対策と評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 15:14 UTC 版)
スラムを解体したり、活性化させることで問題を解決しようとする試みは古くから行われてきたが、必ずしも成功を収めていない。文化大革命時に大量に中国大陸から香港に難民が押し寄せた際、不衛生なスラムが至るところに出来、犯罪や暴動が頻発した。当時の英国行政府は膨大な量の高層住宅を建設して住民を収容したり、郊外に新たな居住区を建設し、住民を移住させるといった対策で一定の成果を得た。しかし、他の開発途上国では、失業者対策が行われないなど、スラムの存在する根本的な理由を解決していないことが多いため、プルーイット・アイゴーのように、団地自体がスラム化する場合がある。また、賄賂や横領など対策を取る側に問題があることもある。 ある地域をスラムと呼ぶとき、異なるアイデンティティをもつ外部の人々が自分たちの文化景観の基準から外れた地域に対して、その地域の人々の文化やライフスタイルと関係なく、秩序が無い(ように見える)、建材が現代的で無い、など文化摩擦や誤解から一方的にスラムのレッテルを与えてしまう場合があり、行政によって都市再開発の対象とされてしまうケースもある。例えば、アメリカでは、プエルトリコ人やロシア移民など、特定の民族集団が固まって居住する地域のライフスタイルや空間の使い方が、アングロサクソン系アメリカ人の許容できる水準に達していないとして、スラムと定義した例がある。 スラムを民間部門の自由な社会経済活動の場と捉えて、住民を草の根民活として、肯定的に評価する立場もある。農村にあっても十分な収入を期待できない場合、都市に流入する貧困者が多いが、都市に転居しても、工場労働者や事務員のように正規の雇用機会は得られない。そこで、自らが、露天、靴磨き、廃品回収などの小規模で、元手があまりかからない仕事を創出する。こうして、スラムの未熟練労働者が多数就業する都市インフォーマル部門が開発途上国の大都市で成長している。こうしたスラム住人は小規模自営の労働集約的な生業に就くことで、貧困状態にはあっても、失業者や犯罪者とは異なる地域コミュニティを形成している。
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