対策についての議論
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「日本の消費税議論」の記事における「対策についての議論」の解説
伊藤元重は「3年後からの消費税の引き上げであれば、それまでに駆け込み需要が期待できる。消費税を10%に引き上げれば12兆5000億円ほどの税収が見込める。その2年分程度、つまり25兆円をケインズ政策として将来の日本をよくするための投資に回す。これによって景気刺激策が期待される」と主張している。 高橋洋一は対策として、消費減税(税率引き上げ分)、全品目の軽減税率(税率引き上げ分)の導入・適用、所得税減税、増税した分をすべて使い切るような減税・財政支出を挙げている。高橋は「消費税増税のマイナス効果を緩和するためには、金融政策と財政政策によるマクロ経済政策で景気対策をするしかない。消費税増税という財政政策は有効需要を減少させるため、減税・給付金などによる同じ財政政策で中和するのは正しいが、間違った増税には愚かな財政支出が必要になるのは皮肉である」「消費税を巻き上げておいて、それを国民にばら撒き、増税後の経済の落ち込みを少なくするというのは馬鹿げた話である。低所得者に1万円を配るといった『簡素な給付措置』など愚の骨頂である」と指摘している。 原田泰は「消費税増税の効果を打ち消したいのであれば、減税しかない。増税して減税するなら財政赤字はたいして減らないがそれでは意味がない。また、増税して公共事業を増やすのも意味がない」と指摘している。 中原伸之は「『消費増税で景気が落ち込むから補正予算を組め』という議論もあるが、右の手で取って左の手でばらまくだけの話なのでやるべきではない」と指摘している。 片岡剛士は「政府では5%の消費税増税による経済への悪影響を緩和するため3-5兆円の補正予算を打ち出すとの話だが、増税しつつ増税の悪影響を緩和するために歳出を増やすというのは、単に政府が使える金を増やすだけであって、そのことが逆に財政再建への信頼を毀損しかねない」「経済対策が必要というほど消費税増税の悪影響を懸念するのならば、悪影響を懸念しない増税幅での消費税増税を行なうか、予定どおり消費税増税を行なっても問題がない段階まで日本経済が回復するまで増税を先送りするのが筋であり、消費税増税ありきの5兆円経済対策はナンセンスである」「設備投資を刺激するために投資減税や法人税減税を行なったとしても、そもそも設備投資が増える環境にないため政府が想定する経済効果をもたらさないだろう。消費税増税が恒久的な性格をもつ以上、一時的な給付金や減税策で消費税増税の悪影響を十分に抑制するのは困難である」と指摘している。 ポール・クルーグマンは「急速に少子高齢化が進んでいる日本では、今後さらに所得税よりも消費税のほうが重要になってくることは確かである。そうした状況を踏まえれば、例えば、一定年収以下の所得税を減らすことを提案したい。収入が一定以上ある世帯は、消費税が上がっても消費が極端に減ることはないので、消費が落ち込むこともないだろう」と指摘している。 片岡剛士、田中秀臣は「消費増税が恒久的な性格を持つため、一時的な給付金・減税で増税の悪影響を十分に和らげることは困難である」と指摘している。 浜田宏一は「金融緩和をせずに消費税率を上げれば、国民の実質上の所得が減りその結果、税収が減り、税収が減った結果、日本経済は破綻に向かう」と指摘している。 消費税増税の対策としての金融政策について、高橋洋一は「金融政策の効果は、タイムラグが大きく財政政策ほどに即効性はないため、短期的な景気変動の対応策としては力不足になってしまう」と指摘している。高橋は「(消費)増税なしの金融緩和と、増税してマイナス効果の中での金融緩和は明確に区別しなければいけない」と指摘している。
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対策についての議論
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「日本のデフレーション」の記事における「対策についての議論」の解説
詳細は「デフレーション#対策」を参照 米国の経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは「日本のデフレの原因は、為替レートの影響が大きかった。円安が続けば、その状況は変わる。現実問題として、アメリカが金融緩和を進めれば、円高になるので、対抗することが必要である。日銀は日本国債をより積極的に買い入れるなどし、対抗しなければならない」と指摘している。但しスティグリッツはベースマネー増大に拠るデフレ解消には「銀行のバランスシート上、マネーサプライと信用量が等しいという事実が、この分野における長年にわたる混乱の原因の一つです。回帰分析を行えば、この2つの数字は同じものになってしまうので、何が原動力になっているかを特定することは難しくなってしまいます。我々が主張している理論では、信用供給に焦点を当てた訳です。例えばベースマネーが増加したとしても、信用供給に直接反映されない訳です。この点こそ日本が抱えている問題の1つなのかもしれません。通貨当局はベースマネーをコントロールしていますが、直接的には信用供給をコントロールしていません。最終的にはこの2つは同じかもしれませんが、何をコントロールしているかという点が重要だと思います。」 と述べ、ベースマネーと信用供給(こちらが直接に物価に影響する)を等しく見ることに対して問題を呈している。つまりこの場合の日本国債の買い入れはあくまでも他国の金融緩和に拠る極端な円高に対する対抗措置としての買い入れであり、ベースマネー増大に拠るデフレ解消を意図するものでないことに注意が必要である。 一方岩田規久男は為替レートとインフレ率について、明確な一方的因果関係は検出されていないと述べている。 但しエコノミスト五十嵐敬喜は「消費者物価(コアコア)と円の名目実効レート」を示し、「12年後半から大幅な円安が進行している。このことが消費者物価を押し上げた」と述べている。 そして2014年10月のIMF・世界銀行総会の際に、各国の財務相や中央銀行総裁が出席する会議で、日本の物価上昇率(消費増税の影響をのぞく)を巡り、国際通貨基金 (IMF) が為替の影響を受けにくい品目に限った試算を行い、それが各国の財政金融当局に示されたという。上昇率は2014年に入ってからもプラス0.3%程度からマイナス0.2%程度の範囲を動く状況が続き、ゼロ近辺にとどまっていた。消費増税分をのぞいた日本の物価上昇率(インフレ率)は最近、前年比で1.5%前後で推移している。IMFの試算は、円安で輸入品や原材料費の価格が上昇している影響が最近の物価上昇に大きく寄与しており、円安の影響をのぞいた物価はほとんど上昇していないことを示す。(安倍政権の経済政策アベノミクスについて、IMFは公式には「インフレ期待を高めており、効果を発揮している」と基本的に評価する立場。) 田村秀男は物価下落に焦点を合わせた経済学会や政府、日銀などのデフレ論を批判し、「物価の継続的な下落の速度、度合いをはるかに上回る賃金の下落が続く状態」と定義するよう提起している。田村は、単に「物価の下落が続く状態」とする従来の視点では1930年代の大恐慌時代や1998年以降の「日本型デフレ」を十分説明できないし、金融政策や財政政策判断の誤りを生むと警告している。田村は、物価上昇偏重による政策判断の誤りの例として日本銀行による2006年3月の量的緩和解除を挙げている。田村は日本の2014年4月からの消費税率引き上げについて、田村は賃上げ率が消費税増税による影響を含めた消費者物価上昇を大きく下回る状況下では、デフレを加速させると批判している。 岡部直明は「脱デフレのために、名目成長率目標を持つべきである」と指摘している。
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