判断の誤り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 16:03 UTC 版)
一方、病状から回復していたシャー・ジャハーンはダーラー・シコーの軍が負け、アウラングゼーブとムラード・バフシュの連合軍がアーグラに進軍していることを知ると、国の戦力をすべてに任せることに同意せざるを得ず、武将ら全員には彼に従うように命じた。フランスの旅行家フランソワ・ベルニエはその軍勢に関して、「ヒンドゥスターンで、かつて以上立派な軍勢が見られたかどうか、私は知らない」とまで語っている。 ダーラー・シコーの軍はアウラングゼーブの軍のように長距離の移動による疲労もなく、大砲の数もはるかに多かったが、彼に有利な予想をする者はいなかった。なぜなら、ダーラー・シコーは軍を指揮する能力に欠き、軍人らには不人気であり、彼の軍勢において最も強力な武将ジャイ・シングはスライマーン・シコーとともにアーグラに向かって行軍中であったからだ。 そのため、ダーラー・シコーは側近のみならずシャー・ジャハーンまでからも、息子スライマーン・シコーの軍が合流するまで時間稼ぎをし、危険な戦いは避けた方がよいのではないか、と忠告された。だが、彼はどんな提案をされても決して聞き入れなかった。ベルニエの考察よると、ダーラー・シコーはスライマーン・シコーが名声を勝ち得すぎ、次の戦いで勝利しても全ての名誉と栄光と勝ち得てしまう可能性を危惧しており、そうなると自身に対して何か企てるのではないかと考えるようになったからだという。 また、シャー・ジャハーンは自ら出陣することも提案したが、ダーラー・シコーはこれも拒否した。彼はシャー・ジャハーンが出陣することですべてが解決し、弟らは任地に戻り、シャー・ジャハーンも政務に戻るだろうから、それこそ今までの自分の苦労が無駄になると判断したのである。 ダーラーはアーグラを出る前にシャー・ジャハーンに会い、シャー・ジャハーンは目に涙を浮かべながら、厳しい口調でこう言った。 「 「それではダーラー、何事も自分で決めたとおりに運びたいなら、行くがよい。神の祝福がお前がお前の上にあるように。だが、この短い言葉だけはよく覚えておけ。もし、戦いに負けたら、二度と私の前に出てこないように気を付けるのだ」 」
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