致した、とんだ粗相とぼけた。「チンバめ!」と秀吉叫んだが、追求はしなかった。如はこの一件いささか重なる鬱を散じたが、家康にめぐる天運をしきりに望む心が老いたる如水の悲願となった

※この「小田原にて」の解説は、「二流の人 (小説)」の解説の一部です。
「小田原にて」を含む「二流の人 (小説)」の記事については、「二流の人 (小説)」の概要を参照ください。

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